120年ぶりの民法改正が近づく

IoT /

実に120年ぶり ~ITビジネスの時間軸でいえば、さしずめ生命誕生以来という感じ~ という民法改正施行まであと4か月を切った。本誌では、特にIT事業者にとって影響がありそうなポイントを1点、レビューしておこうと思う。

定型約款制度の新設

ITサービスを広く一般に展開する場合、一般に、お互いの約束事項を「約款」としてサービス提供者が示し、その「約款」を、受け手(消費者)が容認することで、「契約成立」とするケースがある。 オンラインのITサービスなどでも広く行われている方法と思われるが、実は民法において、この「約款」に関する定めが規定されていなかったのだ。もちろん、「特定商取引法」「個人情報保護法」等々、消費者との取引を行う上で注意を要する法令は多数あるが、その根本たる民法の規定が欠けていたというわけだ。

今回、こういった場合の合意成立について、新たに「定型約款制度」が定められた。法の内容としては、既に現実的に行われている約款に基づく契約行為を追認するものだと筆者はとらえているが、約款の提示を受け、一般に弱い立場にある受け手(消費者)を守りつつも、条件を提示する企業側にも、実務上のツールを持たせることで、一定のポジションを与えていると解釈している。

約款に基づくビジネスで、取り交わした後での「内容変更」は事業者側にとって厄介な問題だ。もちろん、変更が契約した相手(消費者等)にとって、明らかに不利になる場合は、個別の修正承諾を得るか、全て契約し直しという対処をせざるをえないのは、ある意味仕方ないところだ(今回の改正でも、この点に変わりはない)。あえて言えば、そういった事態を招いた提示者側が当然に責任を持たねばならないというわけだ。
一方、変更の理由が、例えば法令や制度の改訂といった外部に起因するもので、かつ、契約相手(消費者等)に不利になることはまず想定しにくいケースは悩ましい。約款の内容を変えても誰も損はしないだけではなく、むしろ約款の内容を変えないと、逆に現実のサービスとの不整合が生じてしまったり、契約相手に利便性の低下をもたらすケースもありえる。おそらく現状は、変更内容と理由を予め全ユーザーに通知して、「何か言いたいことあったら言ってね」で終わらせたいた類のものだ。

これについて、今回の民法改正では、
A 契約の目的に反しない変更であること
B 変更に必要性があること
C 変更後の内容の相当性があること
D 内容その他の変更に係る事情に照らして、合理的であること
E 内容の変更をすることがある旨の定めがあること
の5条件を満たせば、約款の提示者側が一方的に約款の内容を変更しても、それが有効となる定めが規定された。

これら5条件を読み解くと・・・A、B、C、DはまぁOK。適否の判断の幅があるため、とりあえずは商慣習や一般常識の範囲内で対処し、施行され、判例が出てくれば、より判断の幅が狭まるといった対処でよいだろう。ところがEだけは他の4条件と違って、判断の余地がない。この記載が抜けていると、後々一切の変更が契約の相手方の承諾なしには不成立となってしまう可能性が残ることになる。

さらにもう一つ重要な点は、この規定は「以前の約款にさかのぼって適用される(できる)」点だ。つまりは、「よーし。施行日(2020年4月1日)以降に取り交わされる「約款」から変更しよう!」ではちょっと遅い(というかもったいない)のだ。つまりは、今、約款を変えて契約しておけば、2020年4月以降は、堂々と(条件を満たせば)一方的な変更が可能ということになるわけだ。

なお、Eに付随し、例えばインターネット等を介した変更内容の周知手続きについても規定する必要があるが、一般消費者向けのITサービスを展開する事業者の方は、本記事を読んだらスグに、まずは自社の「約款」を見返してみて欲しい。