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セグメントしすぎも良くないOOHでは取引形態の多様化が必要

Digital Signage /

これまでのOOHの価値は、ロケーションが持つブランドやネームバリューと、サーキュレーションデータのボリュームが渾然一体となったもので判定されてきた。広告媒体ではあるものの、極めて不動産的な価値観で取引されてきた。もちろん、パブリシティーやSNSなどの波及効果を考慮したメディアプランニングを行ううえで、ロケーションが重要なのは言うまでもなく、それは定量化が難しいため、仕方がないところもあった。

しかし、広告取引のカレンシーとして定量化できる軸がないと、純広告取引しか行えなくなる。純広告は取引の手間が大きいため、極めて大きなサーキュレーションデータを持つ取引単価の高い商品か、1年や半年といった長期契約による取引コストを抑えた商品しか成立しない。これでは、OOHの市場は成長が望めない。

成長著しいインターネットのディスプレイ広告では、どうなっているか。インプレッションをカレンシーとすることで「プログラマティック広告」や「アドネットワーク」などの取引形態が開発され、メディア側はその規模に合わせて適正な取引形態が選択できるようになった。規模が大きくて社会的信用の高いメディアであれば、純広告やプログラマティックダイレクトなど広告単価の決定権を持つ取引形態を選択して大きな利益を得ることができ、規模が小さいメディアはプログラマティック広告やアドネットワークなどの単価決定権は持てないものの、一定以上の収益を得られるモデルを構築できる。これによって中小メディアも含めて広告媒体化、商品化することが可能になり、広告在庫は飛躍的に増え、マーケットが拡大した。

Author: Seobility – License: CC BY-SA 4.0

OOHでも「デジタルOOH」と呼ばれる媒体が増えたが、それは看板やポスターをLEDパネルや液晶モニターに切り替える「表示機材のデジタル化」であり、広告取引から出稿、配信までの流れまでは、アナログと変わっていない。これでは、デジタルのメリットを十二分に得られているとは言い難い。

インターネットのディスプレイ広告とは異なり、OOHは「セグメントしすぎない」広告だ。「そのとき」「そのロケーションにいる」人々が、属性や行動履歴に関係なく共通した映像を見る、セレンディピティーにあふれる体験共有型のメディアだ。その価値は、インターネットの広告がパーソナライゼーションを進めるほど、相対的に高まる。コロナ禍で苦境にあるとはいえ、ポテンシャルは高い。効果計測が難しく、取引コストが大きすぎる問題を解決できれば、成長の余地は大きい。そのポテンシャルを現実にするためにも、インターネットから学び、模倣するべきところは模倣していかなければならない。