Photo: Michael Coghlan https://www.flickr.com/photos/mikecogh/7676649034

OOHはいまこそ技術投資のとき

Digital Signage /

1対1のメディアであるインターネット広告では、CookieやIDFAなどを使ってユーザーを追跡し、そこに年齢や性別などの属性情報や、行動履歴から類推される意向情報が付与してターゲティングを行ってきた。しかし、プライバシー保護の動きが強まるなか、GoogleはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2022年までに段階的に廃止し、AppleはiOSでユーザートラッキングやIDFAの利用をオプトイン方式に切り替える。これにより、ユーザー追跡が極めて困難になり、ターゲティングの精度は大きく落ちることになる。

その代替となりうるのが、オールドメディアであるOOHだ。1対多のメディアであるOOHは、ターゲティングの単位が個人ではない。学生が多い街、サラリーマンが多い街、子育て世代の多い街など、場所に対して特徴となる情報が付与され、それを用いて広告主はターゲティングするため、プライバシーの問題に抵触することがない。さらにデジタル化されたDOOHであれば、ターゲットがどのように移動するかを把握し、その移動に合わせて媒体と掲出時間を選択して出稿すれば、効率的にフリークエンシーを稼げる。さらには出勤時や昼食時、帰宅時などの状況に合わせた素材で接点を持てれば、深いコミュニケーションが可能だ。的確なターゲティングで効率的にリーチできる強みは、インターネット広告からOOHに移りつつある。

しかし、これほどの変化が勝手に転がりこんできたにも関わらず、OOHの各媒体はこの動きへの対応が不十分だ。大きな問題は2つ。まず1つは、いまだに週単位で枠を購入する商品ばかりで、時間で絞り込んで購入できる商品が少ない。せっかくのデジタル化が、複数素材を組み合わせたロールを構成し、商品の細分化することにしか使われていない。相対的にせよ、ターゲティングメディアとしての価値が上がっているいま、効率的なターゲティングを実現する商品設計があって然るべきだ。

もうひとつが、媒体社が公開しているオーディエンスのデモグラフィックデータには、時系列の概念がないことだ。人流は流動的なものであり、人の位置座標の時系列データとして捉えなければならない。また、人流で捉えようとすると媒体横断的な取り組みも必要になってくる。たとえば、首都圏などの規模で人流を追跡し、デモグラフィックデータと掛け合わせる横断的なDMPを媒体社主導で構築するぐらいの動きがあって然るべきではないか。

どちらも新しいテクノロジーを取り入れなければ実現できず、投資は欠かせない。コロナ禍で厳しいいま、アクセルを踏むのは勇気が必要なことだ。しかし、いずれ人類はコロナ禍を乗り切る。そのときに向けて必要な処置ではないか。

Jekiが公開しているJR新宿駅のプロフィールデータ。
jekiが公開しているJR新宿駅のプロフィールデータ。
メトロアドエージェンシーが公開している銀座線利用者データ。
メトロアドエージェンシーが公開している銀座線利用者データ。