アナログな回答項目に驚き

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大正時代に起源をもつ、5年に一度の国勢調査の通知が先日我が家にも届いた。仕事柄、筆者はアンケート調査に回答する機会が時々あるのだが、国勢調査票を見て、まず口から出た言葉は「こりゃひでぇなぁ」だった。コロナ禍で多くの社会・経済の常識が一変、多くの人が生活にも苦しむ非常事態において、こんなことやってる場合なのか。数年前から準備をすすめてきて、コロナだからといって、法律を曲げられるわけもないのはわかっているが。

国勢調査に要する費用は約650億円といわれている。費用対効果などといった切り口で、論じることは筆者をはじめ庶民にはとてもできないので、得られた情報は650億円の価値があるものと信ずるしかない。しかし、情報収集の方法や設問について、疑問を持つことくらいは許されるだろう。

今回調べてみて初めて知ったのだが、設問はだいたい固定化されており、変化は少ないようだ。以下は、10年ごとに行われる大規模調査の項目だ。なんでこんなこと訊くの?という疑問抱くと回答に時間がかかるので、心を無にして淡々と答えよう。

氏名
男女の別
出生の年月
世帯主の続き柄
配偶の関係 
国籍
現在の住居における居住期間
5年前の住居の所在地
在学、卒業等教育の状況
就業状態
所属の事業所の名称及び事業の内容
仕事の種類
従業上の地位
従業地又は通学地
従業地又は通学地までの利用交通手段
世帯の種類
世帯員の数
住居の種類
住宅の床面積
住宅の建て方
大規模調査の項目

開始当初は、主に人口に関する調査にとどまっていたが、驚くべきことに、昭和15年からは、ほぼ現行と同様の設問項目になっているようだ。80年間変わらず同じことを調べつづけることで変化がわかる。これも重要かもしれないが、経済規模、社会常識、生活様式も大きく変わる中、ほかに調べるべき重要なことはないのだろうか。

昭和15年の調査票

今回の調査では3つ回答手段が用意されている。

A書類に記入して調査員に手渡し大正時代から続く王道
B書類に記入してポストに投函感染症拡大防止のため、今回初めて導入
C専用サイトからオンライン回答全国的には前回(2015年)から導入
2020年調査の回答手段

筆者は、設問数をみて、真っ先にB:記入して郵送 のパターンを選択した(普段は一日中PCに向かって仕事をしているが、この程度ならPCを起動する方が面倒だ)のだが、手書き文字列で回答する項目があるのを見て衝撃を受けた。所在地欄は、所在地コード表があるものと思い、調査票をひっくり返して探したくらいだ。このフリーの手書き文字列は、この後どのように処理されるのだろうか?光学文字認識+AIなどで自動判読されるのだろうか・・・仮にそうだとしても、識字率にはあまり期待できないし、そこからデジタルデータにするまでは、結局のところ職員が1件1件読んで、確認・補正していくに違いない。健全なる納税者として、全くもってぞっとする話だ。

調査項目ではないが、問い合わせ目的として、電話番号を書く欄もある。氏名、年齢、家族構成、職業、電話・・・名簿業者ならずとも、多くのビジネスにとって、涎が出るほどの個人情報の宝庫だ。そういう意味で650億円は超お安いお買い物ともいえるかもしれない。

さて、政府はデジタル庁なる責任機関を設けて、(いまさらながら)情報のデジタル化、行政手続き、官庁内業務のICT化を進めようとしているが、多くの「抵抗勢力」もあり、政府・官公庁内でスピーディで効果的な改善策をひねり出すことは全く期待できない。

この国勢調査におけるデジタルデータの生成過程は、ICTを活用した省力化のケーススタディとしては手ごろで、わかりやすい題材に思える。学生に研究テーマとして差し出して、コンペする位の度量が政府にあるといいのだが。

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