マスクというトラスト(信頼)

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本稿は、昨日のGASKETの記事に対する「アンサー記事」である。

新型コロナウイルス感染症に関連して、様々な論客が世界中で発信を続けている。なかでも、米国の政治学者イアン・ブレマー氏(ユーラシア・グループ代表)をテレビやWebで見かけた方は、日本でも多いだろう。

コロナ禍が訪れる遥か昔の2011年頃から、世界は米中対立へ向かい、そしてG7でもG20でもないGゼロの時代が訪れると同氏は提唱してきた。プロセスは若干異なるものの、結論としてはその見立て通りの社会が出現しつつある。

そんなブレマー氏がコメントした最新の動画が、これである。

全編英語だが、ここで取り上げる話題は、それほど難しいことを言っているわけではないので、YouTubeで字幕を付けていただければ概ねお分かりいただけるだろう。話題の中心は4分10秒くらいから、特に核心は5分45秒くらいからである。

簡単に言えば「マスクを着けろ。そして仕事に戻って、経済を回復させよう。」ということである。

とてもシンプルなメッセージだ。そしてそのシンプルさは、四の五の考えても、いまできる最善は結局それしかない(だから腹を括ろう)という現実を、同時に突きつけている。極めて現実主義である。

ブレマー氏の言及は、主に米国社会を意識したものになっている。しかし同氏の発言は日本でも話題になることが多く、影響力を有している。何より主張そのものは普遍的であるのと同時に、もともとマスクに抵抗感が薄い日本社会であれば、自然と受け入れられるだろう。つまりこの分かりやすいメッセージは、遠からず日本に波及する。

では我々は何を準備すればいいのだろうか。生活者目線では、「外出時にはマスクを着けよう」ということが第一歩となる。しかしこれからの季節、熱中症との両立が不可欠だ。地球温暖化の影響か、日本の夏は年々長くなっており、その間、マスクの正しい着用は難しくなるだろう。

とはいえ、たとえば空調の効いたオフィスビルやレストラン、あるいはスーパーに入るのであれば、やはりマスクは正しく着けてもらわなければ困る。すなわち、マスクを正しく着けることは、これからの時代の身だしなみであり、いわば信頼(トラスト)の証になっていくということである。

だとすると、技術はこのトラストの形成をサポートするというニーズの方向に、向かうはずだ。たとえばこれまでの顔認証システムは、マーケティング目的で識別性を競っていたが、これからの顔認証システムは、それだけでは足りない。マスクを着用した状態での基本属性の識別だけでなく、むしろ「そもそもマスクを正しく着用しているのかどうか」を検出することが期待される。

あるいはサニタイザーも同様だ。正しい消毒の方法が実践されているのかどうか。これは人間の手の洗浄だけでなく、空間全体の洗浄状況を把握するというニーズも出てくるだろう。それらを把握して、不足があった場合に対処を詳細に促せるようなシステムが、おそらく新しい時代のトラスト形成に資することになる。

コロナ禍によって生じている変化の多くは、これまでのパラダイムの延長線上にあるものだけではなく、価値観から揺さぶりをかけられた「非線形変化」でもある。こうした変化を理解するためには、問題の本質を適確に把握しつつ、アジャイルに対応していくことが必要だ。

こう書くと難易度が高そうだが、おそらく生活者であれば誰しもがそのヒントを持っているはずである。自らの感覚を研ぎ澄まし、自らの価値観に忠実になることで、引き続き新しい可能性を探りたい。