ディスプレイ・チューナー分離のレイアウトフリーテレビがもたらすかもしれないこと

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かつてソニーがロケーションフリーという、家の外も含めた自由な場所でテレビが見られるシステムを提供していた。今回パナソニックはレイアウトフリーという製品を発売する。これはディスプレイとチューナーがワイヤレスで分離したテレビだ。このビジネス的にはわかりにくくて何気ない変化の無効に大変革が待っているように思える。

テレビはラジオと違ってアナログ放送の時代からアンテナが必要だった。その昔にはロッドアンテナの付いたテレビや室内アンテナなどもあったが、屋根の上に八木アンテナを設置するのが基本だ。そしてこのアンテナには並行フィーダー、その後は同軸ケーブルを繋いで宅内を経由して、壁のアンテナ端子から再び同軸ケーブルでテレビ本体に接続する必要がある。そうなのだ、この同軸ケーブルが邪魔なのである。

電源ケーブルは将来的にはともかく、現時点ではなくすことは出来ない。ところが同軸ケーブルは簡単になくすことが実は可能だったのだ。そのためにはチュナー部をアンテナ端子の近くに固定し、ディスプレイに対して無線で映像伝送を行う。ディスプレイ側にチューナーを残して、アンテナからの電波を無線でチューナーに送ればいいと考えがちだが、その場合には伝送すべき周波数帯域が広すぎ、周波数が低すぎて現実的ではない。そのためレイアウトフリーテレビでは、チューナー部からが映像信号としてディスプレイに伝送を行っている。パナソニックの説明によるとWiFiと同じ2.4/5G帯を利用しているようだ。

ディスプレイとチューナーがワイヤレスで分離すると、ディスプレイの設置場所、レイアウトが自由になる。これまでの常識では 、テレビはほとんど移動させるものではない固定のものだったのでピンとこないかもしれないが、同じ部屋の中での移動、つまりレイアウトが自由になる。他の部屋に移動させることも可能。大画面化してもディスプレイ部分の重さはさほど重くはない。今回のレイアウトフリーテレビは43インチで24.5Kgである。TVスタンドにキャスターが付いているので移動は簡単だ。

そしてこれは使わないときには片付けてしまうということもできる。テレビというものは使っていない時には巨大な黒い板切れとしてそのまま存在する。大画面になればなるほど、未使用時の存在はひたすら邪魔な物体でしか無い。そんなことはないと思うかもしれないが、同軸ケーブルから開放されると、建築家やインテリアデザイナーは数多くの呪縛からテレビを開放することを喜ぶに違いない。そしてそれは生活者、いや視聴者にとっても心地よい空間を提供してくれることになるはずだ。

そしてレイアウトフリーテレビがもたらすであろう変化は、決してレイアウトだけではない。ディスプレイから見た映像ソースが放送前提ではなくなるということだ。AmazonのFire TV Stickに代表されるディスプレイに直付けできる入力装置のようなものが当たり前になっていくかもしれない。

「B-CASを内蔵していないテレビは認めない」という話がこの先通用するわけがない。テレビ局がいまから問われるのは、ディスプレイに対して映像ソースとして選択されないという世界である。チューナー・ディスプレイ分離がどこまで受け入れられていくのかにかかっている。

そして同じタイミングで、一見全く別の文脈に見えることが進行していく。AmazonのFire TV Omniである。これは放送チューナーを内蔵しておらず、アプリベースでOTTサービスを視聴できる。そして43インチで409.99ドル、75インチで1099.99ドルである。この価格て提供できる理由は、ハードウエアで利益を出す必要がないからである。利益はアマゾンプライムの会費で得ればいいからだ。アマゾンプライムの会員になっているということは、Amazonで買い物をするのでそちらでも利益が出るからである。つまりテレビは単なるおまけなのである。これは放送におけるビジネスモデルの大変革を意味する。