OOHはターゲティング広告媒体になる

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日本の交通広告が厳しい状況になっている。近年では、関東圏では中吊りやまど上などの紙媒体の売上が落ち込んできたところを、車両ビジョンの好調さがカバーする傾向にあったが、コロナ禍によって輸送人員の大幅な減少に引きずられる形で、デジタルサイネージも含めて総崩れの様相を呈している。コロナ禍前にあっても、車両ビジョンを設置すれば利益が出るというのも、大きな輸送人員を誇る路線に限られた話で、設置にかかるコストが大きいだけに大手の鉄道であっても支線に入った途端に収支がマイナスになるような厳しいビジネスでもある。これまでデジタル化が急速に進んでいたものの、JR東日本の発表のように、もう元には戻らないとすると、いまのビジネスのままでは黒字化できる路線はかなり限定的になる。

しかし、改めて広告メディアを俯瞰すると、OOH(屋外広告:Out Of Home)に、追い風がなくもない。プライバシー保護の動きが強まることで、ウェブ/モバイル広告でのアドテクが大幅に制限され、ターゲティング広告の配信が非常に困難になることだ。たとえばGoogleは、ChromeでのサードパーティCookieのサポートを2022年までに段階的に廃止する。サードパーティであるデータブローカーが発行するCookieを使ってウェブサイトを横断してユーザー追跡してデータ収集し、ターゲティングする手法は使えなくなる(Building a more private web: A path towards making third party cookies obsolete(Chromium Blog))。また、iOSではユーザートラッキングやIDFAの利用がオプトイン方式になる予定となっており、位置情報をデータブローカーと共有したり、アプリ内にターゲット広告を表示したりするのが困難になる(User Privacy and Data Use(developer.apple.com))。これらの動きで、ウェブ/モバイル広告は、ターゲティングがほとんどできない状況に追い込まれる。それに比べるとOOHは「ロケーション」を固定できる、さらに時間を指定して「ロケーション✕時間」と絞り込むことができる。OOHには、他のチャネルよりも高い広告想起率が高い、生活者にとっての偶然の出会いが多く「知るキッカケ」になりやすいなどの媒体特性を強みとしてきたが、相対的ではあるが、ターゲティングの面でも効果ある媒体といえるようになる。

ただ、このターゲティングを強みにするには、鉄道会社や路線単位での広告を媒体する形では厳しい。手間が大きいものになってしまう。SSPと接続するなどしてプログラマティックに売買できるような仕組みが必要だ。また、ターゲティングの根拠となるデータについても、単なる印象論ではなく、アクチュアルのデータが求められることになる。

確かに外出する人口は減った。しかも生活様式が変化した以上、不可逆的なものと覚悟するべきだろう。しかし、メディアプランニングする側の目線で見れば、OOHの価値は上がっているところもある。コロナ禍は悲劇だが、プライバシー保護の動きが同時期にあったことを奇貨とし、活用していくことを考えてもよいのではないだろうか。