24時間営業の無人家電量販店「GO12(ゴジユウニ)」に潜入してわかったこと

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東京の蒲田に24時間営業の無人の家電販売店「GO12」がオープンした。GO12は「ゴジユウニ」と読む。果たしてどういった仕組みとどういった購買体験をもたらしてくれるのか。ちょうど購入したいものがあったので早速でかけてみることにした。

GO12は24時間の無人店舗である。ここだけ聞くと、入店認証や入退出管理はどうしているのか、どういうゲートを設置しているか、商品判別方法はなにか、決済方法は、万引対策はなどと、IT脳に侵されている我々は、どうしても小難しいことにばかり囚われがちである。ところがここにはそんなものは一切ない。田舎によくある無人の野菜販売所と同じなのである。

入り口から店舗内を見た様子。アキバあたりにありそうな電気店に見える。ただし何も予備知識や事前情報がないと、無人店舗であることは特にわからない。

アキバでよく見るタイプの店内

入店する際には何も特別な手続きや認証などは一切ない。単なる入り口である。そして出入りも自由である。入口入って左側に検温端末とアルコールがあるが、これを使わなくても入店も購入も普通にできる。

サーモセンサーとアルコール これはいまは置かないわけにもおいかないのだろう

店内の全景はこうなっている。現在の商品構成は洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫、そしてテレビだ。これらも小さめのサイズが中心。これは想定客層であったり、搬出入を考慮しているものと思われる。基本は購入した商品は自分で持ち帰る前提だろう。そのための台車もちゃんと店内に用意されている。

不思議な棚の構造。ラックを置かないのはコストや商品によってフレキシブルに対応させたいのだろう。よく見ると大型商品は全てパレットに載せられている。

今回の筆者の購入目的はこの電気ケトルである。海外出張用のケトルがちょうど壊れてしまっていたのだ。これとヘアドライヤーは臨時商品のような扱いで、常に在庫があるわけではないらしい。

ドライヤーと電気ケトル これはリユースではなく新品と思われる、ただし箱、保証なし

何も知らずにここに迷い込むと、きっと店員を探したくなるだろう。しかし店員はもちろんいないし、バックヤードらしい空間も見当たらない。「すみませーん!」と声を出しても試していないがおそらく反応はない。そういった人はどうするのだろうと少し気になった。誰もいないからといって支払いせずに持ち帰る人は、この国ではゼロではないだろうが今でも基本レアであるはずだ。さて、では電気ケトル1,100円をお買い上げである。

100Vのみ対応ですのでご注意を

決済端末に向かう。32インチくらいのタッチパネルと右側にカードリーダー。ディスプレイの下にはレシートのプリンタ。その下には現金授受関連の機材である。これらは専用に開発したものではなく、それぞれの機材をうまく組み合わせたもののように見える。

手作り感というと失礼だが、うまくコストダウンしながら構成されている感じがする

この決済方法が潔い。どの商品を購入したのかは自己申告制なのである。下の写真は反射してしまって見づらくて申し訳ないが、自分で購入するものを選択するのである。防犯カメラが作動しているが、ここで持ち出す商品と決済商品の確認を少なくともシステム的に行っているとは思えない。モニタリングをしているとしても、カメラはカメラ、決済情報は決済情報なので両者を24時間遠隔で監視しているとは考えにくい。試してみたい衝動を抑えながら、1100円の電気ケトルの決済を行う。

購入商品は自己申告

電気ケトルを選ぶと決済方法の選択画面に。現状普通に考えられるものは全部ある。現金にも対応しているのには正直驚いた。確率的に読み取りトラブルはかなり少ないのだろうか。

全部入りの様相

現金決済をしてみようか迷ったが、GASKET的には無難にキャッシュレスということでクレジットカードを選択。右側のよくある決済端末にカードを差し込んで決済完了。ICチップがないカードは使えないが最近ではそこはもう問題ないだろう。

決済端末の仕組みはごく普通

決済が終わるとレシートとクレジットカードの売上票がプリントされる。すべてアプリ上の表示で行われるAmazon Goとは違って「紙」が出てくる。さてこのあとどうするのだろうと、しばらく待っていたけど何も起きない。ありがとうございましたというアナウンスがあるわけでもなく、このままお帰りくださいと言われるわけでもない。これでおしまいなのである。このまま商品を持って帰ってOK。袋も箱も用意されていないのでそこは自分で考えるなり用意するなりする。ここでも決済しないで退店するとどうなるのか試したい衝動に駆られる。

いまさら紙?と言いたくなるがこの方がきっと安いのだろう

今回の電気ケトルは商品選択方法がちょっと例外的だったようで、他の商品購入の場合を説明しておきたい。テレビの場合には商品に小さな値札カードが付いている。

電源が入っていないので外観しか確認はできないテレビ。まあそれは洗濯機も冷蔵庫も同じことではある。

値札カードを拡大したところ。この「13」と書かれているカードを自分で取り出して、先程の決済端末でテレビを選択肢、その中の13番の商品を選んで決済を行う。ここで我々のIT脳は、バーコードやQRを読み込むのだろうと脊髄反射するが、そうではない。あくまでも自己申告だ。決済端末側にスキャナーはあるが、いまのところこれはスマホ決済用としてのみ機能している。

バーコードもQRコードも、ない。

先程のカードを取り出すと(これは別商品の例だが)「SOLD OUT 購入済み取り置き商品」という表示が下から現れる。現れるといってもご覧の通りの超アナログな仕組みである。

アナログな表示切り替え。在庫管理と一致しないかもとかいうメンドクサイ正論はしない

店内には当然ながら何台か防犯カメラが設置されている。確認はできていないが、質問や何らかのトラブルが起きた時のためのインターフォンやテレビ電話などの装備はないように思える。録画はしているだろうが、カメラをリモートで24時間人がモニタリングしているとはちょっと考えにくい。かといってこのケースでAIが動線や行動をチェックしているわけがない。そこまでやるためにはこの店舗だと少なくとも10台ほどのカメラと複数のセンサーが連携して選択商品をAIで認識し、それがさらに決済システムと接続している必要があり、1億とは言わないが数千万円以上は必要になるだろう。

防犯カメラはどういう監視体制なのだろうか

他の商品の紹介も少ししておきたい。一人暮らし用の2ドア冷蔵庫。税込み11,000円。このタイプの冷蔵庫がこの価格であれば、単身者や事務所などでの利用としては配送問題がクリアできればニーズはある。配送は有料(3,850円から5,940円で23区と横浜川崎の一部)でも対応。GO12のすべての商品はリユース品ということだが、筆者が確認した感じではどの商品も使用感はあまり感じられない新同品といった印象で問題ない。

冷蔵庫もピカピカだ
電子レンジは新品同様

店頭のディスプレイでは店舗紹介や購入方法のビデオが流れている。

正直あまり役に立っていないサイネージディスプレイ

Amazon Goは入店時にアプリ認証のみ必要で、あとは完全にコンタクトレスだが、あれを実現するためのテクノロジーや投資金額は現時点では膨大だ。日本国内ではコンビニやキオスクでAmazon Goモドキの実証実験や実運用されているが、どれも総合的に見て何のためにやっているのかわからない。コスト削減をしたいのか、そうなっているのか、ユーザー体験を向上したいのか、そうなっているのかわからないものが大部分だ。その点でこのGO12はとにかく潔い。カメラやセンサーなどと行った小細工はしない。おそらくこの店舗のシステムを議論していくとツッコミどころが満載で、こういう場合はどうする、ああすると行った話になって、膨大な金額になるか、これは無理だからやめようかのどちらかだ。だが果たしてそんな頭でっかちなシステムは本当に必要なのかと、見つめ直すことは重要だ。実際に店舗で購入してみて、顧客の立場、販売者の立場で感じられたことは、とても重要なことだと思うのである。

まず購入体験としてどうか。GO12が扱っているどの商品も、普通の家電量販やオンラインで購入できる。価格はどうかというと、新品と比較すると安い。物によっては最安値とは言い切れないかもしれないがかなり安い。24時間営業のオフライン店舗が24時間営業のオンライン店舗に勝るのは、商品が確認できて持ち帰りができることだ。冷蔵庫や洗濯機を夜中に急に必要になるかはケースバイケースだろうが、あまり大きなニーズではないようにも思う。

GO12の商品が安い理由はリユース品であるからだろう。リユース品の入手と整備環境が確保できるとして、その販売ルートとしてはオンラインよりは、こうしたオフラインのほうが現物確認できる分だけ向いている。あとは販売コストを下げるための無人販売ということだろう。このクラスのテレビや電子レンジ、洗濯機に冷蔵庫であれば説明商品ではない。

つまり、今回実際に体験をして感じたのは、おそらくGO12は無人販売や無人販売システムが目的ではなく、リユース品販売ビジネス、そのチャネルの拡大が目的で、その結果としての24時間の無人販売だろうと感じたのだ。そこで帰宅後に調べてみたらやはりそうだったのだ。

横浜でリユース店を営むAKINAI(神奈川県横浜市)ではこのほど、東京・蒲田に無人の中古家電店「GO12(ゴジユウニ)」を出店した。1万1000円の冷蔵庫や洗濯機を10台以上ずつ置くなど、生活家電に特化。吉田藍無社長は、「大学が近いので単身の大学生などに利用していただければ。また、無人というサービスに注目してもらい、今まで中古品に触れることがなかった人にも、実際に触れて良さを知ってもらいたい」と話す。24時間営業で、決済は店内にあるタッチパネルから。広さは10坪。まずは月商90万円を目指す。

単身向けの家電は今、二次流通によく出回り、安く仕入れることができるという。「とにかくモノは多いので、既存店やネット以外に新しい販売の仕方を確立させたい。無人店が成功すれば、複数展開も考えている」と話す。

リサイクル通信

これは非常に合点がいく話である。ではリユースビジネス以外の業種において、このGO12に学ぶところはどこか。それは山ほどある。Amazon GOとGO12、そして無人野菜販売所といったポジショニングの中で、GO12のようなスタイルでOKなケース、やはり万引規模対策はしたいからせめて入店者認証だけはかけたい、ではその際の最適な方法は?など、色々なケースが存在しうる。無人店舗競争は一巡した感があるが、GO12は数多くの気づきというか、目を覚まさせてくれる存在なのである。

スーパーマーケットTRIALは、Amazon GOに近いシステムを自社で開発導入し、さらにそのシステム自体の販売を行っている。同じように、こうしたデジタル無人販売をパッケージ化して行くというのはビジネスチャンスだと思う。

GO12の詳細情報はこちらの公式サイトでご確認いただきたい。蒲田駅から歩いて5分ほどである。