スカパーの50chリモコンは笑えない

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スカパーが50チャンネルにダイレクト選曲できるリモコンを作ったようだ。製品化するかはわからないが、プレゼントとして提供をするようである。テレビのリモコンというのは、テレビに対してのUIとしては画期的なものであったが、ここにこれを極めたりといった感である。今回はテレビのリモコンについて考えてみる。

昭和30年代くらいまでは、テレビにはリモコンというものはなく、チャンネルを切り替えるためにはテレビの場所まで移動して、チャンネルを切り替える必要があった。切り替えの方法は最初は回転式のロータリースイッチをガチャガチャ回していた。そのときにはたとえば1chから12chまでが順番に割り得てられていたので、1chから5chに切り替えるためには、1,2,3,4,5,6と6回ガチャガチャする必要があった。その後チャンネルごとにボタンスイッチが割り当てられ、見たいチャンネルにダイレクトに移動することが可能になった。

その後に有線で、のちに無線でのリモートコントロール切り替え、リモコンが当たり前になっていく。視聴者のUIとしてはテレビの前まで移動しなくてもチャンネルを切り替えられるという、画期的なものである。これによってテレビのいわゆるザッピング視聴が進む。レコードとCDの違いと同じように、簡単にコンテンツの切り替えをすることができるようになった。思えばこの頃から、人々のコンテンツに対する接し方が大きく変化し、これによって制作者側はザッピング前提の番組作りをするようになった。いつ見ても内容がわかるようにする目的でのテロップの多様などもその一例であろう。

当初は地上波チャンネルだけであったので、12個のボタンで事足りていたが、多チャンネル化によって膨大な数のBSやCSのチャンネルが増えたことにより、リモコン上に全てのチャンネルの物理ボタンを廃止することが不可能になる。リモコンをテンキー入力すれば、3桁のチャンネルに対しても選局は可能ではあるが、チャンネル番号を覚えることも、テンキー入力することも面倒すぎて使おうとは思わない。

かつてはリモコンのボタンに場所を確保することは、選曲してもらうためには極めて重要な条件であった。いわゆる椅子取りゲームと同じである。これに気がついたショッピングチャンネルがケーブルテレビでの配信で、地上波の空きチャンネル、かつての東京で言えば2,5,9chあたりに席を確保して、視聴機会を増やし売上を伸ばしたこともある。

リモコンの物理的サイズにはある程度の制約があるので、スマホやタブレットのアプリでGUIベースにするアプローチもなくはないが、スマホが赤外線に対応していなかったり、テレビがネットワークに接続していなかったりという理由などから一般化してきたとは言い難い。

今回はまさかの50チャンネル50個のボタンを実装したリモコンを、スカパーが作った。今回はあくまでも抽選で50名にプレゼントという位置づけなので、ノベルティ的に考えているのか、反応を見るための観測気球で、好評であれば販売やレンタルを考えているのか。それにしても全長50センチという冗談のような見た目のインパクトは強烈である。さらに光るというから驚きである。

本稿では今回の50chリモコンを批判する意図はまったくない。選べない、探せないという根本問題が存在していることは明確であるからだ。EPGはこれを解消するために用意されているが、使い勝手は物理リモコンにはどうしても及ばない。スマホやタブレットのディスプレイを動的に変化させて、画面をタッチして選局をする。そこにレコメンド機能も包含させる。というのが普通の考え方ではあるが、前述の課題に加えて、椅子取りゲーム的にはディスプレイに掲出される順序や頻度をどのように行うのか、という点はテレビ局側、チャンネル側にとっては死活問題と考えているだろうから、一筋縄では行かないことは容易に想像できる。これはいわゆる番組パッケージメニューを決める際における関係者の延々と続いている議論を見ればわかる。

最近では、チャンネルという考え方そのものが揺らぎつつある。地上波やBSの総合編成もそうだが、特定ジャンルでセグメントされたチャンネルが、24時間365日そのジャンルに絞り込んだ番組編成に従ってコンテンツが提供されていることの是非。一方ではYou Tube以降、Netflixのようにリニアな編成が存在せず、完全に利用者側の意思に基づくオンデマンド視聴が主流になりつつある。

今回の50chリモコンを笑い話のネタにするのではなく、放送コンテンツのあり方が強烈に問われていると受け止めるべきなのだろう。

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