【ダイナミックビークルスクリーン】Vol.04 インプレッション販売型広告

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都心部の鉄道車両では、ドア上にデジタルサイネージが設置され、運行情報や広告を放映するのが一般的になった。各鉄道会社、路線ごとに若干の違いはあるが、機材やシステム、また広告の販売方法は似通っている。しかし、ビズライト・テクノロジーが埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線に設置を進めているデジタルサイネージ『ダイナミックビークルスクリーン』は、これまでの車両内サイネージとは一線を画する。6回にわたって、この取り組みについてご紹介していきたい。第3回は、インプレッション販売型の広告枠について。OOHにとってパンドラの箱となりかねない取り組みについて解説したい。

ダイナミックビークルスクリーンでは、LIVE BOARDとの提携により、広告枠の一部をインプレション販売型で提供する。

一般的な車両内ビジョンでは、広告を放映する期間と、頻度で広告枠を設定して販売している。たとえば「15分に1回、15秒の映像素材を放映する枠」との形で広告枠を販売している。それに対してインプレション販売では「目標広告視認数✕視認単価=広告料金」で広告枠を売買する。ダイナミックビークルスクリーンでは、車両内に設置されたカメラで視認数(=インプレッション)を計測する。視認数をカウントする広告枠のインプレッション販売は、鉄道車両内では日本で初めての試みだ。

広告主は「テレビに広告を出したい」「交通広告を出したい」とメディアごとに出稿を考えるのではなく、自分が届けたいターゲットへのリーチやフリークエンシーに目標設定を行い、それを実現するのにもっとも効果的なメディア配分をプランニングするようになってきている。そのため、各メディアのオーナーは、メディア単体での広告効果を謳うだけではなく、ほかのメディアと比較検討が可能な指標が必要となる。そのひとつが、この視認数だ。

これまでOOHの効果検証は、媒体社や広告会社、調査研究機関によるアンケート調査に基づく形で行われてきた。たとえば、日本鉄道広告協会などが整備した「交通広告共通指標推定モデル」では、インターネットリサーチで、媒体ごとに調査対象広告を掲出期間内に「見た」「見たような気がする」と回答した人の割合を広告到達率としており、中吊り、窓上、ドア横、車内ビジョンなどのメディアのユニット別の広告到達率を出している。たとえば、車内ビジョンの広告到達率は平均37.8%。これを使えば、掲出先の路線の輸送人員とメディアユニットの広告到達率をかけ合わせれば、どの程度の人数にリーチできるのかが推測できる。

しかし、車両内ビジョンは、車両によって画面の大きさ、縦横比、明るさ、視野角などの機材スペックが大きく異なるし、映像素材のクリエイティブによって、実際の視認状況は変動する。それにも関わらず、すべてをひとまとめにした広告到達率でリーチを推定するのは、メディアを横断して広告をプランニングする指標としては粗い。ROIに厳しい広告主だと、車両内ビジョンを「効果測定を行えない」=「メディア配分のプランニングができないメディア」として広告出稿先の候補から外してしまうこともありうる。これを避けるには、OOHでもアクチュアルデータを計測し、それをレポーティングしなければならない。今回のインプレッション販売型広告を取り入れるのは、そのような将来を想定したうえでの試みだ。

また、ウェブ広告では、リアルタイムにアクチュアルのインプレッション数が把握できるため、広告主は広告掲出前に予算をもとにしたプランニングでメディア配分を最適化するだけではなく、広告を掲出している期間中にもその効果を見て最適化するようになってきている。車両内ビジョンでもリアルタイムにインプレッション数を計測し、さらにはそれに応じた柔軟な運用ができれば、リーチやフリークエンシーの目標数を確保するためのメディアとして、利用されることになるだろう。

長期的には、OOHでもアクチュアルデータの計測と提供は避けられない。ただ、現時点では「広告主にOOHのインプレッション販売がどの程度受け入れられるのか」「最終的にメディアの売上を高めることになるのか、下げることにならないか」などは未知数だ。既存のメディアオーナーだと、これまでのビジネスを壊しかねず、踏み込むことが難しい。その点、私たちは、新参者であり、テクノロジーカンパニーであり続けるために本事業に取り組んでいるため、躊躇しなくてすむ。業界からは少々煙たがられているのは承知しているが、まずはその一歩にチャレンジしてみる。取り組んでみての反響については、GASKETで随時ご報告していく予定だ。