ホテル館内放送システム、もういらなくないですか?

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ホテル館内放送システム、もういらなくないですか?

名古屋のホテルに宿泊したら、部屋の電話のそばに「トリップAIコンシェルジュ」案内が取り付けられていた。人工知能を使ったチャット問い合わせ対応サービスで、宿泊客が自分自身のスマートフォンでQRコードを読み取ると、ブラウザーでチャット画面が表示され、そこでチャット形式で問い合わせに応答する仕組みだ。宿泊者によるフロントへの電話問い合わせを減らし、従業員の業務負荷を軽減する。

多くのホテルは、負荷の大きい宿泊者からフロントへの電話問い合わせを減らすため、テレビ共聴回線を利用したインタラクティブなホテル館内放送システムを導入したり、各部屋に館内や近隣の情報が掲載された印刷物を挟み込んだインフォメーションブックを設置するなどの取り組みを行ってきた。ただ、ホテル館内放送システム導入費用が高く、小中規模のホテルにとっては現実的ではない。また、インフォメーションブックの運用は、印刷物の管理は各印刷物の差し替えの手間が大きい。なかなかやっかいなのだ。それに対してトリップAIコンシェルジュであれば、初期費用が不要、ランニングも月々1万円とコストが抑えられる。機材の導入も不要で、専用サイト上でよくある質問と回答を登録しておけばいいだけであり、運用負荷も極めて低い。歓迎するホテルは多いのではないか。

トリップAIコンシェルジュが安価なのは、同サービスが優れているからというよりも、インターネット上のウェブサーバを利用し、宿泊者のスマートフォンをインターフェースにするという、当たり前のことを行なったからだ。これまで多くのホテルは「ホテルの宿泊者向けの情報をオープンな場に掲出することを避けたい」「宿泊者のなかには、スマートフォンやパソコンを持っていない人もいる。そのような人にも平等に閲覧できるようにしなければならない」との思いから、館内データ放送システムを構築してきた。ただ、ホテル単位で独自システムを導入していては、どうしても高コストになってしまう。トリップAIコンシェルジュは、この自縄自縛を断ち切ることで、低コストを実現した。

ホテルで、宿泊者/利用者に対して館内情報をウェブ経由で提供するケースが拡がっている。パレスホテル(東京・千代田区)では、ラウンジのメニューを紙で配るだけでなく、座席でQRコードを掲出して客のスマートフォンでも閲覧できるようにしているし、ホテル日航奈良(奈良県・奈良市)では、宿泊者専用の大浴場も含めて各種施設の混雑状況をウェブサイト上で掲出している。ホテルにとっては、コストを優先させた妥協の一手なのかもしれないが、宿泊者にとっても自分のスマホで館内のさまざまな情報を取得できるほうが便利だ。

ホテルの宿泊者は、基本的に自分があまり知らない場所に泊まっているため、自宅在宅中よりも多くの情報を求めている。そして、システム導入においても、コンテンツマネジメントにおいても高コストなホテル館内放送システムは、その役割を終えつつある。コロナで強烈な逆風のなかにあるとはいえ、ここにビジネスチャンスがありそうな気がするのだが、いかがだろう。

パレスホテルのラウンジには、紙のメニューを介した接触感染を気にするお客のために、ウェブ上のPDFにリンクしてあるQRが置かれている。
ホテル日航奈良では、宿泊者向けの混雑情報もオープンに見せている。ホテルのそとにこの情報を求めている人はいないが、混雑を防ぐための処置を取っているのを知ることは、宿泊地を決めるにあたってポジティブな参考情報にはなる。宿泊者向けの情報だろうとも、オープンにする価値がある。