【ダイナミックビークルスクリーン】Vol.05 AIエッジコンピューティング

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都心部の鉄道車両では、ドア上にデジタルサイネージが設置され、運行情報や広告を放映するのが一般的になった。各鉄道会社、路線ごとに若干の違いはあるが、機材やシステム、また広告の販売方法は似通っている。しかし、ビズライト・テクノロジーが埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線に設置を進めているデジタルサイネージ『ダイナミックビークルスクリーン』は、これまでの車両内サイネージとは一線を画する。6回にわたって、この取り組みについてご紹介していきたい。 第5回は、Raspberry Piを使ったAIエッジコンピューティングについて。

一般的な車両内ビジョンは、編成単位で通信装置や映像出力装置などのシステムを構成しているが、ダイナミックビークルスクリーンではドア上ごとにWANと接続する通信モジュール、車内環境データを取得するセンサーやカメラと、それを分析するAIエッジコンピュータ、そして映像出力機材が設置され、それで独立したシステムとなっている。同じ車両内でも互いの機材が通信することはなく、それぞれがサーバとつながる構成となっている。

このような構造になったのは、ダイナミックビークルスクリーンが新造車両ではなく、既存車両に設置されたからだ。編成単位でシステムを構成するには、編成単位でローカルネットワークを構築しなければならないが、有線だとケーブルを取り回すには大きなコストが必要になり、無線だとネットワークが不安定になってしてしまう。そこで、このようにドアごとに独立したシステムとなった。1編成あたり24個の通信モジュールが必要になるが、後付のIoTにとっては、工事コストのほうがネックになるのだ。

ダイナミックビークルスクリーンでは、車両内の環境に合わせてダイナミック(動的)にコンテンツを差し替えるため、環境センサーやカメラで車両内の環境情報を収集しているが、それにもこのような構成は適している。解析処理を車両内サーバやクラウド側で行えば、映像を含む環境情報をそこまで伝送しなければならなくなり、遅延がどうしても発生してしまう。それをカメラと直結したエッジ端末で行うことで、安定したリアルタイム処理が実現できるのだ。また、個人情報を含む映像データをサーバに送るとなると、何らかのトラブルが発生したときの影響範囲が大きくなってしまう。端末側で解析し、即座に映像を破棄すれば、それを未然に防ぐことができる。カメラとAI処理機能が一体化した構成は、リアルタイム性およびプライバシー保護の観点からも適しているのだ。

これらの機材は、すべてビズライト・テクノロジーのRaspberry Piを使ったゲートウェイ機材「BHシリーズ」で構築されている。Raspberry Piは、教育用として開発された経緯や低価格なところから、ホビイスト向けのコンピュータと思われがちだ。しかし、BHシリーズは、電源を強化するオリジナル基板と、電磁波などのノイズから守るケーシングによって堅牢性を確保し、産業用途でも使えるようにしている。これまでも工場内などで活用されてきたが、さらに鉄道の車両内という厳しい環境下において稼働することを示すことで、さらなる広い分野におけるAIエッジコンピューティングの現実的な選択肢となりうることを証明したいと考えている。