Raspberry Pi Picoは市場を制覇できるか?

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Raspberry財団から、Raspberry Pi PicoなるSBC(シングルボードコンピュータ)がリリース発売された。価格は5$、日本では550円とのこと。

見かけはESP32シリーズやArduinoにかなり近い。サイズはおおよそ50㎜×23㎜。ピンヘッダなどは装備されておらず、ベースPCBなどにピンヘッダなどを経由してダイレクトソルダリングしてくれ、という仕様。CPUはデュアルコア Arm Cortex M0+ 133MHz/MAX ベースで周辺はオリジナル設計ということらしい。SRAM264MB FLASHメモリは2MBオンボード。モニタプログラムは搭載されているが、完全なエンベデッドを指向し、Linuxは動作しない。

どこかのサイトで、“Linuxが動作しないということは割込みが無いので、モーター制御などに向いているということです”という旨の記述があったが、多分これは、Linux上でプログラマが完全に把握できるリアルタイムシステムを構築するのが難しい、ということを言いたかったのかも知れないが、その他にも誤解を招く記述があったので、こうした情報を鵜呑みにしないようにしていただきたい。

それはさておき、Linuxなんて不要なIoTデバイスとしての役割、場面は沢山あるわけで、RaspberryPiと比較する、なんてこと自体がナンセンスな話だ。比較するとすれば、Arduinoファミリー、ESP32シリーズなどになるだろう。

まず、価格が$5ということ。今回RPIファミリーとしては珍しく動作温度をきちんと定義しており、-20℃~85℃。スペックシートを読むと、消費電力もCPUをフルパワーで動かさなければ、恐らく20~30mA以下。電源も1.8V~5.5V対応だ。RPIはADコンバーターを持っていなかったので、ADCが必要な場合、Arduinoなどを外に置いて、USBで通信させるようなことをしなければいけなかったが、RP2040(SoC)は12ビットADCも搭載した。

過去のソフトウェア資産を考慮しないとするならば(C、C++をサポートしているので、それほど苦労なく移植できるだろうけど)、Arduinoは多分、“終わった”と言っていいだろう。ハード的なコンパチビリティを持ちつつ、再生産する必要がない限り、Arduinoを選択する理由がない。

GPIOが何本か?なんて、元々現場でそれが致命傷になることは多くない。実際、26本のGPIOはこういったボードではほぼ横並びのスペックだ。そうなると、Picoが倒さなければいけない相手は、ESP32シリーズだ。

色々なバリエーションがあるが、特徴的な点として、WiFiや、BLEのサポートだ。日本での技適などもきちんと取得している。もうひとつ(多少差があるが、ベースコンセプトとして)ESP32シリーズは、-40℃~105℃のオペレーティングレートを謳う。

仮に、ESPにこういった無線ソリューションがあって、10$だったとするならば、無線ソリューションを要らないユーザは、Picoを選ぶ。5$も安いからだ。しかし、同じ価格となると、仮に無線ソリューションを使わなくとも、“値段同じなんだから、使わなきゃいいだけじゃん?”となるはずだ。荷物にはならない。クロックもESPは240MHzだ。速度が欲しい場でもPicoに対し優位性を持つ。MicroPythonが動くなど、教育現場などでの採用はあるかも知れない。もちろん、ガジェット好きも一度は触るだろう。

だが、産業用途では、かつての兄貴RaspberryPiのポジションは残念ながら得られないだろうと筆者は予想する。財団の本当の目的やマーケティングの真意(産業用途以外にあるとするならば)が正直わからないプロダクツではある。

Arduinoが迷走、失速しているように、OSH(オープンソースハードウェア)にはこういった間違いが(失礼!)常に市場を不安にさせる。(もしくは信頼できない)特に日本の市場はこういった矛盾に敏感なのだ。

もちろん、何もしないで、文句ばっかり言ってる日本市場も世界から見ると極めて不思議な市場ではあるんだろうけど。いずれにせよ、兄貴分の成功は簡単ではなさそうだ。