コロナ禍のスタートアップ資金調達!非上場株式取引制度の規制緩和策(1)

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日本証券業協会が2020年11月30日にスタートした日本証券業協会の「非上場株式の発行・流通市場の活性化に関する検討懇談会」(以下「検討懇談会」という。)。コロナ禍においてスタートアップにリスクマネーを円滑に供給すること等を目的に、非上場株式の取引規制の緩和策を検討するプロジェクトである。

我が国の非上場株式の取引制度は、かつては証券取引所に近い発行流通制度として日本証券業協会が運営したグリーンシート制度があったが、この制度は2017年に廃止された。グリーンシートに代わる制度として生まれたのが株主コミュニティ(以下「株コミュ」という)と株式投資型クラウドファンディング(以下「ECF」という。)である。検討懇談会ではこの2つの制度の規制緩和をテーマとして討議が始まった。

(1)株主コミュニティ制度の現状 

日本証券業協会では、会員の証券会社に非上場株式の投資勧誘を原則禁止している。その例外として条件付きで勧誘が認められている非上場株式が株コミュ銘柄とECF銘柄である。

2020年11月末日現在、株コミュ銘柄を取扱う証券会社(株コミュ運営会員)は、今村証券、島大証券、みらい證券、大山日ノ丸証券、みずほ証券、野村證券の6社。取扱銘柄数は20銘柄となっている。株コミュは、主に既発行株式の売買の場として機能しているが、新規発行株式の募集を証券会社が取扱を行うことにより、リスクマネーの供給の仕組みとしても機能することが期待されている制度でもある。ただ、現時点では株コミュ運営会員による新株式の募集等の取扱による動きは限定的で、私募の取扱いが1件行われているに過ぎない。以下は、株コミュによる売買金額と売買参加人数の推移である。

(出典:検討懇談会資料)

売買金額は年々増加しているものの、2019年の売買金額21億円。売買に参加した人数は3,300人余りとなっていえる。

(2)ECF制度の現状 

ECFは、証券会社又は専業の第一種少額電子募集取扱業者(ECF業者)に、少額の非上場株式のオンラインによる募集取扱を認めている制度である。少額とは、年間の募集総額1億円未満で、投資者一人当たり一社につき年間50万円以下と定義されている。オンラインだけで、対面や電話での勧誘は認められていない。2017年4月に日本クラウドキャピタルがECF第1号案件の募集取扱を開始。続いて2017年9月には筆者が代表を務めるDANベンチャーキャピタルが募集取扱を開始した。2020年10月までにECF業者は7社に増加。募集取扱による成立案件数は144件、資金調達総額は累計46億円となっている。以下は、ECF業者別の募集取扱の実績である。

(出典:検討懇談会資料)

(3)現行制度の課題

株コミュ、ECFともに順調に成長しているようには見えるが、実は非上場企業の資本調達を牽引しているという状況には至っていない。株コミュでは20銘柄の売買が行われているに過ぎない日本に対して、米国では非上場株式の取引市場であるOTCマーケット(旧ピンクシート)に11,600銘柄が登録され流通している。さらにナスダック・プライベート・マーケット(旧セカンドマーケット)やシェアーズポストなど、Accredited Investor(自衛力認定投資家)を対象とした非上場株式のマーケット・プレイスも広がりを見せている。

ECFも海外と比較すると、まだまだ伸びは十分とは言えまない。以下は2017年における世界各国のECFの金額比較である。この年、日本は制度開始の実質初年度でグラフは参考にはならないが、2020年までの累計でも46億円と世界各国と差があるのが実状である。

(出典:検討懇談会資料)

米国のECFは、日本のECF制度とよく似たRegulation Crowdfundingに加え、一定の開示により年間5,000万ドルまでの募集を認めるRegulation A、Accredited Investorに限定して募集を認めるRegulation D Rule 506C、転売制限を前提に500万ドルまでの募集を認めるRegulation D Rule 504など、多様なルールによって非上場株式の募集が認められていえう。しかも、そのルールについてさらなる規制緩和が進められようとしている。

コロナ禍の今年、リスクマネー供給の拡大を求める声は高まっており、金融当局としても世界に後れを取ることないよう規制緩和を進めようとしているところである。

 次回は、その規制緩和の具体策の検討の過程で、ECF業者を対象としたヒアリングに対し、筆者の私案として金融庁に提出した規制緩和策について考察する。