リモートピアノはメディアになれるのか

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先日、「ヤマハのピアノ遠隔演奏システム、ドイツの音大が“リモート入試”で採用」という記事を見かけた。それによると、遠隔地にある自動演奏機能のあるピアノにMIDIでデータを送って、リモートで音大の入学試験を行ったということだ。

気になって調べてみると、ヤマハの「Disklavier」という仕組みを使っていることがわかった。こちらの動画で概要がわかると思う。

これは「DisklavierTV」というサービスで、HD動画とLchにピアノ以外の音のデータを、RchにMIDIのデータが多重化されているようで、MIDIデータをヤマハのDisklavierコントロールユニット DKC-900やDKC-850を接続して、ヤマハの対応ピアノを演奏している。

つまりこれは、本物のピアノをスピーカー代わりにしているメディアと言える。この技術を使えば、ピアニストの演奏を世界中でスピーカーからの音ではなく、ピアノ自体が音を奏でるのである。デジタルやアナログの変調を解すること無く、MIDI経由で鍵盤を直接叩くのである。

これは画期的だ!と思ったのだが、Disklavierコントロールユニットは2009年から発売されており、今年の3月に新機種であるDKC-900になったようだ。映像付きのDisklavierTVのサービスは2015年から提供されていることもわかった。ずいぶんと時間が経過しているが、筆者は今回はじめて聞いたし、普及している感じがしないのはなぜだろう。

原因の一つには、この仕組みはヤマハ独自の規格のようで、標準化されているわけではないようだ。また自動演奏ピアノはどうしても機械的な構造を必要とするので、普及がなかなか困難なのだろう。

音楽というものは本来は生演奏しかなかったものが、レコードによる録音が可能になり、デジタル化されて放送波やインターネットを流通している。これらはすべて聴覚として我々が認識できるように、スピーカーを鳴らしている。最新技術によって、直接遠隔地にあるピアノを鳴らすことができるようになったのだが、レコードやCD、放送やネットという媒介物、つまり媒体、メディアを介さない方法の優位性はまだまだ歴然として残っている。ここは更なるテクノロジーの進化によって超えられるのか。あるいはメディアを介したテクノロジーの方がさらに進化を続けるのか。答えはよくわからないが、メディアのこれからを考える際の良い題材ではないかと思う。