高機能サイネージがユニクロの残念なO2O施策を浮き彫りにする

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ユニクロ 原宿店には、お目当ての商品が店内のどこにあるかを案内するタッチパネルサイネージが設置されている。

商品を選択すると、それが店内のどこにあるかをフロアマップ上で案内するほか、カラーラインナップやサイズごとの在庫状況が表示される。さらにはQRコードでオンラインストアへのリンクも表示される。すべての機能を詰め込んだサイネージで、アニメーションはなめらかで操作性も高く、すばらしい出来だ。

と言いたいところだが、ロケーションに適したものとは言い難い。机上だけで設計されたデジタルサイネージで、まったく現場が見えていない。とくにオンラインストアへのQRコードリンクは、ユニクロはオフラインとオンラインの連携についてまともに考えられていないのではないかと心配になるほどズレている。

オンラインストアへのリンクを用意しているのは、サイネージ上で在庫状況も案内していることから、在庫切れに備えているためだと思われる。一見すると、せっかく来店した顧客を逃さない優れた手法に見えるのだが、これはスクリーンのなかだけを見ている発想だ。来店したお客がなぜこのサイネージに触れているのか、どのような情報を求めているのか、とのコンテキストが完全に抜け落ちている。

お客がこのサイネージに触れるのは、「インナーはどこにあるのか」「シャツはどこか」と、店舗内の情報を欲しているタイミングだ。お目当てのアイテムそのものが店内に在庫がなくても、色違いや近いアイテムの実物がすぐそこにあれば、そちらを案内する方がずっと親切だ。

店舗からオンラインストアへ繋ぐO2O施策を否定しているのではない。ただ、わざわざ来店した客が、やっぱりオンラインで購入しようと思うタイミングはどこなのか、その理由は何かを理解し、それに寄り添った形で繋がなければならない。たとえば、来店客が試着などをして「気に入ったから色違いもほしいけど在庫がない」「気に入ったけど、これから他のところにも寄っていくから手持ちの荷物は増やしたくない」など、購買意欲はあるけど、商品とは別の理由で購入を控えようとしたときこそ、オンラインストアを案内するタイミングだ。フロアマップを見ている時ではない。

また、QRコードでリンクされた先のオンラインストア側の問題も大きい。ユニクロのオンラインストアは、商品ページにはリンクできるが、サイズや色を選択した状態にはリンクができないのだ。そのため、試着して気に入ったアイテムをあとからオンラインストアで購入するには、色とサイズを自分でメモしておく必要がある。「ほしいけど、いまは持ち帰れないから、オンラインで買おうかな」と客が思ったとしても、これだけの手間をかけさせては致命的だろう。

ファーストリテイリングは、商品タグにRFIDチップを内蔵させ、非常に簡便なセルフレジを実現したり、試着室に設置したタブレットに持ち込み商品の一覧を表示して、そこからオンラインストアへの送客を図ったりと、デジタルの活用では先進的な取り組みを行っている会社だ。このデジタルサイネージも、単体で見れば高機能だし、操作感もよく立派だ。それだけに、このお粗末なO2Oがもったいない。

デジタルサイネージは、モニターの中がどれだけ立派であっても、適切なロケーションに設置し、人が触れるときのコンテクストに沿ったものでなければ、機能しない。このようなことは、現場で実物を体験してみないとわからないものだ。