金商法改正で、STOによる資金調達が日本でも本格化? セキュリティ・トークンも株式型クラファンで取扱い(後編)

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前編では、企業が独自に暗号資産トークンを発行して資金を調達するICOが広がってきたこと、世界的に法規制が強まりSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)として証券法に準拠したトークンの発行が増加してきたこと、我が国においては金融商品取引法の改正によってセキュリティ・トークンは「電子記録移転権利」と命名され、有価証券に位置付けられて、株式等と同等の規制が行われることとなったことを解説した。

電子記録移転権利の法的性格と法規制

前編で説明したように、改正金商法で「電子記録移転権利」とは、以下の2つの要件を満たすものとされている。

(a) 金融商品取引法第2条第2項各号に掲げる権利に該当する。
(b) 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子的方法によりに記録されるものに限る)に表示される。

ここで(a)の金商法第2条第2項各号に掲げる権利とは、みなし有価証券(第二項有価証券)を指すことから、実は電子記録移転権利として敢えて定義しなくても金商法の規制を受ける。第二項有価証券の典型的なものが「集団投資スキーム持分」、いわゆるファンドである。我が国でファンドという場合には、商法の匿名組合契約による権利、民法の任意組合契約による持分、投資事業有限責任組合法に基づく投資事業有限責任組合契約に基づく持分などを指す。一般には特定の事業に伴う収益を出資者たる組合員に分配する契約を行うものである。
これらのファンドについては第二項有価証券として、株式や社債などの一般の有価証券(第一項有価証券)と区分して、法規制のレベルを変えている。金商法の法規制の体系は以下の通りである。

このうち業規制とは、有価証券に関する売買の仲介、自己売買、引受、募集等の取扱い等の業務について、業として行うために金融商品取引業者としての登録を求める規制である。第一項有価証券については、第一種金融商品取引業者、第二項有価証券は第二種金融商品取引業者の登録が求められている。これら金融商品取引業者に投資者に対する説明責任を課す等、一定の行為を義務付けることで投資者保護を図るのが行為規制である。

開示規制は発行会社に対して投資者への情報開示を求める規制で、第一項有価証券の場合、1億円以上の新規発行を行う募集(50人以上への勧誘)について有価証券届出書の提出が義務付けられている。有価証券届出書を提出した会社は継続して毎期。有価証券報告書及び四半期報告書(又は半期報告書)の開示が必要となる。有価証券届出書及び有価証券報告書には直近2期の財務諸表に公認会計士又は監査法人の監査が求められており、ハードルは高い。これに対して、第二項有価証券については、有価証券投資を目的とするファンドを除き、有価証券届出書の提出義務はない。

「電子記録移転権利」については性格としては第二項有価証券であるものの、ブロックチェーン技術などを活用して「事実上多数の者に流通する可能性がある」(研究会報告)ことから、株式等と同等の「第一項有価証券」と位置づけられた。すなわちSTOについてこれを業として行うには、第一種金融商品取引業者のライセンスが必要であり、1億円以上の募集については有価証券届出書による開示が必要となる。

ただし流通性の乏しいセキュリティ・トークンについては、第二項有価証券に該当する。この場合、自己募集や募集取扱において第二種金融商品取引業の登録が求められることとなる。これらの詳細な要件等については、法律の施行日までに改正される「金融商品取引法施行令」及び「金融商品取引業に関する内閣府令」に定められる予定である。

STOによる資金調達とその課題

今回の金商法改正においては、集団投資スキーム持分の発行あるいは購入の対価として暗号資産を用いる場合も金銭とみなして金商法の規定が適用されることとなった。これは電子記録移転権利の発行や売買取引のシステムが、スマートコントラクト(ブロックチェーン技術等を利用して取引が自動履行されるプログラム上の契約)により構築されることを念頭に、決済に用いられる暗号資産を法的に金銭として認めたことを意味する。ただ、従来も集団投資スキーム持分の対価たる金銭については、「金銭に類するものとして政令で定めるもの」が認められており、金商法施行令では具体的に有価証券や約束手形などが定められていた。法律構成上は、暗号資産を「金銭に類するもの」として金商法施行令の定義に加える方法もあったにも関わらず、敢えて金商法本文に第2条第2項を新設して、集団投資スキーム持分の取得の対価たる暗号通貨を金銭とみなす規定を置いたところは画期的である(『暗号資産に関する改正資金決済法・改正金商法について』荻野昭一、月間資本市場2019.7)との評価もある。

ただ我が国においては、これまでICOによる資金調達事例や、ICOによる資金調達プラットフォームの運用事例がまだ見当たらない。今後、政令及び内閣府令の改正、並びに日本証券業協会の規則改正などを受けて、具体的に金融商品取引業者がサービス提供を開始することが、今後我が国におけるSTO利用拡大のために必要であろう。また2019年10月にネット証券と大手証券会社が参加して日本STO協会(会長 北尾吉孝氏)が発足している。金融商品取引法に定める認可金融商品取引業協会を目指すと明言しており、その動きはSTOの広がりに大きく影響しそうである。

業者がサービスを開始するにあたって課題としては、システム構築コスト及び運用コストがあげられる。特に株式型CFとして、セキュリティ・トークンを取り扱う場合、現在の投資者1名の1社に対する50万円の法定の投資上限が踏襲されると、業者側の負担が大きく、制度としての発展の障壁となる可能性がある。今後の政令・内閣府令での対応に期待したいところである。

STOと株式投資型クラウドファンディング

今回の金商法改正においては、株式投資型クラウドファンディング業務(第一種少額電子募集取扱業務)の対象となる有価証券にセキュリティ・トークンが加わわった。筆者が代表を務めるDANベンチャーキャピタルにおいても、運営する株式型CFプラットフォームGoAngelにおいて、セキュリティ・トークン(電子記録移転権利)を加えることを検討する予定である。DANベンチャーキャピタルは第二種金融商品取引業の登録を行っているものではないが、匿名組合や民法の任意組合による事業ファンドの持分を「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値」として設計することで、電子記録移転権利に該当させることができれば、法的に募集取扱が可能となる。

これには日本証券業協会の「株式投資型クラウドファンディング業務に関する規則」について電子記録移転権利を取扱いに関する規定を新設が必要である。いまのところ、改正金商法施行に合わせて、日本証券業協会の規則改正も行われるか否かは明らかにされていないが、DANベンチャーキャピタルが次のステップとして考えている非上場株式の取引制度「株主コミュニティ制度」についても、規則改正が行われれば、第一種金融商品取引業の登録を前提に、セキュリティ・トークンの取扱いが可能と考えられる。財産的価値の移転、すなわち流通市場(セカンダリーマーケット)が必要なSTOに関しては、そもそも発行市場と流通市場が両輪の証券市場としての機能がシステムの前提となる。発行市場(プライマリーマーケット)に関しては、中小企業にとって1億円未満の少額募集で法定開示が不要の範囲での調達ニーズを満たし、その後のセカンダリーマーケットも含めて、ブロックチェーン技術等を用いてスマートコントラクトによる市場システムが設計されれば、未来の日本を支える中小企業に成長資金を円滑に供給できる新たなプラットフォームとなり得る可能性を秘めていると言えよう。

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