金商法改正でSTOによる資金調達が日本でも本格化? セキュリティ・トークンも株式型クラウドファンディングで取扱い(前編)

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ビットコインやイーサリアムに代表される暗号資産。いわゆる仮想通貨として認知され流通している。数多くの新たな仮想通貨が生まれる中で、近年、事業会社等がトークンと呼ばれる独自の暗号資産を発行して資金調達する動きが世界的に広がった。ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれたが、米国でSEC(証券取引委員会)に登録されて証券として募集された事例が登場。STO(セキュリティ・トークン・オファリング)と呼ばれるようになった。

日本では2018年12月に公表された「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書が公表。これを受けて2019年5月31日に資金決済法と金融商品取引法の改正議案が可決成立。1年以内に施行されるものとされ、それまでに政令及び内閣府令が制定されることとになっている。

2017年の改正資金決済法では世界に先駆けて法的に仮想通貨の定義が行われ、仮想通貨交換業が登録制となったが、今回の改正では、「仮想通貨」を「暗号資産」に改名。仮想通貨交換業も暗号資産交換業と改名され登録業者として引き続き当局の監督を受けることとされた。

注目すべきは金融商品取引法の改正で新たに定義された「電子記録移転権利」。STOにより事業会社が発行するトークンが電子記録移転権利に該当する。電子記録移転権利を有価証券として位置づけることを通じて、投資者保護を図ろうしたものだ。今回は、法改正により具体的に可能となるSTOによる資金調達と今後の課題について考察する。

暗号資産とSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)

従来、仮想通貨と呼ばれてきた暗号資産。法定通貨とは異なる単位をもつ電子的に記録された財産的価値で、インターネットを通じて移転できる性格を有する。一般には分散管理とブロックチェーン技術によって構築されている。「価値の媒介」「価値の貯蔵」「価値の測定」の3機能によって通貨としての役割が期待されてきたが、投機的な目的による利用が大半を占め、金融商品としての性格が強まった。その結果、今回の改正金商法でも、暗号資産が金融商品に加えられている。確かに代表的な暗号資産であるビットコイン、イーサリアム、リップルなど、著しい価格の変動が投機的投資需要を支えてきた側面は否めない。

次々と新しい暗号資産が生まれる中で、独自の暗号資産を発行して資金を調達するICO(イニシャル・コイン・オファリング)が盛んになった。金融庁が2018年11月に「仮想通貨交換業に関する研究会」に提出した資料では、ICOについて「企業等が電子的にトークン(証票)を発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するもの」と説明している。以下は全世界のICOによる資金調達額の四半期別推移である。

(出典:InWara’s Security Token Offering Report)

ICOはピーク時の2018年第2四半期は75億ドルに達したが、第3四半期以降は急速に減少。その背景には詐欺的な募集で損失を被る事案が増加したことがある。2017年12月に米国SEC(証券取引委員会)のクレイトン会長がICOマーケットについて伝統的な証券マーケットと比較して投資家保護に大きく劣っていると警告。その後、全世界で取締りが強化された。米国SECは発行されるトークンが有価証券に該当するケースがあると発表し、個別のICO事例について証券規制が適用した。証券規制が適用されるICOはSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)と呼ばれ、ICOを代替していく。以下は、2018年~2019年の四半期毎の全世界のSTOの発行件数の推移である。

(出典:InWara’s Security Token Offering Report)

2019年の第1四半期には、47件と前年同期比3倍増となった。

我が国の金融商品取引法の改正とSTOの取扱い

このように海外においてICOからSTOへのシフトが進む中、我が国においては金融庁が2018年3月に「仮想通貨交換業等に関する研究会」(以下「研究会」という)を設置。2018年12月までに11回の研究会を開催し、12月21日に報告書が公表された。研究会においては、デリバティブ取引を含む暗号資産関連取引について幅広く議論が行われた。ICOについては2018年11月1日開催の第8回研究会で詳細な議論が行われている。

第8回研究会では、世界的にICOに対する規制が強化されている実情を紹介するとともに、ICOのタイプについて、スイスのFINMA(証券監督機構)が2018年2月に公表した以下のICOトークンに関するガイドラインを引用して説明された。
 ①Payment Totkens(決済専用トークン)
 ②Utility Tokens(ユーティリティトークン)
 ③Asset Tokens(アセットトークン)

このうち①は発行会社からの直接的な見返りは特に求めないタイプ、②は発行会社から物品・サービス等の供与を見返りとして求めるタイプ、③は発行会社が保有する何らかの資産や事業収益の分配を受けることができるタイプと説明されている。この中で③は一般にはセキュリティ・トークンのことを指し、我が国の金商法では集団投資スキーム持分として第2条第2項に定める「みなし有価証券」に該当する。したがって金商法で規制対象の有価証券として整理すべきは③であるというのが研究会での方向性となった。以下は、第8回研究会において金融庁より示されたICOの概念図である。                                

(出典:金融庁WEBサイト)

研究会報告を受けて、改正金商法では、ICOにより発行されるトークンのうち次の(a)かつ(b)に該当するものを「電子記録移転権利」と定義して、規制対象とすることとした。
(a)金融商品取引法第2条第2項各号に掲げる権利に該当する。
(b)電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子的方法によりに記録されるものに限る)に表示される。

上記により電子記録移転権利に該当するトークンは日本版セキュリティ・トークン、その発行による資金調達は日本版STOと言えよう。

以上、今回は金商法の改正によりICOのうち、STOが法的に有価証券として位置付けられ規制対象となったことを説明した。次回は、この法改正によって具体的に企業の資金調達にどのような可能性が生まれるか検討してみたい。           

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