【ダイナミックビークルスクリーン】Vol.06 プライバシー保護について

AI/Digital Signage/IoT/Media /

都心部の鉄道車両では、ドア上にデジタルサイネージが設置され、運行情報や広告を放映するのが一般的になった。各鉄道会社、路線ごとに若干の違いはあるが、機材やシステム、また広告の販売方法は似通っている。しかし、ビズライト・テクノロジーが埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線に設置を進めているデジタルサイネージ『ダイナミックビークルスクリーン』は、これまでの車両内サイネージとは一線を画する。6回にわたって、この取り組みについてご紹介していきたい。 第6回は、センシングにあたってのプライバシー保護について。

ダイナミックビークルスクリーンは、カメラで周囲の状況をセンシングし、そのデータを活用するセンシングサイネージだ。

センシングする目的は、おもに2つある。ひとつは、コンテンツの出し分けのためだ。車内に女性が多い、男性が多いなどの状況をセンシングし、それに合わせた映像を放映する。もうひとつが、視認状況の取得ためだ。どのような属性の人々に見てもらえているのか、どれぐらい見てもらえているのかを分析している。

これらセンシングは、直接的には広告主のために使われるが、それが結果的にセンシングの対象となる乗客にとっても資するものと考えている。

たとえば、あるとき地下鉄のなかで車内ビジョンを眺めていた小学生ぐらいの女の子と、その母親らしき女性が、そこで放映されていた遊園地のイルミネーションの広告を見ながら、「そういえば、これ楽しかったね」「また一緒にいきたいね」と話しているのを見かけた。そこにいる2人にはぴったりの広告が放映されていたからこそ、微笑ましい会話がうまれた。そのときにアルコール飲料の広告が放映されていたら、このような会話はうまれない。視認者の属性やシチュエーションによって刺さるコンテンツは変わってくるし、コンテンツが刺さるということは、メッセージを伝えたい広告主にはもちろん、乗客にとっても幸せなことだ。

また、視認状況を取得することによって、視認単価で販売するインプレッション広告を実現しているが、これもまた乗客にとってメリットがある。これまでの広告の販売方法だと、広告主が車内ビジョンに広告を掲出するには、1週間15秒枠などの一定期間の時間枠を買い取る必要があった。時間枠を買い占めなければならないため、媒体費用は大きくなり、比較的大きな企業でなければ掲出は難しい。放映期間の調整にも柔軟性が欠ける。しかし、視認数単価で広告を掲出できるインプレッション広告であれば、予算やプロモーション期間に合わせて広告の掲出を自由にできるため、多くの広告主に門戸が広がる。「この電車の乗客に伝えたい」と考える多様な広告主が参画すれば、乗客にとっても価値の高いメディアになる。

ただ、乗客を含む車内を撮影した映像データの活用には、適切なデータの取り扱いが必要になる。ダイナミックビークルスクリーンでは、デジタルサイネージコンソーシアムが策定した「センシングサイネージガイドライン(第一版)」および、IoT推進コンソーシアム、総務省および経済産業省にて策定した「カメラ画像利活用ガイドブック ver.2.0」に準拠して運用している。

まずは、告知だが、車内をカメラで撮影していることを、筐体に貼られたステッカーおよびサイネージ内コンテンツで掲出しており、詳細な内容はウェブサイト上に掲出している

筐体の右下にはステッカーが貼られている。
筐体の右下にはステッカーが貼られている。
スクリーンに表示される告知画面
サイネージ画面内で掲出される告知。

また、撮影した映像データは、個人情報を含むが、流出等が発生しないよう下記のフローで処理される。

カメラで撮影した映像データは、車内の機材内でリアルタイムに性別や年代等の属性データ化され、その後、即座に破棄している。映像データは、システムメモリ上でリアルタイム処理されており、ハードディスクやSSDなどの記録媒体には一時的にでも保存されない。映像データが漏洩したり、目的外で利用したりすることがないようになっている。属性データは再生コンテンツの最適化に利用された後、クラウドにアップロードされ、機材内のデータは破棄される。クラウドにアップされた属性データの保持期間は1年。保持期間中に統計情報化され、媒体資料等の参考情報として利用される。

もうひとつ、視認状況を把握するための視認数カウントのデータの取扱については、下の図のとおりだ。

これもまたカメラが接続されている機材でAIによってリアルタイムに視認数をカウントし、映像データは即座に破棄している。視認数カウントデータは、ライブボード社のサーバにアップロードされ、その際に機材内のデータは削除される。カウントデータは、ドコモのサーバにも送信され、統計情報・予測データ化したのち、ライブボード社に戻され、広告の配信の制御やレポートに使われる。

ビズライト・テクノロジーでは、センシングサイネージの運営企業として乗客のプライバシーを保護するため、上記のように、技術的にできうる限りの処置を行っていく。ただ、センシングの対象となる乗客に受け入れてもらうには、乗客のメリットになっていると感じてもらうとともに、私たちの取り組みに安心してもらわなければならない。一朝一夕にはいかないが、センシングサイネージの健全な発展のためにも、誠意を持って取り組んでいく。