「METoA Ginza」のダイナミックサイン®から未来のサインを想像する

Digital Signage /

場所や方向を示すサインの多くは、壁面や天吊などによって高い位置に設置されることが多いが、目線が低い人の視界には入りにくい。そこで三菱電機は、プロジェクターで床面に映像を投光して人を誘導する「ダイナミックサイン」の普及に取り組んでいる。東急プラザ銀座(東京・中央区)にある三菱電機のイベントスペース「METoA Ginza」でこれを体験してきたので紹介したい。

ひとつ目は、METoA Ginzaの1階カフェの奥にあるエレベーターを案内しているサインだ。白い筐体内に短焦点のプロジェクターが納められており、ここからサインを投光している。サインはアニメーションとなっているため、その様子を下の動画で見てもらいたい。

プロジェクターが納められた筐体。商業施設や駅に入れるときには、もう少し内装に合わせたケーシングが必要になりそうだ。
プロジェクターが納められた筐体。商業施設や駅に入れるときには、もう少し内装に合わせたケーシングが必要になりそうだ。

視認性が重要なサインをプロジェクターで投光するとなると、真っ先に「周囲が明るいところでも十分に見えるのか」「人が影になって映像が投光できなかったり、認識できなかったりするのではないか」の2つの懸念事項が思い浮かぶ。結論からいえば、十分な光度の短焦点プロジェクターを使えば、これらが問題になるケースは少なさそうだ。まず、明るさへの懸念についてだが、このサインが設置されている場所は、周囲がガラス張りで外光が入り、屋内としてはかなり明るい場所で、さらに床材も明るめの色合いなのだが、このような環境でも映像を十分に視認できた。また、人影による影響だが、横からの投光のためか、人が立っていても意外と影にはなりにくい。動きを入れた案内映像とするほか、アイコンを大きくするなどのデザインの工夫で十分に視認できるものだった。

真上ではなく横からの投光のため、人がいても影になる範囲は意外と小さい。2,3人程度であれば、影があっても大きめのサインと、アニメーションによって、認識させることは可能だ。
真上ではなく横からの投光のため、人がいても影になる範囲は意外と小さい。2,3人程度であれば、影があっても大きめのサインと、アニメーションによって、認識させることは可能だ。

そして、おもしろいと思ったのが、エレベーター前のサインだ。こちらのサインは、エレベーターの挙動に合わせて映像が変わる。エレベーターから降りた時にどのように案内されるのか、下の動画を見てもらいたい。

エレベーターを降りるときには、床に案内が表示される

この矢印は常時表示されているわけではない。プロジェクターとエレベーターを連携させてエレベーターが到着したときだけ、このような案内を表示している。エレベーターの動きがないときは、ドアや床面に対してプロジェクションマッピングで環境映像が投光され、フロアのエレベーター呼び出しボタンを押したときや、エレベーターのカゴ内のボタンが押されて降りる人がいるときに、その状況に合わせた映像に切り替わるのだ。サインを必要とする人がいないときは、情報過多にならないようにサインを表示せず、必要な人がいるときだけ、すっとわかりやすくサインが表示される。サインが「ダイナミック=動的」になることの価値がよくわかる利用例だ。

プロジェクションマッピングを放映している様子
普段は、さきほどのサインは投光されておらず、プロジェクションマッピングによる環境映像が流れている。
エレベーターのドア上にプロジェクターが設置されている。
ここの映像は、短焦点ではなく天井からの吊り下げられたプロジェクターによって投光されている。。

三菱電機がこのダイナミックサインを発表した当初、筆者はサインをプロジェクターで投光する価値がイマイチわからず、冒頭に記載したようなプロジェクターを使うことによるネガティブな影響のほうが気になっていた。しかし、実際に体験してみると、懸念していたことはほとんど気にならない。それどころか、エレベーター前の活用のように状況に合わせてダイナミック(=動的)に案内を行うことができるのは、大きな価値を持った案内方法だと考えを改めた。エレベーターと連動した表示例はまだ入り口にすぎない。さまざまなIoT機材やシステムと組み合わせることで状況に最適な案内を行う。それも、モニターというモノの制約を取り払って届ける表現方法には、大きな可能性を感じた。ポストスマートフォンの時代には、このような案内が社会のいろいろなところに埋め込まれていくのではないだろうか。

ただ、いまのところ三菱電機は、床面に動きのあるサインをプロジェクターで投光示することを「ダイナミックサイン」と名付け、英語表記「Dynamic Sign」で商標を申請しているようだ。これには強い違和感を持つ。字面どおりの「Dynamic」に変化する「Sign」は、駐車場での満空表示や鉄道駅にある列車の行き先や発車時間を表示する発車標など、ずいぶんと前から存在する。そして、いまはIoTとAIの普及によってレストランの空き情報をリアルタイムに案内するデジタルサイネージが登場するなど、動的な案内が広がろうとしているタイミングだ。そのようなときに、同社が「Dynamic」「Sign」と一般的な単語を2つ組み合わせて意味を幅広く受け取れる言葉を商標登録したうえ、それを極めて限定的な用途に使うのは、業界の健全な発展には望ましくない。押しも押されもしない大企業である同社には、社会の公器としての振る舞いを期待したい。