東急東横店の壁面に巨大なサイネージがあったことは誰も覚えていない

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渋谷の再開発が進んでいる。そして東急東横店も2020年3月末に閉店となり、解体されて渋谷スクランブルスクエアの中央棟と西棟に生まれ変わる。完成は2027年の予定だそうだ。

こうした再開発が進む中で、最後まで残ったのが東急東横店の建物である。現在の渋谷の街には、ハチ公交差点をはじめとしてあちこちに大量のビジョンが設置されているが、その中の最初の例として、かつて東急東横店の壁面がデジタルサイネージとして機能していたことをご存知だろうか。多分誰も覚えていないか気がついていないと思う。

下の写真で黒く見える四角い部分。この中にブラウン管が仕込まれていて、色の変化で文字や図形を表現していたのである。解像度は横が10ピクセル、縦が14ピクセルしかない。筆者はその制作チームに属していたのである。当時はデジタルサイネージという言葉はもちろん存在していない。事前にパソコン上でシミュレーションを行って、どうにか文字や図形として認識できるかどうかという状況であったが、とにかく実装されたのである。記憶が曖昧だが、1990年代前半の話である。大型ビジョンと言えば新宿のスタジオアルタくらいしかないような時代である。

最初の計画ではもっとピクセルを増やす、つまりブラウン管を増やす計画だったのだが、壁面工事の際に物理的、経済的理由で10✕14ピクセルになってしまった。当時はまだLCDは存在していなかったので、29インチ4:3のブラウン管を取り付けるのが限界だった。これ以上大きなブラウン管も存在していなかったのである。実際に点灯した時の写真や資料はすでに手元にはなく、ネットを探しても見つけられない。当時の様子は現在の写真から想像していただくしかない。あまりにも粗い画像になったので、途中で文字や図形の表現は諦めて、単なる照明的な利用になってしまった。

その後すぐに点灯されることも無くなり、表面はシートによる広告媒体になってしまい、一部のピクセルは覆い隠されてしまうようになったのである。同じ頃に公園通りや道玄坂には、照明の電柱に15インチくらいのブラウン管を埋め込んで渋谷の情報を放映するといったプロジェクトにも関わった。これも今から思えばデジタルサイネージの走りということになるだろう。

あれから25年以上が経過した2019年。渋谷スクランブルスクエアの壁面に巨大なディスプレイ媒体、「渋谷スクランブルスクエアビジョン」が設置された。

いろいろな事情があるのは承知しているが、ベゼルのように見えるビルの窓枠が視認性を著しく低下させている。

たぶん窓枠を利用したクリエイティブをする以外に使い道はないと思うが、窓枠の奥行きが結構あるのでその場合でもどうしても視差が生じてしまうのである。

解体される東横店壁面の、デジタルサイネージ遺産に登録してもらいたいくらいのディスプレイ跡を見ながら、渋谷スクランブルビジョンの未来に想いを馳せるのである。

渋谷スクランブルビジョンの媒体資料