鉄道に限らず、すべてのビークルに必要な「スケルトン・インフィル」な設計思想

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ここ数年で、首都圏の鉄道では新型車両に運行情報や広告を表示する車両ビジョンを設置するのが一般的になった。ただ、在来線の車両の耐用年数は30年から40年程度と非常に長いため、世代交代には長い時間がかかる。

早くから車両ビジョンを設置してきた各私鉄においても、その搭載率は、東急電鉄で53.6%、西武鉄道44.9%、京王電鉄42.0%、小田急37.6%に留まっている。一方でそれと同時に、各社が初期に設置した車内ビジョンのなかには、縦横比が4:3の小さなモニターで古さを感じさせるものだったり、LCDのバックライトが劣化して見えにくくなったりするものがでてきている。

交通広告の売上が紙媒体からデジタル媒体に移動していき、車両ビジョンへのニーズが高まっているにも関わらず、車両の新造時や大改修時にしか設置やリプレイスができないとなると、このように搭載率はなかなか進捗せず、また古い機材が残ってしまう。これは大きな機会損失だ。このような問題に対応するべく、ビズライト・テクノロジーでは埼玉高速鉄道の車両ビジョンのリプレイスのために「ダイナミックビークルスクリーン」を開発した。また、それ以前にも既存車両への設置ニーズに応えるべく、総合車両製作所の「Train Viewer+」(プレスリリース)や、エヌケービーとNECの「自立通信型車内ビジョンシステム」(プレスリリース)などが開発されている。これらに共通しているのは、放映システムがモニター単位もしくは車両単位で完結している点だ。

これまでの新造車両のビジョンシステムは、基本的に編成単位で構成されている。先頭車両に地上と車両をつなぐ通信設備や中央設備が設置され、そこから有線で各車両の各端末へ映像データや放映指示を配信している。しかし、この方式だと配線が必要になるため、既存車両に設置するには大掛かりな工事が必要となり、莫大なコストが必要となる。また、放映方式がシステム構成に依存するため、新しい広告商品を開発するにも柔軟性に欠ける。それに対してダイナミックビークルスクリーンなどの後付け可能なシステムは、モニター単位、車両単位で完結しているため、車両をまたぐ通信や映像の配線が不要で工事費用を大幅に押さえられるうえ、ハードウェアの構成への依存が少なくてすむ。

埼玉高速鉄道に搭載されているビズライト・テクノロジーの「ダイナミックビークルスクリーン」電車以外のあらゆるビークルに対応できる設計思想である。

これに類似した例として、建物のスケルトン・インフィル工法がある。鉄筋鉄骨コンクリートの建物は、柱や梁などの構造躯体(スケルトン)と、内装や設備など(インフィル)の耐用年数を比べると、スケルトンのほうがずっと長い。ところが旧来の建物は、水道管をコンクリートの躯体内に埋め込むなどスケルトンとインフィルが一体化した構造になっており、インフィルが老朽化すると建物全体の価値が大幅に下がる「建物全体の耐用年数=インフィルの耐用年数」になっていた。これを解決しようとしたのが、スケルトンに影響なくインフィルを交換できるにするスケルトン・インフィル工法だ。たとえば、上下水道やガス管など交換が想定されるものをパイプスペースにまとめて配置し、外部からアクセスしやすいようにしておけば、容易に交換できるようになる。耐用年数が短いインフィルの交換を前提とすることで「建物全体の耐用年数=スケルトンの耐用年数」となり、長寿命化を実現できる。

センサーやAI機器などは、これからも急速に性能を上げつつ、小型化されていくことになるだろう。これは、導入側からみると陳腐化が急激ということでもある。最新こそ極めて耐用年数が短い。これがスケルトンに密結合しすぎると、スケルトンを含めた全体の陳腐化を招きかねない。インテリジェントなセンサーが遍在する時代に求められるのは、まさにこのスケルトン・インフィルな設計思想なのではないだろうか。