【IBC2019】Vol.12 欧州における5Gブロードキャストの実証実験

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IBC2019では、ドイツで行われている、5Gで放送的な一斉同報サービスを行う実証実験の報告があった。

欧州においてマルチキャスト向けの標準規格は、2006年に3GPPリリース6(UMTS)でMBMS(Multimedia Broadcast/Multicast Service)サブシステムが策定された。その後リリース9では、3.9G(LTE向け)に拡張されたeMBMS(evolved MBMS)として標準化され、リリース14では、FeMBMS(Further evolved MBMS)として策定が進んでいる。今後3GPPでFeMBMSをリリース16とする予定のようである。これは放送のためのモードを通信に統合させるものである。端末側はSIMカードは必ずしも必要ではない受信専用モードが用意されているのでテレビなどでも導入しやすい。

FeMBMの策定の経緯

5Gブロードキャストの実証実験は、2019年10月31日までの予定でオーバーバイエルンで行われている。ローデ・シュワルツ社製の送信機2台、送信出力100 kW ERPで、ミュンヘンとイスマニング間でチャネル56(754 MHz~758 MHz)のSFN(単一周波数ネットワーク)で行われている。新たに開発したダイバーシティ対応アンテナシステムを実装したベビーカーによるモバイル測定システムもある。

実証実験エリア
実験スペックの概要
送信系統
ベビーカーに搭載された受信状況の測定のためのシステム

欧州における5Gブロードキャストの考え方は、日本のように5Gのモバイルネットワーク上でIPマルチキャストをするという考え方ではなく、5Gのモバイルネットワークとの互換性を維持しながらブロードキャストをするという考え方である。通信の話ではなく、ワンセグのような放送の話として議論、実証実験が行われているというとわかりやすいかもしれない。そして不思議なことに、こうした情報も考え方の相違も、日本ではほとんど話題になっていない。

なお日本における5Gブロードキャストに関しては放送通信の問題、占有する周波数帯域確保の問題から、具体的な議論になっているとは言えない。また光ファイバーを一気に5Gでワイヤレス化という議論にも至っていない。NTTドコモが総務省の「放送サービスの未来像を見据えた周波数有効活用に関する検討分科会」に2018年3月に提出したこの資料を見るとその辺の事情がよく分かる。

なお5Gブロードキャスト実証実験プロジェクトのWEBサイトがあるので参照されたい。

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