コスト削減かニュービジネスか?

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平成30年度版情報通信白書が指摘している。「日本のICT投資額に対する米国のICT投資額を算出すると、1994年は1.4倍であったが、2016年には4.0倍と差が広がり、差が拡大している」と。ずっと言われ続けていることだ。残念ながら、ここ10年くらい単語は変わっても、結論はいつも同じだ。IoTでもAI分野でもイヤになるくらい同じ指摘しかされていない。

拙著の貧しい経験と浅学なオツムからだが端的に言わせてもらおう。アメリカに代表されるIT先進国は、ニュービジネス、つまり、売上を上げる、新しい売上を作るために、ITを駆使しようとする。言うまでもなく、GAFAの戦略だ。ドイツは製造業と消費者を直結させ、モノづくりの強みをダイレクトにマーケティングに反映させるために、ITを駆使しようとする。個人のデマンドを工場にどうやって伝え、どう答えるかを考えている。もちろん、B2Bでの最適化も含まれてはいるが。

一方、日本はどうなのか?日本のICT投資はコスト削減が最大の目標である。実は日本のオフィス環境のIT化はアメリカより遥かに進んでいる。しかし、コスト削減への投資は、どんなに頑張ってもせいぜい利益率1%UPが限界である。ICT投資が終わって、利益向上1%が達成されれば、次は何が起きるのか? リストラである。籠城戦なのである。夢はない。かたや、IT先進国の従業員は、新しい売上から得られるモチベーション、給料UP、技術の取得等に夢を抱く。

先日、ある商社さんのウェビナーでRaspberryPiの産業利用について、お話しさせて頂く機会を頂戴した。思ったより(失礼)多くの方にご参加いただき、オープンソースなハードウェアにも興味をお持ちの人が多いのだ、と実感した。しかし、大半が現場の技術者なのである。マネジメント、経営者クラスではないのである。GASKETで何度も同じようなことを発信していて恐縮なのだが、日本でRaspberryPiをビジネスで使って良いのか? という発想の原点はハードウェアコストが安い、という理由が大半なのである。

技術情報が世界中にある、とか、プロタイプが一瞬で出来上がるとか、とにかく、ニュービジネスを速く立ち上げたい、という理由ではないのだ。だから、特に大企業や品質に過剰に反応する会社はこういったソリューションを選択することができない。

だからと言って、いちからスクラッチでCPUボードを開発するような技術も資金もない。そうなると、ビジネスのアイデアは実現できないままに先送りされる。オフィスICTは手を変え、品を変え、色々なモノが次々と出てくる。しかし、それは決して新しい売上は産まない。

日本の経営層は、“品質”だけではなく(それはまったく否定しないが)新たな売上を最小コストで立ち上げる“世界”の潮流を知るべきだろう。

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