旅行代理店もコミュニティの時代 HISが仕掛ける新たな動き

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池袋に所用があり、久々にPARCOをぶらついた。数年ぶりに訪れたが、当然テナントは入れ替わっていて、昔のPARCOの面影はない。その中で目を引いたのが、HIS The ROOM of journey(池袋パルコ営業所)だ。

ここは旅行代理店というよりは、旅をコンセプトにしたカフェにしか見えない。今流行りのサードプレイスで、居心地の良い空間がデザインされている。“旅のはじまりは、ここから。”をコンセプトに、あえて社員やパンフレットなどは目立たせないようにしているのが特徴だ。

店内は、「エントランス」、「キッチン」、「スタディワークス」、「クローゼット」、「リビングルーム」、「キッズスペース」といった部屋で構成され、このコミュニティに参加した人たちが、旅について考えられるようになっている。

ネットやソーシャルメディアから海外の情報が簡単に手に入り、オンラインで旅行を買うことが当たり前になった時代に、旅について考えることは逆に減っている気がする。若い人の海外離れが進む中、“旅のはじまり”となる空間を造ることが、HISの戦略になっている。

法務省「出入国管理統計統計表」によると、20代の年間出国者数は、1979年に100万人を超え、96年には463万人に達した。しかし、その後減少を続け、2017年は305万人になっている。出国する人がミドルやシルバー世代中心になれば、当たり前だが10年後、20年後にはマーケットはシュリンクする。年をとれば海外旅行に行く人が減る中で、若者が海外に行かなくなれば、HISは大きな打撃を受ける。若者の海外への興味関心を高めなければ、HISのビジネスが縮小してしまうのだ。

HISは池袋PARCOという若者が集まる場所に新たコミュニティを立ち上げた。カフェに立ち寄り、勉強したり、仕事をする若者に、旅行の魅力を伝え、彼らをファンにすることで、未来の新たな顧客をつくれる。また店舗に来たいと思う顧客が増え、海外旅行を身近なものだと感じてもらえれば、HISのチャンスは広がるはずだ。

カフェでは世界中から厳選された豆を使ったコーヒーを中心としたドリンクメニューやオリジナルフードが提供されていて、他のカフェとの差別化が図られている。メニューもインスタ映えが意識されている。旅行好きなスタッフが選んだ200冊を超える書籍が用意され、新たな旅先との出会いがデザインされている。

当然、これだけの店舗であるから、旅の相談も可能だ。「クローゼット」「リビング」エリアでは、旅慣れたスタッフからアドバイスや提案をもらえる。

筆者は、沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れ、若い時から旅を繰り返してきたが、海外の知識と経験が人生の幅を広げてくれた。情報に恵まれているが旅に出ない若者たちが、海外に出るきっかけがここから生まれればよいと思いながら、HIS THE ROOM of journey を後にした。