デジタルサイネージに「詳しくはウェブサイトで」と掲出するのをやめたい

Digital Signage /

新型コロナウイルス感染拡大とそれを受けての緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの対応によって商業施設や店舗の営業時間は流動的なものになったうえ、三密を避けるため、生活者は訪問先の営業状況や混雑状況を事前に確認することが増えた。そのようなニーズを受け、施設側もウェブサイトやSNSなどを活用し、テナントやフロアごとの営業時間やリアルタイムの情報を積極的にアナウンスする必要性が高まっている。

そのような中、とある商業施設を訪問したところ、店頭のデジタルサイネージに表示されていたのは大きなQRコードで「各施設の営業時間は下記二次元バーコードからご確認ください」との文言だった。営業時間は来店者にとっても重要な情報だが、それをデジタルサイネージでわかりやすく表示するのではなく、ウェブサイトへ誘導するための装置に留まっていた。デジタルサイネージのシステムベンダーとしては、とても残念な想いを持った。

ウェブサイトは生活者がいつでも、どこでも、さまざまなデバイスで見られる能動的にアクセスするメディアだ。商業施設にとっては、いま実際に来店している人から将来に来店する人まで、さまざまな人々がリーチできるメディアのため、総花的にすべての情報をここに掲示している。

それに対してデジタルサイネージでリーチできるのは「いま」「ここ」にいる人だけだ。しかもその限られた視認者は、能動的に見たのではなく偶然に目に入っただけだ。そのため「どのような人が」「どのような状況で」「どのような気分で」接することになるのかを理解し、それに合わせて最適な情報を掲示しなければ機能しない。緻密な設計と、状況変化に応じてコンテンツを最適化するシステムが求められるやっかいなメディアだ。そのかわりメリットも大きい。来訪したほとんどの人にリーチし、行動変化を促すことができる。映像コミュニケーションを用いて商業施設での経済活動や三密を回避した快適な施設利用を促すのであれば、ウェブサイトよりもずっと効果的だ。そこを深堀りできず、デジタルサイネージがウェブサイトへの誘導としか機能していない現状はとてももったいない。

コロナ禍のなかで、私たちは「不要不急とはなにか」「なぜAmazonではなく、外出して買い物をするのか」「なぜ外食をするのか」など、これまでの習慣、惰性を脱し、本質的な意義を問い直すことになった。そして事業者も、自身が生活者にとってどのような価値を提供し、社会においてどのような役割を果たすのかを改めて考えることが求められた。また、IoTやAIによって、フィジカルな状況もデジタルデータ化できるようになることで、デジタルサイネージのデータソースは映像の完パケデータだけではなく、ありとあらゆることに広がった。デジタルサイネージも、惰性でシステムを導入するのではなく「何のために情報発信を行っているのか」「どのような行動変化を促したいのか」「どのようなコミュニケーションが必要になるのか」「各メディアはどのような役割を果たすべきなのか」を改めて考え直す必要があるし、そこにハードウェアだけは普及してきたデジタルサイネージの、これからの伸びしろがあると思うのだ。