2020年税制改正で「エンジェル税制」が拡充

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2020年税制改正で「エンジェル税制」が拡充され、株式型クラウドファンディングによる投資の所得控除を大幅に拡大する。

12月12日の日経新聞電子版。『エンジェル税制 ネット小口出資後押し』の見出しが掲げられた。報道によると、スタートアップに投資した個人が税金の優遇を受けられる「エンジェル税制」を拡充し、特に、『インターネットで小口出資を募るクラウドファンディング』を通じた投資を後押しする。税優遇の手続きを減らし、設立後3年未満としていた要件も5年未満に広げる。創業まもないスタートアップが資金調達しやすい環境をつくることが目的だ。

この報道の基礎となっているのは、当日、自民党及び公明党から公表された「令和2年税制改正大綱」である。今回は、本改正の背景とその影響について考える。

エンジェル税制とは?

エンジェル税制は、個人のスタートアップ投資の促進を目的に、投資をした個人に対して税制優遇を行う制度だ。優遇措置Aと優遇措置Bがあり、投資をした個人が選択する。優遇措置Aは、投資額の全額から2,000円を引いた金額(1千万円又は総所得金額の40%が上限)を、総所得から控除できる。対象投資先は、設立3年未満で一定の要件を満たす企業。これに対して優遇措置Bは投資額の全額を分離課税の株式の譲渡所得から控除できる。控除できる金額に上限はない。対象投資先は設立10年未満で一定の要件を満たす企業となっている。

また株式を譲渡時に譲渡損が発生した場合には、譲渡所得の計算上、その年の株式等の譲渡益と通算(相殺)しきれなかった損失を3年間に繰越して順次、譲渡益と通算できる。

伸び悩むエンジェル税制利用の現状

エンジェル税制は、平成9年に始まった制度であるが、実際のところ利用は多いとは言えない。適用要件が厳しく、また手続きが煩雑であることが要因である。以下は、利用状況の推移を示したグラフである。この数年は株式投資型クラウドファンディングを通じた投資への利用が増えたこと等で伸びているとはいうものの、昨年度の利用は全国で年間170件、総額45億円程にとどまっている。

厳し過ぎる!エンジェル税制適用の要件

厳しいと言われる原状のエンジェル税制の適用要件。具体的に原状はどのようになっているのであろうか?優遇措置A、優遇措置B、それぞれ以下の通りである。

【優遇措置A(設立3年未満の企業が対象)の要件】

※1 研究者とは、特定の研究テーマをもって研究を行っており、社内で研究を主として行っている方で、試験研究等に含まれる支出がなされる方。
※2 新事業活動従事者とは、新規製品やサービスの企画・開発に従事する方や、新規製品やサービスが市場において認知されるために必要となる広告宣伝や市場調査の企画を行う方。
※3 試験研究費等には宣伝費・マーケティング費用を含む。

【優遇措置B(設立10年未満の企業が対象)の要件】

このほか、優遇措置A及び優遇措置Bに共通に必要な要件として、以下が定められている。

  • 特定の株主グループ(発行済株式総数の30% 以上を保有している株主及びその親族や関係会社等)の保有株式数の合計が発行済株式総数の5/6を超えない会社であること。
  • 一つの大規模法人(資本金1億円以上)及びその子会社等(以下「大規模法人グループ」という)に過半数の株式を所有されていないこと及び複数の大規模法人グループに合わせて2/3以上の株式を所有されていないこと。
  • 非上場会社であること。風俗営業等に該当する事業を営んでいないこと。

煩雑な手続きが利用伸び悩みの最大の要因!

エンジェル税制の適用にあたっては、まず資金調達を行う中小企業が、これらの要件を満たすことについての確認申請を都道府県に行わなければならない。そのために提出する資料が以下である。

  • 確認申請書
  • 定款
  • 登記事項証明書
  • 払込日直前期までの貸借対照表、損益計算書、事業報告書
  • 確定申告書別表2
  • 株主名簿
  • 常時使用する従業員数を証する書面
  • 組織図
  • 研究者・新規事業活動従事者の略歴、担当業務内容
  • 事業計画書
  • 法人設立届出書
  • 設立の日における貸借対照表
  • 設立後の各事業年度の貸借対照表、損益計算書、事業報告書及びキャッシュフロー計算書
  • 払込日が属する年度の前年度の確定申告書別表1(1)(税理士が署名したもの)
  • 法人事業概況説明書
  • 株式の発行を決議した株主総会又は取締役会議事録等
  • 株式申込証
  • 払込があったことを証する書面(銀行通帳等)
  • 投資契約書

※④は優遇措置Bのみ、⑫~⑰は優遇措置Aのみ(うち⑫⑬は設立1年未満で事業年度を経ていない場合のみ)に必要

これらの書類を作成して提出するだけでも大変だが、都道府県では確認作業を行うため、かなり時間を要する。都道府県では確認手続きが終了すると「確認書」を申請した会社に交付する。会社はこの確認書と「株主異動状況表」を増資に応じた個人に交付する必要がある。個人は確定申告の際にこれらの書類を添付することで、ようやく所得控除が可能となる仕組みだ。

エンジェル税制拡充!株式型クラファン急成長の決め手となるか?

今回の税制改正では、優遇措置Aについて、まずは設立3年未満の中小企業の要件を設立5年未満に拡大した。さらに重要なのは、株式投資型クラウドファンディングを通じて投資をする場合に限り、優遇措置A、優遇措置Bともに、企業の要件に示されている以下が撤廃されることだ。

  • 研究者あるいは新事業活動従事者に関する要件
  • 試験研究費に関する要件
  • 売上高成長率に関する要件
  • 特定の株主グループによる持株比率に関する要件

企業の要件としては、営業キャッシュフローが赤字であるとの要件と大規模法人のグループでないこと等が残るのみ。対象となる企業が大きく広がるとともに、都道府県に対する提出書類や確認手続きが、大幅に軽減されることになる。

金融商品としての性格よりも、事業への共感や支援が目的の株式投資型クラウドファンディング。エンジェル税制による税制優遇は、特に拡大縁故募集を理念とするGoAngel(ゴ―エンジェル)において、個人の投資参加の意欲を高める効果は大きい。来年度はエンジェル税制を活用して株式投資型クラウドファンディングが創業期の企業へ投資が大きく成長することになりそうだ。