Raspberry Pi Compute Module 4がリリースされた

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10月19日 Raspberry Piの産業用途向け最新ソリューションとして、Raspberry Pi Compute Module 4(以下 CM4)の発売が発表された。基本的なアーキテクチャはRaspberry Pi4と同等。ただし、eMMC, RAMそれぞれの容量、無線デバイス有り無しの組み合わせにより、バリエーションは32種類にもなってしまった。(筆者はこのうちの4種類くらいだけが在庫がきちんとしていて、残りは事実上入手しにくいものになると予想しているが。)

その結果価格も32種類になるわけで、最小構成で25ドル、最大構成で90ドル程度となる。スイッチサイエンス社のリリースでは、日本では、約6,000円~約10,000円の価格になるそうだ。当然、CM4には“手足”はないわけで、IOボードが必要となり、こちらも発表された。

RaspberryPiと同等の各種IO、外部ポートを装備。日本での発売価格は5,650円と発表されている。(スイッチサイエンス社)

さて、果たしてCM4は日本で普及するのだろうか?

Raspberry Pi Compute Moduleシリーズは実はすでに発売されていたが、今回のCM4は過去のCM3などと物理的な互換性は一切存在しない。一番の違いは、サイズとIOコネクタだ。CM3まではIOコネクタはJEDEC DDR2 SODIMMソケットの規格に合わせて装備されていた。しかし、CM4では(恐らく)独自のコネクタに変更された。

上下に見えるコネクタが外部IOコネクタ

ごく黎明期を除き、Raspberry Piファミリーは、物理的互換性をかなり重視してきた。RPI4は、3からHDMIポートでの物理的、論理的アップデートがあったため、厳密にはケースを流用できないなどコンパチビリティは多少犠牲になったが、PCBの大きさは同じだし、影響は大きくなかった。CM3からCM4はまったくコンパチビリティを持たない。

何故か?それは単純に普及しなかっただけの話である。CM3ソリューションの欠点は幾つか挙げられるが、重要な点は以下だ。

①価格が高すぎた。純正IOボードと組合わせると簡単に3万円近くなった。
②最適化したIOボードを手前で設計しようとすると、それなりのハードウェアの技術が必要になる。また、少量ロットでの独自PCB開発はイニシャル費用も捻出できないし、その後の量産も価格を下げることが難しい。

②の問題は、①が解決されることにより、自動的に消滅する問題だ。つまり、Raspberry財団は、かなり本気でCM4のソリューションを提供することにしたと言えるだろう。かつ、CM4+新IOボードには幾つかの産業用途向けの機能が追加された。特徴的なものを挙げると、

①バッテリバックアップのリアルタイムクロック(RTC)を搭載
②CM4自体のオペレーション温度を0℃~80℃と規定(ただし、IOボードは現時点でこれらを発表していない)
③RTCからCM4をブートさせる機能を追加。これはわかる人にはわかる、かなり重要な機能だ。バッテリなどによる間欠運転をRaspberry Piソリューションで行えることになる。
④ファンコネクタ装備

今まで、標準のRaspberry PiでもComputeModuleを使用した場合でも、ユーザが何かしら工夫しなければいけなかった部分である。

日本で普及するのか?フル機能版でも2万円以下、ケースを入れても多分25,000円以下の原価(材料費?)でこれだけのスペックを得られるのであれば、それなりの需要は生まれるはずだ。しかし、大企業や品質に拘る中堅以上の企業がいきなり採用となるか、というとこれはこれで難しい。

大量生産するならば、一からPCBを独自で開発した方が安くなる。では、1,000台ロットくらいで、純正のIOボードを利用するとするならば、先ほどの試算では、25,000円くらいの原価となる。しかし、何台作ってもコストは下がらない。そうなると、少なくともIOボードのところだけ、独自で開発しようか?という選択肢が残る。その場合、イニシャルを吸収できるのか、そして技術力が存在するのか、という話になる。

そして、何よりも耐環境的な品質保証を誰がするのか?という、オープンソースハードウェア(今や完全オープンではないが)に永久についてまわる問題は解決されていない。筆者のつたない経験からすると、日本でRaspberry Piを知っている人間が10人いたとすると、ComputeModuleファミリーの存在を知っているのは、そのうち、1人いるか居ないか程度だ。技術職を除いたとするならば、50人に一人くらいだろう。一度でも、Raspberry Piでの信頼性や、産業利用を本気で検討したなら、ComputeModuleのソリューションにはたどり着いていたはずである。つまり、そもそもそういった検討が日本ではまだまだされていない、という逆説的な証明になるのではないだろうか。

スピード感のある、ベンチャー企業はリスクとスピードを秤にかけ、スピードを選択する。こういう企業がRaspberry Piをそれなりの量で使用しているとも、ちらほら聞く。しかし、日本全体がこういったソリューションを受け入れられるようになるには、もう少し時間が必要なのだろうと思う。