自室をスタジオ化したその先のパーソナルなメディア化

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筆者は映像系の専門学校で週1日、2時間講師をしている。かれこれ6年位継続しているので600人ほどの学生を送り出してきたことになり、今でも何人かとは交流がある。

さてそんな講義も今年に入って全てオンラインで行っている。それがいつまで継続するのかはわからない。筆者的にオンラインのいいところは学校までの長い時間を移動する必要がないことだ。往復だと5時間近くもかかるので馬鹿にならない。もちろん移動時間をうまく使う術は身につけているつもりなので、もともと完全なロスタイムとは言えないが、移動しなくて済むならしたくないのは事実だ。

では講義の内容としては、本当にオフラインでなくてもちゃんと伝わるのだろうか。ということで、自室でのオンライン授業を少しでも充実すべく、自室のスタジオ化を行ってみた。

筆者的な重要なポイントは資料などを背景にして、筆者が全身写った状態で説明ができることだ。Zoomなどの画面共有機能は、見た目はきれいなのだが、講師の顔が見えない説得力のなさを強く感じる。あれは分かった気になるだけで理解は出来ていないし、集中できないし、あっという間に眠くなる。そこで天気予報みたいな合成画面を利用することにした。顔出しのほうが資料トリキリよりはかくだんに説得力がある、と筆者は信じて疑わない。

そのためには、自室の環境ではクロマキー合成が現実的である。さらにカメラ、PC、iPadなどのソースを切り替えて進行したいので、ライブプロダクションスイッチャーのATEM Miniの登場である。当初は無印のATEM Miniを導入したが、入力ソースのモニタリングができないので、スイッチングする時に非常にやりにくい。最悪ソースがブラックだと気がつかずにスイッチングしてしまう可能性があるからだ。そのためそれだけの目的でATEM Mini Proに買い替えを行った。現在の機器構成は次のとおりだ。

*は今回新規購入
*ライブスイッチャー ATEM Mini Pro
送出PC MacBook Pro 15 2018
CAM1 SONY α6000 SEL1018 10-18mm
CAM2 SONY α6000 Vario-Tessar T* E 16-70mm
PC1 iPad mini 5 with Apple Pencil(疑似板書用)
PC2 Mac mini 2010(Keynote、パワポ用)
PC3 Fujitsu Workstation M470(パワポなどの背景用)
*MIC1 Classic Pro CM5S(改造)
*MIC2 中華製無印有線ピンマイク
   (コンデンサーマイクは環境ノイズを拾いまくるのでエアコン作動中は使いにくい)
*マイクアンプ TC HELICON Go Vocal
   (ピンマイクではこれを使わないとハム音が乗りまくる)
ワイヤレスイヤーモニター X1T(立って話す時はワイヤレスが必須)
照明 40W相当電球色LED2発を壁面にバウンズ

PC2は合成の背景素材用の送出用で考えていたが、キーノートやパワーポイントに埋め込んだ動画を出力すると、スペックが非力でなのでノイズが出たりして不安定である。そこで別途手に入れたそこそこ強力なPCワークステーションと併用することにした。

モニターは24インチが2台と予備用に22インチが1台。左側にあるのは60センチ水槽
グリーンの布をスタンドで垂らしている。必要に応じて奥にある書棚に畳み込む。シワが目立つがこれくらいであれば合成に支障が出ることは全く無い。
ATEMのマルチビュー画面。上段2面がプレビュー画面とプログラム(OA)画面。中断はHDMIの4入力のミニター画面
カメラは手持ちのα6000を2台。クロマキー合成のときには1台運用。このカメラ位置からだとワイドレンズで膝上くらいまではカバーできている。
iPad mini5にApple Pencilで板書の代わりに手書き入力
ATEM Mini Proは結構発熱が激しくピークで50度弱くらいになる。そこでノートPC用の強制吸気ファンを使用すると36度くらいまでしか上昇しない。
マイクはシュアSM58似のサウンドハウスの自社ブランド クラシックプロのCM5。ダイナミックマイクだ。価格が1000円とは思えない音である。
筆者の声とCM5の特性、そして半分ぽ学生がスマホで参加する現実を踏まえたいイコライジング設定。
立って話すとマイクまでの距離は1メートルを超えるので、コンプレッションレベルは深めに設定。座って話す場合は浅めにしている。

この環境でのZoomの授業に関して、学生から非常に的確な指摘をもらった。スマホでZoomを使っていると画面共有されたものは拡大できるが、そうでない映像は拡大できない。つまりATEMで資料をスイッチングすると拡大ができないのでスマホだとかなり見にくいという。確認したら確かにそうなっている。ATEM側でDVEで拡大して送出すれば解消できるが、ワンマンOA中にスムーズにDVEで拡大することはなかなか困難だ。常に拡大場所が定位置ならマクロ化すればいいが、そうでないと途切れることなくスマートに切り替えて進行ができない。Zoomの仕様が変更されるまでは画面共有で行くか、デカ文字の素材で行くかどどちらかだ。

またクロマキーで全身合成だと(僕が重なって邪魔で)背景の資料が見えないという指摘も受けた。だがそれは狙い通りのことだ。人間は隠れているものは気になるし見たくなるものだ。これは動物的な本能だろう。向こうにあるのが敵か味方かを判断する必要があるからだ。そのために集中力が働く。

カメラ位置を反対側に変えてみたところ。夜暗くなると、ニュース番組のインタビューっぽい映像になる。ただし合成映像とのスイッチングは不自然だ。またこの構図だともっと背景をぼかしたくなるのでレンズを変えたくなってくる。

こうしたスタジオ環境は、授業以外にも用途はたくさんある。日常的なZoomなどのツールでの利用は言うまでもないが、この場合は最終的には小さなサムネイルで視聴されることが多いので、映像を工夫してもさほどメリットはない。やはり情報発信型のコンテンツ、それもライブで行うものでの利用を考えている。あくまでも自宅の自室スタジオなので人が来るという前提ではない。個人の情報発信ツールという使い方になる。ブロク的に文章を書くのはそれなりに面倒だし、きちんとした動画を作るにはどうしても編集をしたくなるが手間がかかりすぎる。ライブ動画であればそこそこの表現力と複数のメディアや素材を組み合わせた表現が可能になる。