【InterBEE2019】Vol.05 パッションテックをInterBEEで語る意義

AI/IoT/Media /

パッションテックという言葉を聞いたことがあるだろうか。事業ドメインに“自分がいちばん情熱を掛けられること”を据え、世界中で利用されるサービスを目指し会社を立ち上げ、資金調達を成功させているパッションテックの事例が増えている。ニッチであったとしても熱量がある世界中の人をつなげば市場になる。

「パッションテックが新たなメディア・コミュニティの可能性を拓く」と題したセッションではパッションテックを仕掛けるスタートアップであるvivit株式会社 
代表取締役の水谷寿美氏、株式会社リブルー 代表取締役の岡田英之氏と、スタートアップ投資をするベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの高宮慎一氏が登壇した。モデレーターは株式会社インクワイア 代表取締役のモリジュンヤ氏である。

水谷氏は、「hinataには月間250万人ほどのアウトドア、キャンプ好きな人が集まっている。これまでは雑誌の成熟度とスタッフのレベルが上がりすぎていて、初心者が入り込みにくい環境にあったので、hinataでは初心者でも理解しやすいようなコンテンツづくりを心がけています。また、世界観づくりにもバランスを配慮しながら運営しています。たとえば、ディズニーランドはユーザー側に編集権を持たせずに、運営側であるべきと聞いており、ハロウインシーズン以外は、コスプレを禁止している。パッションテックが成功するためには、規模または深さで捉えて、キャッシュポイントを多くつくり、エンゲージメントが高くなる事が重要である。エンゲージメントとして熱狂的な100人がいればその先に100人が集まる。」

vivit株式会社 代表取締役の水谷寿美氏
hinata

「課金またはそのタイミングに関しては、元々あるペインを解決するための課金はわかるが、ペインを設定してその解決のために課金する、つまり課金しないと、心地よい体験ができないようなUXは良くない。プライシングについても、3つある。コストから逆算、マーケットプライスでの価格、最後に、提供価値を何を代替してるかで決めるべきです。つまり全然違う価値の定義が必要で、それによってプライシングも変化する。」と語った。

水谷氏がいま注目しているパッションテックとしては、Cotopaxi「パッションで貧困をなくす」を掲げるアウトドアファッションブランドで、強いパッションだけで支持され、パタゴニアやノースフェイスに対抗しうる存在になりつつある。Vivid garden「農業にテクノロジー」を導入し、生産者のこだわりが正当に評価される世界を目指し、関連の既得権益と戦う。などを挙げていた。

サーフィンをライフスタイルに持つ人たちの動画アプリ「NobodySurf」を運営する岡田氏は、「ユーザーの85パーセントが海外で、サーフィンがライフスタイルの一部になっている人たちだ。これまでに9000本以上の動画作品を紹介しており、アプリやSNSを通じて月間200万人ほどのユーザーにリーチしている。サーフィンには色々なジャンルや楽しみ方があり、これまでは多数の国や地域に分散してコミュニティが存在していたのだが、NobodySurfでは「良いサーフ映像」を軸にそれらのコミュニティを緩やかに繋いで一つのグローバル・コミュニティをつくることにチャレンジしている。こうしてオンラインで擬似的に繋がったコミュニティをきっかけに、今後はリアルに人が移動し始めると予測している。実際に、映像で観た世界のサーフポイントを旅するとか、そういった事が起こり始めている。」とした。

株式会社リブルー 代表取締役の岡田英之氏
NobodySurf

高宮氏はパッションテック全体に関して、「投げ銭、アイテム課金、サブスクリプション、プレミアム課金、さらにはリアルイベントでの課金といった課金側のイノベーションによって、ユーザ規模が小さいニッチメディアでも、ファンビジネスとも言うべき十分にエコノミクス(収益的に)が成立し始めていて、高成長を求めるベンチャー投資も成り立つようになってきた。」「こうしたニッチメディアに於いては、コミュニティ化して、エンゲージメントを高めるかが肝なので、運営のコミュニティマネジメントが重要。新規ユーザの参入と古参兵のロイヤリティのバランスを取るのが、難しい一方で、最大のポイント。」「また熱量の高いコミュニティを維持するためには、創業者のパッションこそがその根幹にある。」

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの高宮慎一氏

「エンゲージメントさえ高ければ課金ポイントは後から設計できる。例えば、メルマガ→サロン→クローズドなリアルイベント参加権など、課金をティア構造にして、それぞれのユーザの熱量に応じて課金を最適化・最大化するようなことも可能。」「ユーザは自分が情熱をもっている領域に関しては、体験に対して主観的な価値を認めれば、お財布の紐は際限なく緩む。ROIではなくR:純粋なリターンでお金を使うかどうかをきめる」、「イノベーションは辺境から起きる、リアルで既にある習慣をネット化するのが一番確実なビジネスといったセオリーを鑑みると、パッションテックでも海外やニッチな趣味のコミュニティで起こり始めている兆しを捉え、ネットビジネス化するのが良いのでは。」と話した。

株式会社インクワイア 代表取締役のモリジュンヤ氏

各氏のコメントはここではまとめているが、実際のパネルディスカションではモデレーターのモリジュンヤ氏による小気味良く、キーワードがいくつも見えてくる進行で氏の知見に基づく内容であった。

なによりもInterBEEという場において、自分たちの業界のローカル問題ではなく、こうした世の中の動きをきちんと見据えることができる機会が用意されるようになったのは本当に良いことだと思う。