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コロナ禍のスタートアップ資金調達!非上場株式取引制度の規制緩和策(2)

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非上場株式について、日本証券業協会が専業業者に投資勧誘を認めている二つの制度、株式投資型クラウドファンディング(以下「ECF」という。)制度と株主コミュニティ(以下「株コミュ」という。)制度。前回は、その現状における課題を示した。今回はその改善を図るべく筆者が金融庁に提言した規制緩和策(以下「本提言」という。)を紹介する。

(1)投資者一人当たり年間一社につき50万円の投資上限規制の緩和

DANベンチャーキャピタルが運営するCAMPFIRE Angelsの登録投資家を分析すると、平均的な投資家像は30代~40代のサラリーマン層。ただ1億円以上の保有資産を有する富裕層も10%近くを占めている。平均的な投資家にとっては、1社あたり50万円の上限は適当なものと考えられるが、富裕層については、上限を緩和してもリスク負担力の観点からは問題ないと思われる。

米国のレギュレーションでも、保有金融資産100万ドル以上のAccredited Investorについては、ECFにおいて投資上限はない。このようなエンジェル投資家が米国のスタートアップの資金調達を支えている。そこで本提言では、日本でもこれに準じて、保有金融資産1億円以上の投資家や特定投資家について、50万円の上限規制を撤廃する規制緩和策を提案している。

(2)年間の発行総額の上限1億円規制の緩和

 ECFによる募集取扱は年間1億円未満とされているが、そもそも1億円以上の株式の募集については監査法人又は公認会計士による財務諸表監査が付された有価証券届出書の提出と求められている。ECFによる規制をかけなくても、財務諸表監査の対応が困難な非上場会社のでは、不特定多数を対象とする1億円以上の勧誘は事実上できない。逆に、有価証券届出書を提出する前提であれば、投資勧誘を規制する理由はなく、1億円以上の募集についてもECFによる募集取扱の対象としても差し支えないと思われる。

本提言では、有価証券届出書の提出を前提に、ECFで1億円以上の募集を行えることとする規制緩和を提案している。

(3)通算規定の緩和

ECFの年間1億円の上限規制については、過去1年間に行われた同一の種類の有価証券の募集及び私募の金額を通算して計算することとされている。一方、有価証券出書の提出が求められる1億円以上の募集については、過去1年間に行われた同一種類の有価証券の「募集」のみを通算することとされており、過去1年間に行われた「私募」の金額については通算の対象となっていない。開示規制における通算規定との整合性を考えると、ECFの少額

 また投資者一人当たり1社につき年間50万円の投資上限についても、同じ投資家が過去1年間に発行会社の増資を引き受けている場合は、その金額を通算することとされている。例えばある会社の第三者割当増資で30万円を引き受けた人は、その会社が半年後に行うECFの募集では20万円までしか投資することができない。一人50万円の投資上限規制は、ECFにおける開示が不十分なことから、投資リスクを軽減することが趣旨であることとから、ECF業者を通じた募集に限定して通算すれば足りると考えられる。

 以上の観点から、ECFにおける1億円の上限における通算規定と50万円の投資上限の通算規定について本提言では、上記の趣旨に合った規制緩和を提案した。

(4)ECFによる売出の取扱の容認

リスクマネー供給を担う資本市場の機能は、本来、発行市場機能と流通市場機能の両輪。流通市場機能により換金性が高まれば、投資リスクが軽減され、発行市場において企業の資金調達は容易になる。ところがECF業者に認められている業務は新規発行株式等の募集の取扱業務に限定されており、流通取引の媒介はできない。そのためECFで募集後の株式の流通性は極めて低いのが実状である。

そこで、本提言では、ECF業者の業務に、募集の取扱いのほか、売出の取扱いを加える規制緩和を提案している。ECFで株式を取得した投資者に対してECF業者が売出の勧誘を行うとともに、取得勧誘を同時に行うことができれば、換金の場となり、流通性を高めることができる。上場株式と異なり、長期の成長を期待して投資を行うECF銘柄は、月に1日程度売出日を設定し、その間、売りと買いを集めてマッチングできれば、換金ニーズに十分、応えられる。

(5)ECF業者に対する株主コミュニティ銘柄取扱いの容認

株主コミュニティ銘柄の取扱を行うには第一種金融商品取引業(いわゆる証券会社)の登録が必要とされている。株主コミュニティ銘柄についてインターネットを通じて売買の媒介を行うにあたり、価格形成機能を市場に持たせようとすると金融商品取引法に定める私設取引所(いわゆるPTS)の認可も必要となる。

そこで、本提言では、ECF業者による売出の取扱を容認する(4)の規制緩和に加えて、ECF業者に株主コミュニティ銘柄の取扱いを認める規制緩和を提案している。ECF業者が募集取扱業務を行った株式について、続けて株主コミュニティ銘柄として取引を行うことが可能となると、流通性が改善され投資者のリスクはかなり軽減される。

なお、株主コミュニティ銘柄については規則では運営会員に発行会社の審査及び投資者に対する情報提供を義務付けているが、その内容はECF業者に求める内容とほぼ同等のものとなっている。したがって実務上、ECF業者が株主コミュニティ銘柄を取扱うことには特段の支障がない。ECF業者にとっては、セカンダリーの取引が新たな収益機会となることから、収益力向上と財務基盤の強化につながることが期待され、投資者にとっては取引の安全を高めることに寄与するものと考えられる。