過去のシリコンサイクルとは違う~深刻な半導体不足

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シリコンサイクルという言葉をご存じだろうか?半導体の需給バランスが崩れ、半導体が不足しデリバリショート、価格急騰、製品供給に著しい問題が起こることを言う。どういうわけだか4年周期くらいで昔は起きていた。

与太話だが、今から数30年以上前、超有名なパソコン(PCとは当時言わなかった)ベンチャー企業があり、業務用のPC市場で大躍進をしているさなか、このシリコンサイクルが起き、当時はDRAMが著しく不足。このベンチャーを苦々しく思っていた大手メーカーは(それらの企業は半導体も大抵製造していた)、こぞって談合、結託し、このベンチャー企業へのDRAM供給を止め、結果このベンチャーは経営困難になった、という有名な逸話もある。

今回の不足の原因はさまざまな理由がフクザツに絡みあってるが、根本的な電子デバイスの需要増、米国と中国との地政学的な要因(中国がチップや製造装置の積極的備蓄に動いている)などがきっかけだが、そこにコロナ禍が襲った。工場の操業の問題、ライフスタイルが変わってゲーム機やリモートワーク向けのデバイスの好調。等々良い事悪い事が一斉に空から舞い降りてきた感がある。多くのアナリストは2021年中には解決(改善)は不可能であり、2022年の需要後退まで続くだろうと予想している。

さて、現在の極端な半導体不足はかつて我々が経験してきたものと少し趣が違う。数十年前の時代、DRAMなんて、趣味の世界で使うデバイス(例えばPC)やごく一部の産業用途向けのものにしか使われない。いわゆる、“ある世界、ある業界”だけが苦労する。

例えば、現在のクルマには恐ろしい数のCPUチップが使われている。実際BMWなどがチップ不足から一部の工場の操業を止めたことは周知の事実だ。工場、流通、農業だって、IoTやAIでビジネスをドライブする時代だ。趣味の世界や一部の“業界”だけが苦労して済む問題ではなくなっている。すべての経済全体が“半導体”でドライブしていると言って過言ではないのである。

ここで心配になるのが日本経済や、日本のIoT化、AI化、いわゆるDX化の速度低下である。ただでさえ、他の先進国と比べて、遅くて、ぼ~~~っとしている国である。

“入ってこないならしようがないじゃん”

“今は高いからしばらくは様子見だね”

日本の大企業の偉いオジサン達が平気で宣いそうなセリフ。ただでさえDXなんて意味わかんないし、責任だけ取らされて嫌々勉強させられている。外部圧力はもっけの幸い。

与太話と書いた先ほどの“いじめられた”ベンチャーの話なのだが、あの業務用PCには表集計算や、ワープロが搭載されていた。あの会社が正常に動いていたら(最終的にデファクトになっていたとか、そういうことではなく)、日本のオフィスIT化(当時はOAとか呼んでいた)はもう数年早く進んでいただろう、と評価していた人もいた。何年か後に、あのサイクルは日本に最後のダメを押したよね、と言われていなければ良いのだが…