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エッジAIの普及が進まない理由と展望

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プライバシー問題やレイテンシの課題解決など、エッジAIの効用は何度かGASKETでも述べてきたが、現場感覚からすると思ったより普及速度が加速していないのは事実だと思う。

そもそもAIを使った(技術的なことは別として)画期的なビジネス、つまりパッケージ的なキラーアプリケーションはほとんど存在しておらず、これはエッジAIに限らず、AIの分野全体の課題だろう。自動運転などの基礎技術としての開発要求(意欲)は強いものの、それらは“一品料理”としての開発に近い。

そんな中でも、エッジAIのソリューションはキラーアプリケーションが生まれやすいと想像したのだが、実態は前述した通りだ。それは何故か? そこにはフクザツなジレンマが存在している。

1.処理速度

その性格上どうしても処理速度はクラウドAIに比べて不利だ。GPGPU(汎用GPU)を使えばそれなりの処理速度になるが、消費電力がバカにならない。実は消費電力そのものは現場ではあまり問題にならない。2A流そうが、4A流そうが、その電気代を気にするプロジェクトはあまりない。(バッテリ動作させたい、という一定のニーズはある)問題は、“発熱”なのだ。なぜ、発熱が問題か?それはケーシング、耐久性、デバイス自体の信頼性に繋がる。発熱が多ければ、密閉したケースは使いにくいし、冷却ファンか巨大なケース放熱を選択することになる。これは次項の問題と絡む。解決策は、CPUやGPU(GPGPUではなく)での軽い計算、すなわち量子化などの軽量モデルの開発、低消費電力かつ安定したアクセラレーターなどに期待がかかる。

2.設置の問題

現場への設置(カメラデバイス)課題は過酷だ。外置きならなおさらだ。防水、防塵。そして、温度対策。日本中、屋外にどこでも設置して大丈夫ですよ!と謳うためには、最低でも-20℃~50℃で動作できなければいけない。かつ、防水でなければならない。ケースが大掛かりになれば、設置コストも無視できないし、どうやって固定するのか、どこに設置するのか、最適な画角は得られるのか、等々、かなりやっかいな問題が山積する。

仮に室内利用に限ったプロジェクトであっても、既存の店舗内などに、カメラデバイスを設置することは簡単なことではない。月々数千円の利用料でサブスクモデルで、と謳ったところで、設置コストを吸収できているモデルは存在していないだろう。居酒屋さんに、“これでお客さんの年齢や性別がわかります”、と言っても、そのコストを上回るだけのメリットを提供することはかなり難しい。このように、実はかなりローテクな部分がエッジAIの普及への障害の大半を占めているのだ。

2021年から2022年にかけて、国内の監視カメラは10億台を超えるだろう、という予測がある。2019年~2020年あたりで、7億台以上設置されているらしい。アナログ映像を配信しているものもあるが、新設はほぼIPカメラだろう。おそらく、(特に)マーケティング的な目的でのAIの利用方法は、監視カメラの画像を分配し、プライバシーに考慮しながら、エッジBOX的なもので処理をする、という流れがくるだろう。設置問題や、耐環境問題がクリアされているからだ。

もちろん、FAの現場などで、狙った画角を既存の監視カメラで捉えることができることは稀だろうから、こういう場面では使えない。ところが、そうなると、既存の監視カメラを録画しているような部屋(機材があるところ)にGPGPUを積んだPCを置いて、それで処理すればいいじゃないか?、ということになる。それはそうだが、例えば、コンビニのバックヤードにPCを置くことは、スペースや保守の問題などから、敬遠されるだろう。専用機の“顔”をしたBOX型のものが好まれるはずだ。

卑近な例えで恐縮だが、“下半身が乗らないデバイスはヒットしない”、という言葉がある。VHSに代表されるホームビデオがそうだったように。エッジAIにとっての“下半身”は、設置問題なのかも知れない。

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