クロス新宿ビジョン 新宿の猫で再認識するサイネージの肝

Digital Signage /

GASKETでは2度め紹介となるが、クロス新宿ビジョンの猫の話を再び取り上げておきたい。これはやはり非常に示唆に富む事例であるからだ。なんと言っても、これまでの全てのデジタルサイネージ、大型ビジョンの中で最も話題になっている例と言っていいだろう。運用開始から10日ほどを経過しているが、いまだに現場には多くの人が訪れて、写真や動画を撮影してSNSにアップロードしている。

問題はこのSNSに拡散された動画がまともに撮影で来ないことが多い。正確にはキレイに撮影ができないのである。トップの写真は動画からキャプチャーしたものだ。これはLEDビジョンのリフレッシュレートが、スマートフォンで撮影するとモアレのようになってしまう値になっているためだ。下の動画はiPhone11 Proで1080p 30fpsで撮影したものだが、隣のスタジオALTAのビジョンと比較すると一目瞭然だ。

これはドライブレコーダーで最近のLED化された信号機がうまく撮影できないのと同じである。手元のiPhone11 ProとiPad mini5で設定を変えて試みたが、どれもうまく行かなかった。デジタル1眼レフカメラなどで設定を変えれば良いポイントが見つかると思うが、拡散はスマホ以外には考えられない。今後のサイネージでは、スマホで撮影した動画をSNSで拡散されることを想定して、スマホでちゃんと撮影できることが技術要件に追加されるべきではないか、と思うくらいの拡散数と映像の乱れっぷりである。

またもう一つすごいのは、かなりの数のファンアートが投稿されていることだ。これもデジタルサイネージ史上おそらくナンバーワンだろう。

この企画から学ぶことは、やはりクリエイティブの重要性である。犬・猫・子供は普遍的で強力なコンテンツモチーフである。これの制作者がコメントしているように、新宿の顔にするという発想から、渋谷が犬(ハチ公)、なら新宿は猫(名前はまだない?)なのだ。猫と言ってもアニメやイラストっぽいキャラクターデザインにしてしまうと、3Dの持つインパクトが半減してしまうことにクリエイターがわかっている。上記のイラスト系のファンアートは、オマージュとしては非常に面白くて素晴らしいが、これは本家がリアリティあふれる猫だからこそ成立している。

GASKETで紹介した韓国や中国の事例は、スタートレック風の宇宙船とかドラゴンとかといった最初からリアリティのないオブジェクトが使用されている。波はリアリティなのだが、猫と異なるのは無機質で表情に乏しい。そういう点から今回の猫はベストな選択なのである。制作チームがどこまで事前にここを意識していたのかはわからないが、デジタルサイネージの特性を熟知しているが故の結果であると思う。本当に素晴らしい。

この事例は、インパクトメディアとしてのデジタルサイネージ的な事例であり、pDOOHとかDXといった文脈とはあまり関係ないかも知れないが、デジタルサイネージの基本をしっかり押さえた事例なのである。