株式型クラファンによる株主増加問題を株主管理DX化で解決する

Funding /

株式投資型クラウドファンディング「ECF」普及のハードルの一つと目されている株主増加問題。株式会社が株主を増やすことは当然でむしろ好ましいと考える欧米と異なり、我が国では上場前に株主が増加することを嫌う傾向が発行体にも専門投資家のVCにもある。そこで今回は、資金調達の手段としてECFを利用するために、経営者の心理的ハードルとなっている「株主数の増加」に関して考察し、その解決策として期待される株主管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)サービスについて、その概要を紹介する。

1 ECFによる株主増加の実態

昨年8月にGoAngelをリニューアルしてオープンしたCAMPFIRE Angels。2020年は年末までに4社5案件の募集を取扱い、このうち3社4案件で目標募集額を達成し、募集が成立した。募集及び株主増加の状況は以下の通りである。

会社名増資金額(千円)増加株主数(人)
Gigi株式会社29,800185
株式会社インターメディア研究所 39,700230
株式会社ヒナタデザイン10,90036

非上場会社では、一般に株主数は数名から多くても数十名。株主数が100名を超えてくることに不安を感じる経営者は少なくない。VC等の専門家も株主が増えることに対して否定的に捉える傾向がある。それがECF普及の大きなハードルとなっていることは間違いない。経営者の不安や専門家の否定的意見を整理すると、以下の通りとなる。

  • 募集により経営者の株式の保有シェアが減少し、支配権が失われるのではないか。
  • 株主の中に万が一、反社会的勢力が混じっていると、将来の上場に支障が出るのではないか。
  • ECFで株主が増えるとその後VCから投資を受けられないのではないか。
  • 株主総会の招集通知の発送や株主総会の運営などの株主管理事務の負担が大きすないか。

このうち、①については、株式価値を時価評価して増資を行っていることから、シェアが大きく減少するものではない。ちなみに上記のGigiのケースでは新株主185名の持株シェアは合計で1.2%、インターメディア研究所でも株主230名のシェアは合計3.7%に過ぎない。一人当たり最大50万円までしか投資できないECFにおいては一人当たりの持株シェアは極めて小さくなる。Gigiでは最大では0.02%程度。インターメディア研究所でも0.05%と、到底、経営者の支配権を脅かすような状況にはない。

次に②については、ECF業者には金融商品取引法及び日本証券業協会の規則により投資家顧客に対する審査が義務付けられている。反社が紛れ込んでいる可能性はゼロとは言えないが、極めて低いと言えよう。ECF業者各社においては、取引開始基準を定めており、反社会的勢力との関係性を調査。関係が判明した場合には、取引を開始することができない措置をとっている。またCAMPFIRE Angelsにおける株式申込に際しては、以下の条項が含まれる株主間契約へ合意をいただいている。反社に該当した場合等、上場に支障があることが判明した場合には、経営株主が株主より強制的に買い取りを行うこと。

  1. M&A により経営株主等が株式を売却する場合に、他の株主に対して同様に売却を求めた場合に、売却に応じること。
  2. 上記の1)2)の手続きを円滑に進めることができるよう、経営株主に契約行為の代理権を渡すこと。

これらの条項によって、②の懸念は払拭される。また③についても、ECFが上場に支障がないことが明らかになれば、VCによる出資も十分にあり得る。

2 CAMPFIRE Angelsにおける株主間管理とWILLsとの提携

上記①~③の資本政策上の課題が解決されるとすれば、残るは④による株主管理の事務負担増大への不安である。

この不安を払拭することを主な目的に、CAMPFIRE Angelsでは、2021年2月に上場会社向けに株主管理のDXサービスを提供している株式会社ウィルズ(以下「WILLs」といいます。)と業務提携契約を締結した。提携による取引イメージは以下の通りである。

出典:DANベンチャーキャピタルのプレスリリース資料

この業務提携契約では、CAMPFIRE Angelsを利用して資本調達を行う企業に対して、WILLsが株主総会招集及び議決権行使の電子化やオンライン株主総会開催等を含む株主管理全般のDXサービスを提供する。WILLsではブロックチェーン技術を利用した株主管理プラットフォームにより、上場会社50社超を対象に株主管理のDXサービスを提供しているが、今回の業務提携によりECFで株主が増える非上場会社向けに同等のサービスを提供することになる。

会社法では、取締役会設置会社においては、株主総会の招集通知は書面で郵送することを原則としている(会社法第299条第2項)が、株主の承諾により電磁的方法により通知ができる(同条第3項)こととされている。また、電磁的方法により招集通知を受け取った株主は、電磁的方法により議決権の代理行使の委任を行うことができる(会社法第310条第3項、第4項)。そこでCAMPFIRE Angelsでは株主間契約の中で、電磁的方法による招集通知(参考書類を含む)の送付について承諾するとともに、株主の委任状による議決権の代理行使について発行会社がこれを承諾する条項を付加している。株主間契約は投資家がCAMPFIRE Angelsで申し込みをする際に、同意を条件としているものであることから、CAMPFIRE Angels経由の株主は全員が、招集通知の電磁的送付を承認したことになる。

WILLsのサービスを利用するCAMPFIER Angels発行会社については、上記の株主間契約による株主の同意に基づき、WILLsのプラットフォームを通じて株主総会招集通知の電磁的送付及び電磁的委任による議決権の代理行使が可能となる。また新型コロナ感染症の拡大に伴い、オンライン株主総会へのニーズも高く、WILLsでは電磁的委任による議決権の代理行使または電磁的議決権行使を前提とした、オンライン株主総会ツールの提供も行っているところである。

上場会社を対象とした場合、招集通知の電磁的送付について株主全員から承諾を得るのは、なかなか難しいところがあるが、CAMPFIRE Angelsで株式を募集する非上場会社の場合は、既存株主が少数であるとともに、上記の通り同意を前提に株式申込みを行っていることから、招集通知は100%電磁的送付とすることが可能である。招集通知の印刷、封入、発送といったアナログの業務をゼロとすることができるのは画期的と言えよう。またWILLsのツールには議決権の電磁的行使と連動して賛成、反対を自動集計するツールが含まれている。こちらも面倒な集計作業を軽減する効果は大きい。

なお、CAMPFIRE Angelsではそのプライバシーポリシーにおいて、株主管理DXサービスの目的に使用することに限定して、投資家会員の氏名、住所及びメールアドレスの情報を、申込を行った発行会社及びWILLsに提供することを明記している。投資家会員は当該プライバシーポリシーに同意した上で、株式申込を行う仕組みで、個人情報保護には万全を期しているところである。

3 プレミアム優待倶楽部による株主優待サービスの共通化

WILLsの株主管理DXサービスを受ける会社では、「プレミアム優待倶楽部」と称した株主の会員組織を運営する仕組みになっている。株主は会員登録することでWILLsの株主管理DXサービスを受けられるが、株主にとってそれ以上に大きなメリットとなっているのが株主優待ポイントの付与である。ユニークなのは、WILLsと契約している複数の会社の株主となっている投資家は、各社のプレミアム優待倶楽部の株主優待ポイントを共通ポイントとして合算して、WILLsが用意した商品等と交換することができることである。株主にとって優待ポイントが得られることはプレミアム優待倶楽部に登録する大きな動機となっている。その結果、発行会社にとっては株主管理のDX化率を促進できというのが、WILLsのサービスを利用するメリットとなっている。証券市場では株主優待制度に着目して投資を行う投資家も少なくない。プレミアム優待倶楽部を導入する上場会社の増加する中で、今後、プレミアム優待倶楽部の導入及び優待ポイントの付与率等の設計が、投資の選択基準の要素にもなるとも考えられるところである。

一方、スタートアップ企業においては将来への投資を優先する考えから、投資家への還元策として株主優待制度は殆ど用いられて来なかった。しかしWILLsのプレミアム優待倶楽部については、上場会社と優待ポイントが共通化されるメリットが従来と異なる。単独では魅力的な株主還元を行うことが難しいと考えているスタートアップ企業でも、大会社と共通の優待サービスを株主に提供することであれば意味があると判断する可能性がある。

WILLsの株主管理DXサービスを利用する上場会社は50社を超えている。これらの上場会社のプレミアム優待倶楽部に登録する株主数は40万人に及ぶ。CAMPFIRE Angels発行会社の情報はプレミアム優待倶楽部の会員にメッセージとして提供できることから、多くの個人投資家に会社や事業の内容を知っていただく機会となる。CAMPFIRE Angelsの投資家会員の増加につながるとともに、発行会社にとっては資金調達額を増額が期待されるところである。

おわりに

2019年の会社法の改正により、株主総会資料の電子提供制度が創設された。上記で解説したように、現行会社法では、株主の個別の同意により電磁的方法による株主総会の招集通知の提供は可能であるが、本改正による電子提供制度では、株主の個別の同意を得ることなく、ほぼすべての総会資料を電子提供することができるようになる。電子提供制度は、非上場会社でも、定款に電子提供措置をとる旨の定めを置くことによって採用することができる。電子提供制度の施行日は改正法の公布日から3年6ヶ月以内とされており、今のところ2022年3月までに施行されることが予定されている。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、株主総会にインターネットを活用した電子的プロセスの導入に関心が高まる中、今回の会社法改正による電子提供制度には大いに期待が膨らむところである。電子提供制度は、定款に電子提供措置を採用する旨を定めた会社が、株主総会資料を自社のウェブサイト等を通じて提供した場合、株主に対して適法に提供したものとする制度である(改正後の会社法325条の2)。会社にとっては株主総会資料の印刷や郵送の負担が軽減されるうえに、紙媒体での表現の制約がなくなることで、より充実した情報開示にもつながると考えられている。

ECFによる株式の申込から株主総会資料の提供まで全てがDX化されるCAMPFIRE AngelsとWILLsの業務提携の取組みは、社会のDX化推進の流れを先取りする試みとも言える。今後の電子的プロセスによる新たな株式会社のガバナンスの在り方を占うものともなりそうである。この取り組みによるCAMPFIRE Angelsの新案件は2021年3月中にも登場する予定である。ご期待いただきたい。