CAMPFIREが株式型クラウドファンディングGoAngelを買収

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このシリーズで紹介してきた株式投資型クラウドファンディングGoAngelを運営するDANベンチャーキャピタル。11月6日、筆者が代表を務めるこの会社が、CAMPFIREグループの傘下に入ったとことが報道された。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000231.000019299.html

CAMPFIREはDANベンチャーキャピタルの株式の50.3%を取得し、親会社となった。筆者は第二位の株主となり、引き続き代表取締役の任にあたる。CAMPFIREは、家入一真氏が代表を務める購入型クラウドファンディングの最大手である。今回は、筆者が自らの経営するDANベンチャーキャピタルを、CAMPFIREの子会社とする決意をした経緯について語りたい。

時は遡ること23年前の1996年9月。当時コンサルティング会社の㈱ディー・ブレインを経営していた私は、インターネット上にユニークなサイトをオープンした。「インターネットベンチャー投資マート」。ネット上に中小企業の事業計画や財務情報、経営者情報等を開示して、株式を募集するWEBサイトである。財務情報には仲間の公認会計士が監査をつけて客観性を高め、上場をしなくても投資家から公募増資により資金調達ができる仕組みだった。やがてグリーンシート制度に発展するこの仕組みは、まさに今でいう「株式型クラウドファンディング」そのもの。時はまだインターネット黎明期である。「インターネットベンチャー投資マート」は日経新聞を皮切りに新聞雑誌がこぞって紹介し、瞬く間に話題となった。そしてそれは30年ぶりの新設証券会社となったディー・ブレイン証券の設立に発展した。

株式型クラファンの草分け「インターネットベンチャー投資マート」

時は遡ること23年前の1996年9月。当時コンサルティング会社の(株)ディー・ブレインを経営していた私は、インターネット上にユニークなサイトをオープンした。「インターネットベンチャー投資マート」。ネット上に中小企業の事業計画や財務情報、経営者情報等を開示して、株式を募集するWEBサイトである。財務情報には仲間の公認会計士が監査をつけて客観性を高め、上場をしなくても投資家から公募増資により資金調達ができる仕組みだった。やがてグリーンシート制度に発展するこの仕組みは、まさに今でいう「株式型クラウドファンディング」そのもの。時はまだインターネット黎明期である。「インターネットベンチャー投資マート」は日経新聞を皮切りに新聞雑誌がこぞって紹介し、瞬く間に話題となった。そしてそれは30年ぶりの新設証券会社となったディー・ブレイン証券の設立に発展した。

ディー・ブレイン証券とグリーンシート

グリーンシートは上場会社に準じた情報開示を発行会社に義務付けることにより、非上場の中小企業の株式の取扱いを証券会社に認める日本証券業協会の制度だった。非上場の中小企業のための証券市場の性格を持ち、中小企業は登録時に株式を募集して資金調達をすることができる。私が代表を務めていた1999年~2010年までの間、ディー・ブレイン証券のグリーンシート市場における募集取扱主幹事シェアは9割。主幹事実績は141社に及び、総額110億円の公募増資を取り扱った。141社のうち19社がその後、証券取引所に上場している。

私が目指してきた世界は、3,600社の上場会社に限られてきた資本調達のインフラを、200万社を超える中小企業に解放することにあった。それは成長志向の中小企業の資金調達に資するとともに、資本増強によりリスク負担力を高める。前向きな投資によるチャレンジを促進し、多くの企業の成長が日本経済の新たな発展成長を支えると確信していたからである。

しかしその志はリーマンショック後の環境変化で閉ざされる。当時、新興市場の上場引受主幹事業務に進出したディー・ブレイン証券。2007年に年間181社あった新規上場企業数が2009年には19社に激減する中、私の強気の経営が裏目となり、業績は急降下。私は2010年10月に責任をとって代表を辞任した。

株式投資型クラウドファンディング制度の創設とGoAngel誕生

もう金融の仕事は諦めて公認会計士の仕事に徹しようとも思った私であるが、転機となったのが2014年の金融商品取引法の改正である。私の退任後、新規銘柄の登録がほぼゼロとなったグリーンシートは制度廃止が決まり、これに代わる制度として「株式投資型クラウドファンディング制度」が創設された。そこで思い再びと2015年にDANベンチャーキャピタルを設立。2017年には株式投資型クラウドファンディングの専業ライセンスである第一種少額電子募集取扱業者として登録。専用サイトGoAngel(ゴ―エンジェル)の運営を開始したのである。

グリーンシートとGoAngel。中小企業に資本調達のインフラを広げるそのコンセプトは全く変わるところがない。そしてその共通の特徴は「拡大縁故募集」にある。

中小企業の株式は金銭的リターンを目的とする投資に適するか?

上場株式に投資をする投資家の多くの投資目的は、配当やキャピタルゲインといった金銭的リターン。証券会社はこれら投資家の顧客の金銭的リターンのニーズを満たすために、金融商品として上場株式を提供してきた。しかし、上場企業と比較して一般に財務内容が見劣りし、流動性も低いのが中小企業の株式。金融商品としての魅力は決して高くない。すでに上場銘柄だけで3,600もの選択肢があるのだから、その先にある中小企業の株式は一般の投資家の選択肢に入ってこないと考えるのが常識的であろう。将来の上場によるキャピタルゲインを狙える株式もあるが、不確実な上場をうたって一般投資家に投資勧誘する行為は専門証券会社として許されるべきものではない。

資本市場のすそ野を広げる「拡大縁故募集」

そこで、私がグリーンシートやGoAngelで推進してきたのが、株式に関心を持つ投資家ではなく、その企業や、行う事業、経営者に関心を持つ方に株主として出資いただくアプローチ、「拡大縁故募集」である。これまでご縁をいただいた友人知人、お取引先、地域でお世話になっている方などに株主となっていただき、事業を応援いただく。米国ではFamily & Friends Financeと呼ばれ、その市場規模は年間600億ドル(約6兆5千億円)にもなる。

私の生まれ故郷の静岡県牧之原市。最寄り駅の東海道線金谷駅は、大井川鉄道の出発点の駅としても知られている。今ではSLが走り、リアルな機関車トーマスが世界で唯一走っている鉄道として鉄道ファンには有名な大井川鉄道。設立時には大井川上流の山の木を伐りだして運ぶための鉄道として開業した。そのために地域の有力者が皆で出資をして会社を設立。その資金で鉄道を敷いて列車を買い、経営者を雇って、事業が始まった。この時に株主が出資をした目的は、株を売って儲けることでも、配当でもない。まさに地域に、社会に必要な事業だから。自らの事業として株主になり出資をした。

株式会社の原点は株主の共同事業

これが株式会社の株式の原点。金融商品の性格の以前の本来の目的の株式投資であれば、もっと多くの中小企業に出資が広がるに違いない。そもそも株式会社の性格は株主みなの共同事業。定款に記載されている会社の目的が株主の投資の目的である。定款には、先の鉄道事業も含めて、一般に製品の製造や販売、サービスの提供など「誰のどんなニーズに応える事業か」、すなわち「何をもって社会に役立つか」が記載されている。「お金儲け」とは書かれていない。お金儲けは目的ではなく、事業を継続して発展させるために必要な手段。そして事業が発展した結果でもある。株主への配当や企業価値の上昇も事業発展の結果と考える。株主の投資目的は本来、配当やキャピタルゲインではなく、社会に役立つ事業を共同で成し遂げることにある。

株式型クラファンで中小企業も「公開企業」

株式会社は、会社法で株主の権利と経営者の責任が明確に規定されている素晴らしい仕組みである。とはいえ中小企業の多くは創業者が株主であり経営者。創業者と理念を共にする株主がみなの共同事業として出資をして、その経営を経営者に託する仕組みとして機能することが重要と言える。会社法には株主が経営をチェックするためのガバナンスの仕組みが規定されている。ガバナンスの目的も株主の金銭的利益の最大化にあるのではなく、本来は、経営者が定款の目的を着実に達成するよう誠実に経営をおこなっているかどうかのチェックにある。その意味で、私は「株式会社」という組織体こそ、事業目的に共感し参加する株主に支えられることによって、社会性の高い事業を推進するのに最適な組織体ではないかと思っている。社会の公器たる株式会社は「公開会社」と呼ばれる。中小企業の多くが上場しなくても「公開会社」となれるのが「株式投資型クラウドファンディング」制度であると言えよう。

CAMPFIREグループ入りで資本市場の民主化を実現する

私が今回の資本業務提携の件で、CAMPFIREと協議を開始したのは2019年6月13日。その後、代表の家入さんとお会いしたのは2019年¬7月17日のこと。クロージングまで実質3ヶ月。CAMPFIREグループに参画することを決意した最大のポイントは、「資金調達の民主化」を掲げる家入さんの理念にある。私が20年に渡り理念として掲げてきた「中小企業のための資本調達のインフラづくり」。そのインフラは中小企業の事業に共感する多くの株主に応援いただく「資本市場の民主化」とも言える。株式会社の仕組みは株主により統治される民主主義の仕組みそのもの。上場会社だけに限られてきた資本市場の裾野を大きく広げ、皆が挑戦できる社会をCAMPFIREとともに築き上げていく。

さらにそこには、CAMPFIREの購入型クラファンで資金を応援いただいたパトロン(サポーター)が株主として出資もいただけるシナジーや、反対にGoAngelで株主となった応援団がパトロンとしてCAMPFIREのプロジェクトで資金を応援する相互メリットも大きい。先月より始まった融資型クラウドファンディングOwners CAMPFIREとの連携では、中小企業にエクイティとデットをバランスよく供給するニーズに応えることができる。CAMPFIREグループとして、社会に役立つ価値ある事業に対して、クラウドファンディングを中心に金融インフラをワンストップで提供できるよう邁進したい。