生産者と消費者を本当にライブで繋いでしまう 超簡単リモート接客のリアリティ

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東京秋葉原の高架下にある「日本百貨店しょくひんかん」の店内を歩いていたら、突然、モニター越しに声をかけられた。店内に設けられた有本農園の梅酒の陳列コーナーに置かれたモニターは、和歌山県にいる梅酒の生産者、有本さんとFacetimeでつながっており、和歌山県から声をかけられたのだった。コロナ禍で集客も移動も制限がかかり、生産者が店頭に立って生活者とコミュニケーションを取るのが難しくなった。そこで、この店舗では生産者と店頭をビデオ通話でつないだそうだ。

画面内の有本さんは、タブレットのカメラ越しに店内の様子を見て、近くを通りがかった人に向けて「LIVEやってまーす」などと声をかけて呼び込み、興味を持って近づくと「白い箱が日本酒で漬けたもので」「梅の栽培から僕がやっているんですよ」と商品説明を行っているそうだ。リモートでもスライドや動画などは一切使わない、まったくの徒手空拳でトークのみ。しかし、だからこそリアルだと感じ、この人が作ったのなら美味しいのだろうと思わされ、まったくの予定外だったが1本3,000円の高級梅酒を買ってしまった。

機材構成と仕組みは非常にシンプル。タブレットにマイク内蔵スピーカーとPCモニターを接続し、Facetimeを立ち上げている。タブレット内蔵の前面カメラでは撮影範囲が狭くなってしまうため、カメラには広角レンズクリップが取り付けられていた。これだけでも、意外と普通に、ストレスなく会話ができてしまう。案内している梅酒は、「Plumity black」と「Plumity White」の2種類あってそれぞれの案内を受けたのだが、個装箱が黒と白で区別が付きやすいこともあり、画面越しの説明でも不自由がまったくなかった。少々失礼な言い方をすれば、この程度の機材で、ストレスなくコミュニケーションができてしまうのであれば、工夫次第でさまざまなことができる。生産現場から伝えたり、店舗側にサポートするスタッフを配置したりすれば、さらに人の注目を集め、楽しいコンテンツにできるのではないか。

クリップ式の広角レンズをつけることで、店内の様子がわかりやすくなる。
クリップ式の広角レンズをつけることで、店内の様子がわかりやすくなる。
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大変おいしいです。

これはオフラインの店舗だから成立するのであって、オンラインショップだとちょっと違うかなと感じた。家の中では話しかけるのは消費者側からであるべきだからだ。この事例でも、客側から声をかけるよりは生産者側が声をかけた方が新鮮かつインパクトもある。オンラインショップで消費者側から声をかけるというのは非常に敷居が高いし、それだけだと新しい出会いを作りにくい。そのためはやはりオフラインのリアル店舗が求められるのではないか。

またこの場合、生産者である有本さんが畑にいて、農作業をしながら接客できたらどうだろう。強烈に買いたくなるのではないか。生産者と消費者をまさにライブでつなぐこうした試みは、極めて示唆に富んだ事例であると思う。