客のスマホでレジカートを実現する「Scan & Go Ignica」を試す

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スーパーのトライアルは、カートにセルフレジが取り付けられたレジカートを導入しているが、来店客のスマートフォンに専用アプリを入れることで同様の機能を実現する「Scan & Go Ignica」をマルエツプチ新大塚店で体験してきた。

まずは、店舗を訪問する前に自分のスマートフォンに専用アプリ「Scan & Go Ignica」をインストールし、クレジットカードの登録を行うなどの決済の設定を行う。そのうえで、店に訪れて店頭に掲示されているQRコードを読み取って店舗にチェックインすれば、スマートフォンがその店のセルフレジになる。スマートフォンをカートのホルダーに設置すれば、まさにレジカートだ。

決済を行う店舗とスマートフォンを紐付ける「チェックイン」に使うQRコード。
決済を行う店舗とスマートフォンを紐付ける「チェックイン」に使うQRコード。
店舗にはスマートフォンホルダーがついたカートが用意されており、カートがスマートなレジカートに様変わりする。
店舗にはスマートフォンホルダーがついたカートが用意されており、カートがスマートなレジカートに様変わりする。
商品バーコードを読み取って、リアルでもアプリでもカートに入れる。レジ機能のみで、アップセルやクロスセルにつなげるメッセージは表示されない。
商品バーコードを読み取って、リアルでもアプリでもカートに入れる。レジ機能のみで、アップセルやクロスセルにつなげるメッセージは表示されない。

ただ、トライアルのレジカートと異なるのが、袋詰をするためにカメラが設置されている専用サッカー台を使わなければならない点だ。ここで袋詰をしたうえでアプリ上で決済を行い、決済後にアプリに表示されるQRコードをサッカー台のQRコードリーダーに読み込ませ、買い物は終了となる。

ドーム型カメラでカゴ内を撮影し、その様子をカメラ下のモニターで表示している。その下にあるボックスがQRコードリーダーになっている。
ドーム型カメラでカゴ内を撮影し、その様子をカメラ下のモニターで表示している。その下にあるボックスがQRコードリーダーになっている。

この専用サッカー台が存在することで、利用者にとってはレジ待ち行列がサッカー台待ち行列に変わっただけになり、Scan & Goが台無しだ。とてももったいない。

専用サッカー台での袋詰作業は、本質的には不要であり、これをやらせる理由はよくわからない。実際、トライアルでマイカゴ(マイバッグのカゴ版)を使えば、レジだけでなく袋詰作業さえもなくし、店からそのままGoできる。専用サッカー台でのカメラ撮影とQR読み取りから想像すると、決済内容とカメラ映像を紐付けて記録することによる不正の抑制、もしくは事後に追跡できるようにするためだろうか。もしそうであれば、すぐにでも専用サッカー台は無くしたほうがいい。

新しいフローを構築するとき、性悪説から入って設計段階から考えうる不正を排除する方法と、性善説から入ってあとから課題を解決していく方法の2つのアプローチがある。Scan & Go Ignicaは前者を採用したようだが、対象店舗を絞ることでリスク管理している以上、後者を採用してまずはシンプルにScan & Goの実現に注力し、実際に不正等の問題が発生したときに対策を打つべきだった。それであれば、たとえ不正が発生するとしても、その規模が定量化されるために便益とコストの双方を天秤に乗せた適切な解決方法が出せる。もし専用サッカー台が唯一の解決策にしかならないようであれば、それはScan & Goではない。そこを目指すこと自体に問題があると判断して諦め、別の購買体験を検討するほうが健全だ。

いまのままであれば、Scan & Go Ignicaの利用者は増えない。そのとき会社として「Scan & Goにはニーズがなかった」と判断をしてしまえば、新しいチャレンジをしたことが将来的な改革の芽をつんでしまう恐れもある。振り切れない、中途半端な設計がゆえに、逆効果になりかねないものになっているのがとても惜しい。

これは、このサービスに限った話ではない。IoTやAI、さらにはコロナ禍によって世の中は大きく急激に変化しており、私たちは生き残るために様々なことに取り組まなければならない。失敗することも増える。そのとき、失敗をその後の糧にするには、正しく失敗しなければならない。自分たちが何を実現しようとしているのか、何を持って成功/失敗と判断するのか、それを見失わないようにしなければならない。そのようなことを考えさせられるサービスだった。