b8taに学ぶちょうどいいAIの使い方

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体験型店舗の先駆け「b8ta(ベータ)」が日本にも進出、東京の有楽町と新宿の2店舗を開店させた。

Amazonなどのオンラインストアの台頭で、実店舗は購買につながらないショールーミングに苦しむことになった。しかし、それはAmazonで購買する人であっても、その前には実店舗を訪れていたということでもある。オンラインストアは購買させることはできても、体験を提供することができない。そのため、オンラインだけでは、モノを売るのは難しい。とくに新しい体験を提供するような革新的な商品であればあるほど、その傾向は強まる。そこで、ショールーミング、体験に振り切った店舗、ビジネスモデルを作ったのがb8taだ。オンラインストアと戦うのではなく、彼らが持ち得ない機能を提供することで共生する道を見つけた。

一般的な店舗は、メーカーから商品を購入し、再販することで売上と利益を出す。販売しなければ売上がない。一方のb8taは、メーカーから出展費用を受け取る。店舗に商品を展示し、スタッフが説明を行って生活者に商品を体験させる対価として利益を得る。b8taは、店舗ではあるが、インターネット広告に極めて近いビジネスモデルだ。このビジネスモデルを支えているのが、店内の天井に設置されたAIカメラだ。入店時に来店者の属性を取得するカメラと、店内での行動を追いかけてどの商品前で2眼カメラが設置されており、これによって、メーカーはこの店舗に出展することで、どのような属性で、どれぐらい数の人が自社製品を体験し、興味をもってもらえたのか、定量的な情報を得られるようになる。

オンラインとオフライン、それぞれの特徴があるなか、オフラインしか提供できないも価値もある。しかし、それを評価するには、オンラインと同じ評価軸が必要であり、そのための定量化、AIやIoTがもとめられる。OMO(Online Merges with Offline)の世界観を体現した店舗だ。

ここで重要なのは、評価に使う定量データは、この光学カメラで収集できる映像と、その画像解析による推測でもいい、との割り切りだ。このカメラで撮影できる映像を使ってAIで属性推定をしても、その精度は大したことはない。コロナ感染拡大でほぼ全員がマスクをしている状況下においては、なおさらだ。極端な例をあげれば、入店時に身分証明書の提示を求めれば、正確な属性データを収集できる。しかし、b8taは、そのようなことを行うことは決してない。それは、オンラインと評価軸を揃えることが目的だからだ。インターネット広告でも属性情報を活用しているが、この属性情報はインターネット上の行動に基づいてAIが推測したものにすぎない。オフラインだけが、緻密なデータにしても、それは別物だ。オンラインとオフラインの評価軸を統一できない。OMOにはならない。

AIは、ロジカルもしくはなんらかのエビデンスに基づいて正解を導き出すものではない。それだけに、そのビジネスにおいて何が求められているのかを十分に理解したうえで適切な利活用が求められる。体験型店舗においては、このカメラで収集できる映像と、その画像解析で得られる精度の情報が、ちょうどマッチしている。

店舗の入口付近に設置され、入店者の属性情報を取得しているカメラ。

店舗内のいたるところに設置されている2眼カメラ。これで来店者数の行動を分析する。

店内に入ってすぐに設置されたデジタルサイネージでは、カメラ利活用に関する事項が掲出されている。

ただ、体験型ショップとはいうが、正直なところ、個人的には期待ほどのものではなかった。置かれているだけ、というモノも少なくないのだ。たとえばコーヒードリッパーは、モノが置かれているだけでドリップや味を体験できない。空気清浄機は、そこにモノが置かれているだけで稼働はしていない。缶ビールはただ缶のまま置かれていているだけ。確かに、オンラインでは伝えられないモノの質感を伝えられてはいるが、これが体験なのかというと、それは違う。その点、過去の遺物になりつつある百貨店であれば、このあたりをもっと上手く展示できるのではないか。

そう思うと、百貨店ももったいない存在だ。自らを小売と定義づけるのではなく、メーカーと生活者をつなぐ存在と自己定義できれば、b8taのような新しい道が自然とうまれてくるのではないだろうか。

コーヒードリッパー。モノはあるけど体験できない。

空気清浄機。モノはあるけど体験できない。

ビール。

店内が混雑しすぎないよう、入店規制を行っていた。

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