デジタルの進化でアートはどこまで楽しめるか

Media /

芸術の秋である。真夏日が続いているが、暦の上では秋であり、つまり芸術の秋である。

銀座にあるGINZA SIXで「ROOF TOP ORCHESTRA -音を奏でる庭園- 」というイベントが行われたので体験してみた。2019年10月31日(木)まで開催の、サカナクション・山口一郎が発起人である『NF』がプロデュースしたサウンド・インスタレーションだ。

水盤エリアと芝生エリアには「オーケストラの演奏台」をイメージした6つの6面体のモニュメントと、それを小編成オーケストラが囲うように光の柱を設置。来場者がモニュメントを打楽器のように叩くことで、音と光が連動していくインタラクティブな体験ができます。それぞれ独立したモニュメントは合計36種類の音色と光を発し、複数の体験者によって共鳴するように空間全体で音楽を奏でます。また30分に1回、特別演出を実施。オーケストラが演奏前に一斉に調律をするように、『NF』によって作りだされた音と光が会場全体を包みます。

GINZA SIXの屋上は初めて登ってみたが、眼下に銀座の夜景が広がり意外と緑も多く鈴虫が啼いており、その環境だけで既に光と音が揃っていた。そこに、叩くとそれに反応して音を出しながら光るモニュメントを配置し、既存の光と音に加えて更に幻想的な空間となっていた。鈴虫の鳴き声まで想定していたのかはわからないし、明確にこう叩いたらこう音が鳴るというものではないので一見わかりにくいのだが、人もそんなに多くないので、静に音と光の余韻に浸ることができる。光と音のイベントは他にもあるが、実際のアナログ環境とあいまって相乗効果を持たせ体験させる、という点は評価出来るだろう。非常にゆったりとした気持ちにさせられる。

光と音、そしてオーケストラというキーワードだと、どうしても思い出してしまうのは落合陽一プロデュースの「耳で聞かない音楽会」だ。聴覚障害者に向けたコンサートイベントで、SOUND HUGという音楽にあわせ振動し光る球体デバイスを抱くことにより、聴覚障害者でも音楽を楽しめるというものだ。聴覚障害者の方にも、音楽とはこういうものだったのか、感動したと好評のようで、今年で既に3回実施している。アナログ情報である音楽をデジタルに変換し、更にそれを振動と光というアナログに再変換するという試みは非常に興味深い。筆者も楽器経験者なのでわかるが、音楽はその振動が心地よい。弦楽器でも管楽器でも演奏している際の楽器の振動は実はとても心地よく、ライブや演奏会で聴いている時も音の強弱が全身を刺激するあの感じは、生でないと味わえない。それをデバイスの振動でもって伝え、もしかしたらオーケストラ全体の音のうねりも明確に捉えられる様になっているとしたら、「振動」に目をつけたことは非常に慧眼であるといえる。先のGINZA SIXのような音と光のイベントに圧倒的に欠けていて、薄っぺらく感じてしまうのはこの振動の部分で、視覚と聴覚以外の触覚部分を刺激できると更に深みが増すのだろうなという気持ちを抱いた。充分に癒されたのだけど。

アート×デジタルの補助でいうと、スマホとメガネ型端末(エプソンのMOVERIOなど)でアクセスするバリアフリー映画の新システムであるUDcastというものがある。音声電子透かしをスマートフォンで拾い、完全同期した音声や字幕を流す、というものである。映画以外にも水族館や博物館でも応用が可能であり、障がい者のみならず、芸術の理解を深くするために一役買いそうなシステムである。実際に映画館で使用してみたがずれなくクリアに聞こえるため、もっと広まって活用シーンを増えて行って欲しいと思う。

10月4日(金)には遂に都内初である丸の内ピカデリーのドルビーシネマがオープンし、芸術を楽しむのに拍車をかける。MOVIXさいたまのドルビーシネマを体験してからドルビーシネマでないと満足できない身体になってしまった筆者としては、都内で体験出来るのは非常に楽しみである。デジタルの進化とアート。芸術の秋、皆様も様々なイベントに出かけてみてはいかがだろうか。