PoE最新動向 IEEE802.3bt

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2019年9月にここGASKETでもPoE(Power Over Ethernet)について動向などをお伝えしたことがあるが、新たにPoEの新規格「IEEE 802.3bt」がリリースされたので、簡単に概要をお伝えしようと思う。

新規格ではパワーソース側は90W、パワーデバイス(PDと呼ぶ)側は71.3W。ケーブルを4ペア使用ですることにより、ケーブルでの電力損失を減少している。ソースとデバイスのW数の定義が違うのは伝送経路でのパワーロスを考慮したからである。

IEEE802.3atでは、約25Wまでだったので、例えば5V換算した場合、せいぜい5A程度。安全を見ると、そこまでは使えないので、例えば、Jetson Nanoのハイスピードモードでの利用は最大4Aを要求するので、ちょっと厳しかったが、新規格であれば、ここはクリアできそうだ。

改めて、PoEの利点を言うならば、何と言っても配線コストの削減だ。ACが来ていないところでも、ネットワークの配線さえできれば電源が供給できるからだ。

71.3Wも1ラインで供給できるとなると、エッジAIデバイスから、デジタルサイネージや、その他のアクチュエータまで簡単にドライブできてしまう。例えばエッジAI的にインテリジェントに処理を行い、カメラがパン、ズーム、チルトまでエッジ側で判断し、アクチュエータをドライブできるわけだ。夜間はLEDを点ける、ってことなんかも現実的だ。

しかし、PoEに弱点が無いわけではない。活線挿抜での火花問題を云々されることもあるが、これは、防爆対策など特別な場所や条件下であり、極論言うとあまり気にする人はいないかも知れない。それよりも、外来のサージ、特に雷などが問題になる。

ACの配線が難しい、コストがかかる、という現場は別な見方をするならば、元々ACの配線が無い、というとこなのだから、往々にして外置きやそれに近い環境であるともいえる。

つまり、雷に代表される外部からのサージを受けやすく、このラインがPoEである、ということは、すなわちPoE対応ルーターを雷サージが直撃することになる。場合によっては、そこから、社内の別なルーターに伝わり、さらなる被害を拡大させるかも知れない。

二番目に、PD側デバイスの設計が正しくできるかどうか?だ。

新規格では、PSE(パワーソースデバイス)に対し、1.5秒以内に最大消費電力を実際の消費を持って伝えなければいけない。仮にLinuxのデバイスなどの場合、CPUは未だ立ち上がったばかりで、かつCPU100%で動作していないので、単純につないだだけでは、PSEはその後正しく電力供給をしてくれない。Jetson Nanoでも使える、と先述したが、正しく言うならば、何かしら回路を設計し、追加しなければ安定した動作は望めない。

Jetson Nano

これらの回路を実現するためには、パワーデバイスの設計技術や放熱技術が要求される。実際のところ現場のハードウェアエンジニアでこれらの経験を持っている人は決して多いとは言えないだろう。前にも書いたことがあるが、どうもデバイスの進歩と現場のGAPはある意味大きくなっている気がするのだ。

ここまで書いていて、ならば汎用のIEEE802.3bt対応DCアダプタってのを作ると売れるのではないか、とふと思いついた。

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