新型コロナウイルス経済対策の活用法

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動規制により、世界的に経済活動が大きく停滞している。感染の収束が見通せないなか、その影響は当初の想定を大きく上回り、リーマンショックを遥かに超えるとの観測が多い。経済産業省及び厚生労働省を中心に、産業と雇用を守るための経済対策が打ち出されている。

経済対策は国の各省庁の施策だけでなく、県及や市長村の独自の支援策もあるほか、民間でも支援策を打ち出している企業が出ている。支援策が多いのはありがたいが、多岐に渡りすぎ、その全容が掴みにくいところでもある。

そこで、今回は、現時点(2020年6月18日現在)において実施されている経済対策を可能な限り網羅して紹介する。なお次回は、現状の経済対策を前提に、コロナ収束までの期間、経済が受ける影響と、コロナ収束後の未来に向けて課題と展望を示したい。

1 経済産業省による新型コロナウイルス対策 

①中小企業の資金繰り支援
新型コロナウイルス感染症の影響による休業や顧客減少により資金繰りが悪化している中小企業を救済する目的で、緊急融資制度が設けられている。信用保証協会の特別保証枠による民間金融機関融資(セイフティネット保証等)と日本政策金融公庫及び商工中金の特別融資(セイフティネット貸付)による構成されている。以下は、中小法人を対象とした融資制度を一覧したものである。

(出典:経済産業省WEBサイト)

なお、創業1年1ヶ月未満の会社については、以下の(1)~(3)のいずれかにより判断することとされている。

  日本政策金融公庫 信用保証協会
(1) 最近1ヵ月の売上高と過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高の比較 左記に同じ。
(2) 最近1ヵ月の売上高と令和元年12月の売上高の比較 左記に加え、その後2ヶ月間(見込み)を含む3ヶ月の売上高と令和元年12月の売上高の3倍を比較
(3) 最近1ヵ月の売上高と令和元年10月から12月の平均売上高を比較 左記に加え、その後2ヶ月間(見込み)を含む3ヶ月の売上高と令和元年10~12月の3ヶ月を比較

②新型コロナ特例リスケジュール制度
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて資金繰りが悪化している中小企業に対して、中小企業再生支援協議会が新型コロナ特例リスケジュール計画策定支援を行う。

③持続化給付金制度
中小企業又は個人事業者で、2020年1月以降の任意の月の売上高が前年同月比50%以上減少している場合、法人で最大200万円、個人は最大100万円の給付を受けることができる制度。2019年中に事業を開始した創業期の中小法人や個人も対象となる。ただし、2020年1月以降に事業を開始した中小法人や個人は対象とならない。

④小規模事業者持続化補助金(コロナ対応型)
小規模事業者が①サプライチェーンの毀損への対応、②非対面型ビジネスモデルへの転換、③テレワーク環境の整備のいずれか一つ以上の投資に取り組むことを目的に、その費用の一部を補助することを目的とした制度。従来からあった制度だが、新型コロナ感染症対応「特別枠」が創設され、費用の2/3(上限100万円)が補助される。

⑤IT導入補助金
中小企業等の生産性を改善することを目的として、ITツール導入を支援する補助金について、テレワーク等に活用することを想定し、その補助率が1/2から2/3に拡充された。。補助額は30万円以上450万円以下。

⑥中小企業基盤整備機構(中小機構)の小規模企業共済制度の特例措置
中小機構の退職金共済制度の共済契約者向けの「特例緊急経営安定貸付け」制度。対象は新型コロナウイルス感染症の影響により、1か月の売上高が前年又は前々年度の同期と比較して5%以上減少した契約者。返済期間は1年間据え置きで4年~6年。50万円~2,000万円(掛金納付月数に応じて、掛金の7割~9割)の無利息の借入金。

⑦特別家賃支援給付金制度
第2次補正予算で新設。2020年5月~12月の間で、以下のいずれかに該当する法人及び個人事業主が対象に、支払家賃の一定割合の金額が給付される。
1)いずれか1ヶ月の売上高が前年比で50%以上減少
2)連続する3ヶ月の売上高が前年同期比で30%以上減少
法人の場合、給付額の上限は月額50万円(複数店舗を有する場合等は100万円)で、給付額は支払家賃の2/3(複数店舗を有する場合等で、給付上限を超える部分は1/3)。6ヶ月分の支給を受けることができる。なお、個人については法人の半額となる。

⑧資本性資金供給・資本増強支援制度
第2次補正予算では、上述した日本政策金融公庫及び商工中金の特別融資に加えて、劣後ローンにより資本性資金を供給する制度が新設された、劣後ローンは他の債務と比較して返済順位が劣後する債務。金融機関はこれを自己資本とみなすことができる。対象は新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者のうち成長・再生支援の対象となる企業及びスタートアップ企業。貸付限度は7億2千万円。貸付期間は5年1ヶ月~20年の期限一括返済。金利は当初3年間0.5%で、4年目以降直近決算が黒字化した場合には2.6%または2.95%となる。
また、中小企業基盤整備機構(中小機構)が出資をするファンドを通じた出資等について、「事業引継ぎセンター」及び「中小企業再生支援協議会」と連携して拡充するとされている。

2 厚生労働省による新型コロナウイルス対策

①雇用調整助成金
従来の制度は、最近3か月間の売上高の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少している等の場合で、一定の条件で労働者に休業指示をして休業手当を支払った場合、大企業でその1/2、中小企業で2/3(いずれも上限は一人日額8,330円)を助成するものであった。
新型コロナウイルス対策では、これを拡充。第2次補正予算では2020年4月1日から9月30日までの間に限り、従業員の全員を解雇せず雇用継続している等一定の条件を満たす場合、休業手当に対する助成率を100%(上限日額15,000円)まで高める特例措置を講じている。また申請手続きが複雑であるとの苦情に対応。特例措置では、事前計画届出制度を撤廃したほか、6ヶ月以上が必要であった被保険者期間を不要とする等、要件緩和も行われている。

②新型コロナウイルス感染症対応休業支援金
第2次補正予算で新設。雇用調整助成金が、休業手当を支払った事業者に休業手当を助成するのに対して、休業支援金は、休業手当を支払うことができない中小企業があることを念頭に、失業給付と同様、労働者の申請により直接給付する制度であることが特徴。給付額は休業前賃金の80%(月額上限33万円)。休業実績に応じて支給される。

③小学校休業等対応助成金・支援金
新型コロナウイルス感染症の影響で小学校等の臨時休校等により仕事を休まざるをえなくなった保護者の支援を目的とする助成金度及び支援金制度。対象期間はいずれも2020年2月27日から9月30日までの間とされている。。
助成金は臨時休校に通学するこどもの保護者で、休業を余儀なくされた従業員に対して、有給休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた場合に、その賃金の100%(一人当たり1日換算8,330円が上限、ただし4月1日以降の有給休暇取得分については15,000円)を助成する制度。事業者がこの助成金を目的とした新たな有給休暇制度を設けることが前提となる。
支援金は、臨時休校に通学するこどもの保護者であって、業務委託契約で業務を行う個人を対象としている。契約業務が行えなくなったことによる支援を行うものである。支援額は1日あたり4,100円(4月1日以降の業務については7,500円)の定額を支給する。

④働き方改革推進支援助成金(テレワークコース及び職場意識改善特例コース)
テレワークコースは、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入する中小企業事業主を対象に、テレワーク用通信機器の導入・運用や専門家によるコンサルティング費用等について、対象経費の1/2(上限100万円)を助成する制度。2020年2月17日~7月31日までにテレワークを新規で導入し、実際に実施した労働者が1人以上いることなどが条件。
職場意識改善コースは、新型コロナウイルス感染症対策として特別休暇制度を整備する中小企業事業主を対象に、研修費用、コンサルティング費用、労働能率の増進に資する設備等の導入・更新費用等について、対象経費の3/4(事業規模30名以下で労働能率の増進に資する設備等の経費が30万円超の場合は4/5、上限50万円)を助成する制度。対象期間はテレワークコースと同じ。

⑤緊急小口資金等の特例貸付
新型コロナウイルス感染症の影響による休業や失業で生活資金に困窮している人に対する緊急貸付制度。緊急かつ一時的な生活維持のための貸付を必要とする世帯を対象とする「緊急小口資金貸付」と、収入の減少や失業等により生活に困窮し日常生活の維持が困難になっている世帯を対象とする「総合支援資金」がある。前者は、20万円以内の一括交付で1年据え置きの2年返済。無利子、無保証。後者は、二人以上の世帯は月額20万円以内、単身世帯は月額15万円以内で、原則3ヶ月以内に毎月交付。1年据え置きで10年以内の返済。緊急小口貸付と総合支援資金の併用はできない。

⑥国民健康保険等の減免制度
新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入や不動産収入の減少が見込まれる場合、一定の条件を満たすことを条件に、収入減少額と所得額に応じた減免率により、国民健康保険及び介護保険の減免を定めている制度。年間所得が1,000万円未満で、事業収入等の減少後の所得が400万円以下であることが前提。

⑦医療・福祉事業者への資金繰り支援
新型コロナウイルス感染症の影響により休業又は事業を縮小した医療・福祉事業者の資金繰りを支援を目的とする独立行政法人福祉医療機構の特別融資制度

3 その他の国の省庁による新型コロナウイルス経済対策

①定額給付金制度(総務省)
2020年4月27日時点の住民基本台帳に登録されている国民全員を対象として一人当たり10万円を、市町村を通じて支給する制度。新型コロナウイルスにより様々な影響を受ける国民全てに遍く可及的に速やかに資金援助することが目的。

②子育て世帯への臨時特別給付金(内閣府)
新型コロナウイルス感染症の影響を受けている子育て世帯の生活を支援する取組の一つとして、児童手当(本則給付)を受給する世帯(0歳~中学生のいる世帯)に対し、臨時特別の給付金(一時金)として、一律1万円を、市町村を通じて支給する制度。

③納税猶予制度(財務省)
新型コロナウイルス感染症の影響で、売上が低下し納税資金が不足している法人や個人の救済を図るために、納税猶予を認める特例制度。対象事業者は、2020年2月以降の任意の月(1ヶ月以上)について前年同月比で売上が概ね20%以上減少している事業者で一時に納税をすることが困難と認められる事業者。猶予期間は1年。この間の延滞税はかからない。

4 地方自治体独自の新型コロナウイルス対策(東京都のケース)

①感染拡大防止協力金
休業要請等により、施設の使用停止や施設の営業時間の短縮に全面的に協力いただける中小企業および個人事業主に対して50万円(2事業所以上で休業等を行う事業者は100万円)を支給する制度。

②飲食事業者の業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)
新型コロナウイルス感染症の流行で、大きく売上が落ち込んでいる中小飲食事業者が、新たなサービスとして「テイクアウト」「宅配」「移動販売」を始める場合、経費の一部を助成する制度。販売促進費や車両費、器具備品費などの経費の5分の4以内の額が助成される。

③新型コロナウイルス感染症対応緊急融資
新型コロナウイルス感染症により、事業活動に影響を受けている中小企業者および組合を対象に、事業継続や経営の安定を図ることを目的とした緊急融資制度。最近3か月間の売上実績、または今後3か月間の売上見込が、前年同期較で5パーセント以上減少している場合に利用できる。運転資金や設備資金として最大2億8,000万円(組合の場合は、最大4億8,000万円)とされている。

④感染症対応融資
新型コロナウイルス感染症より事業活動に影響を受けている中小企業者または組合の方で、セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証の認定を受けている事業者に対して、都道府県が民間金融機関に対して利子補給を行うことで、3年間は実質利息ゼロで民間金融機関から融資が受けられる制度。借入上限は3,000万円。最長5年間返済据え置きで返済期限は最長10年とされている。

⑤新型コロナウイルス感染症緊急対策設備投資支援事業
感染症対策に資する事業活動に取り組む中小企業の支援を目的に、中小企業が、感染症対策関連商品の製造に必要となる最新機械設備を新たに購入するための経費の一部を助成する制度。機械設備などの新たな購入、搬入・据付などに要した経費(税抜100万円以上1億円まで)の5分の4以内の額を助成することとされている。

⑥中小企業従業員融資(新型コロナウイルス感染症緊急対策)
新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した中小企業の従業員の生活の安定を図ることを目的とした特別融資制度。対象は労働者災害補償保険の適用中小企業の従業員個人。融資限度額は100万円で、返済は期間5年以内の元利均等返済。

⑦地方税の納税猶予
国税と同様に、新型コロナウイルス感染症の影響で、地方税を一時に納付することができない場合、1年以内の期間に限り、徴収を猶予する制度。