デジタルサイネージ業界はヨットレースではなく帆掛船の集団だ

AI/Digital Signage/IoT/Media /

人が電車に乗っていない。人が街に出ていない。JR東日本によると乗降客数は時間帯によって4割から7割近い減少だと言う。そしてそれはもとに戻らないだろうと鉄道事業者自らが追い打ちをかける。

人の数をベースにしてきた屋外広告は、今その存在が問われている。その説明責任が問われている。

話は極めてシンプルである。

(1) コロナで人が外に出ない
(2) 人の数ベースのビジネスは成り立たないか、減額を迫られる
(3) サイネージ業界だけではどうやってもコロナを止められない
(4) 故に、我々にはこの逆風を利用する以外に方法がない

これだけのことだ。

ヨットは逆風を利用して風上に移動することができる。この航法を「クローズ・ホールド(close-hauled)」という。これは逆境に立ち向かう場面でよく引き合いに出される使い古された話だ。でも言っておきたいので、理屈は次のとおりだ。

ベルヌーイの定理。翼やセイルの形状で圧力差(揚力)が発生する。飛行機もヨットも同じ原理である。
ヨットが風上に進める原理。帆掛け船は帆を風をはらませるだけだ。

デジタルサイネージ業界はこうしたヨットレースではなく、のどかな帆掛け船の集団だ。帆船は風下にしか移動できない。われわれは新しい航海術を今更ながら取り入れるべきだ。それはテクノロジーだ。テクノロジーに基づいた新しい媒体価値の提供と計測だ。

プログラマティックな媒体運用、インプレッションなどのアクチャルデータベースの取引、そのためのカレンシーとなるものの策定。これらは全部テクノロジーによって実現できることだ。ヨットの中でもその頂点であるアメリカズカップは、F1レース以上にコンピュータとセンサーの塊であることを知っておいたほうがいい。

デジタルサイネージに対してイノベーションが強く求められることは分かっていたことだ。わかっていなかったとすればチコちゃんに叱られたほうがいい。イノベーションがコロナで早まっただけの話である。現在とんでもないディスカウントでも広告「枠」が埋まらない以上、これは大きく変わる戻るとは到底思えない以上、もう待ったなしである。いまは街に人がいないこと、駅や電車の中ではみんながスマホと見ていることは誰に目にも明らかなのである。ここを業界として有耶無耶にしていたツケが放置していたら猛烈に回って来る。

さらにこれは広告媒体以外は無関係と思ったら大間違いだ。人がいないことは変わらないし、デジタルサイネージを牽引する広告用途で起きること、問われることはすべてのデジタルサイネージの用途に必ず波及する。

ただし、クローズド・ホールドは向かい風に対しては45度までしか進めない。完全な風上に行くには、45度でジグザクを描いて行くしかない。つまり最短でも√2の距離、1.41倍の移動が必要になることは覚えておく必要がある。