JR東日本の終電繰り上げのニュースが与える交通広告への影響

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2020年9月3日、JR東日本は2021年春のダイヤ改正で終電時刻を30分程度繰り上げすると発表した(PDF)。この発表は、ナイトタイムエコノミーなどさまざまな分野に衝撃を与えたが、その業界のひとつが交通広告だ。

終電時間を繰り上げる理由のひとつとしてJR東日本は、コロナ禍以降で乗客数が大幅に減少していることを挙げている。コロナ禍以降の乗客数の減少は、利用者である私たちも肌感覚として認識していたが、JR東日本がグラフを使って提示した。強烈な下落だ。

終電の繰り上げを行えば、生活者の行動変化は一時的なものから、しばらくは固定的なものになる。さらにJR東日本は「今後、感染が収束した後も、テレワークやEコマースなどはさらに広く社会に浸透していくことが想定され、お客様の働き方や、行動様式も、もとに戻ることはないと考えています」と、不可逆的な変化になることを示唆している。

これらのことは、広告業界から見るとJR東日本が自社の交通広告の媒体価値を「媒体資料にある年に1度更新される路線の輸送人員や駅の乗降人員は、現状に即していない古いデータである。実際には、そこから広告価値は40%近く下落している」「広告価値はコロナ前の水準には戻らない」と言っているのと同義だ。ここまで赤裸々に輸送人員の減少と「もう元には戻らない」との見通しを言われてしまうと、広告主としては交通広告に手をのばすのが難しいだろう。

この厳しい状況を打破する方策のひとつが、「枠買い広告」から「価格変動型広告」への転換だ。たとえば、埼玉高速鉄道の車両内ビジョン「ダイナミックビークルスクリーン」は、世界で唯一、AIカメラでインプレッション計測ができる車両内DOOH媒体だ。この媒体であれば、インプレッションあたりの単価と全体予算を予め設定できるため、乗客が減少した際の広告主のリスクを大幅に減らせる。広告主の出稿ハードルを下げることができる。

また、インプレッションに基づいた価格変動型広告の導入は、媒体社にもメリットが多い。まず、実は枠買い広告を販売するよりも、インプレッション販売したほうが売上が高くなることがある(交通広告のCPMは決して高くないです)。また、路線の輸送人員で価格が決定されてしまう広告だと、媒体側の努力余地が極めて少なくなるため、コンテンツのクオリティーを高めようとのモチベーションが働きにくい。インプレッション販売であれば、どのように見てもらうかの工夫が行われ、コンテンツや番組編成への工夫、成長が期待できる。

輸送人員や乗降人員だけを軸にしていれば、コロナ禍は移動量を減らすことになるため、交通広告はシュリンクするだけだ。ところが、それだけではない価値を示し、それを計測できる基準を提示できれば、成長の可能性も出てくる。JR東日本のこの発表は、JR東日本がここまで言ってしまうのかとの点では衝撃的だ。しかし、内容はすでに知っていた内容でもある。これはを乗り越えていけるか、交通広告は正念場を迎えている。