RaspberryPi ComputeModule4レポート

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Raspberry Pi(以下ラズパイ)の最新産業用モデルであるCompute Module4(以下CM4)が昨年秋に海外で発売されている。(日本では技適の問題でまだ未発売。2021年3月11現在)ComputeModuleについては、通常のラズパイを知っている人でも知名度が低く、実際に使ったことがある人はあまり多くないと思われる。

価格はラズパイに比べて半額程度~で、基板サイズは一回り小さい。拡張端子はついていないので、ユーザ-が任意に基板を設計すれば、必要なインタ-フェ-スのみで構成されたオリジナルのデバイスとしてリリ-スできる。

CM4のラインナップは、Wirelessの有無、RAM容量、eMMC容量の組み合わせで32種類あるが、今回、Wifi無、RAM容量1GB、eMMC容量32GBのCM4を入手することができた。このモデルは電波が出ないので、技適の心配なくテストができる。

CM4専用のIOボード(RPI-CM4-CM4-IO)も発売されていて、CM4をIOボードに取り付ければ、ラズパイ4以上の機能を使用することができる。価格は、CM4とIOボ-ドで9,000円程度。このIOボードの完成度は高く、CM4を存分に活用するための回路を実装している。大きさは、手のひらサイズを一回り大きくしたようなサイズ感。(160 mm × 90 mm)IOボード基板にネジ穴も用意されているので、これを商用向けにデザインした筐体ケ-スに組み込めば、そのまま自社製品が出来上がってしまうのではないかと思うぐらいだ。(※ソフトウェア開発は、別途必要。)

以下は、CM4とIOボ-ドの組み合わせで調査し、わかった内容だ。

OSをインスト-ルするストレ-ジはeMMCで、SDカードよりも高信頼な運用が行えるのはもちろん、バッテリバックアップされたRTCの搭載により、オフラインで電源を切って使うような場面でも、時間情報を保持しながら運用できる。また、12Vアダプタ-が使用でき、内部回路で5Vに変換しているので、ラズパイよりも安定した状態で電力を供給できる。PoE HATにも対応しているようだ。まさに、ラズパイの弱点であるSDカード破損の問題、起動中の電力不足など電源周りの弱点を見事に克服した製品だといえる。また、USBポートは標準で2系統しかないが、PCI EXPRESS(以下PCIe)スロットも搭載しているので、パソコン用USB増設ボードを取り付けて使用することが可能だと思われる。

IOボ-ドにCM4を装着した状態

このように、スペック的には良い事ずくめのようではあるが、実際の開発の場合には注意が必要である。

まず、ラズパイでの開発に比べると圧倒的に情報量が少なく、フォ-ラムでのコメントは鵜呑みにできない。オフィシャルなドキュメントも簡易な説明だけなので、最低限度の情報しか得られない。トラブルがあったときなど、検索で解決策が見つかることも少なく、基本的に自己解決するしかない。

例えば、RTCを使えば、シャットダウンからのWAKEUPなどが行えるのだが、実際に使う場合の情報がデータシ-ト上で不足していた。(2021年3月現在)地道に、搭載している部品のデータシ-トを集め、RTC設定のためのI2Cのコマンドを実験しながら、試行錯誤していく必要があった。こうしたことは、ハ-ドウェアとソフトウェアの両方の知識を持ち合わせていないとなかなか難しいことだ。

また、MIPIカメラの使用方法についても注意が必要だ。ラズパイカメラは、そのままでは接続できず、ラズパイZERO用のカメラコネクタのサイズに変換する必要がある。さらに、ラズパイホ-ムペ-ジでは、新旧のコンピュ-トモジュ-ルをまとめて書いてあるので、よく読まないとCM4について書いている部分を見落としてしまう。

PCIeについても、PCIeデバイス用のドライバーが標準では一部のものしか用意されていないので、基本的には自分でコンパイルする必要がある。物理的にも、基板についているコネクタの向きが真上なので、上方向に空間を取られてしまう。こうした問題があり、PCIeデバイスを組み込んで製品化するのは、簡単ではないようだ。

IoT製品を開発する上で一番大事なことは、目的に合った動作を実現できる製品であるかどうかであるが、長期的な運用・保守の部分にまで気を使わなくてはいけないとなると、開発のハードルは一気に上がり、検証にも時間がかかってしまう。製品開発者の中には、こうした業務に苦手意識を持っている場合もあり、一早くリリ-スしたいがために、長期保証をおろそかにしてしまうこともある。とはいえ、現場でトラブルが起きてから対応するのでは遅すぎる。

こうした面倒な部分は、信頼できるメーカ-にお願いして、自社製品の核となる部分の開発に専念できるようになって欲しいものである。詳しいドキュメントがあって、動作環境保証をサポ-トしてもらうことができれば、より多くの優れたIoT製品が、日の目を見る機会が増えることだろう。