米リテール業界が加速させる4つの新たなサービス

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我々が目指しているのは、店舗でもなく、ネットでもなく、ウォルマートで買物をすることだけを消費者が考えればいい状態をつくることである。(ダグ・マクミロン ウォルマートCEO)

アメリカでは、オーガニックなどの商品の差別化だけではなく、サービス競争が激化している。書籍スーパーマーケット近未来戦略水元仁志著)では、アメリカの小売業のサービスシフトの4つの流れについて書かれていたので、今日はこれを紹介したい。

1、カーブサイド・ピックアップ
2、アプリ購入・決済
3、インスタカート(買物代行)
4、グローサラント

アメリカではアマゾンと大手小売との戦いが激化し、様々な新たなサービスが生まれている。以前紹介したカーブサイドピックアップもその一つで、アメリカでは最後のワンマイルを顧客に行ってもらおうという動きが加速している。

1、カーブサイド・ピックアップ(クリック&コレクト)
顧客が自社の商品をインターネットで注文した後、店舗の駐車場で自ら受け取るサービス。利用者は車から降りる必要はなく、注文品はスタッフがトランクに積んでくれる。顧客は自宅で配達を待つよりも、自分で取りに行くことを好み、ウォルマートなどはこれで先行している。ウォルマートはネットとリアルの垣根をなくすこと(シームレスショッピング)を目指し、アマゾンとの差別化を行っている。

2、アプリ購入・決済
アプリ購入・決済の先進国は中国であることは間違いないが、アメリカの小売業界でも急速にアプリでの買物が普及している。アメリカでは決済時のレシートを電子化し、クーポンとの統合を行い、キャッシュバックで顧客を囲い込んでいる。例えば、ウォルマートのセービングキャッチャーでは、ウォルマートの価格より競合店のセール価格が安かった場合、差額分を自動的にキャッシュバックしてくれる。このアプリによって、顧客の好みや購買履歴を把握することができ、One to Oneマーケティングも可能になる。

3、インスタカート(買物代行)
アメリカの大都市では、インスタカートと呼ばれる買い物代行が流行り始めている。先ほどのカーブサイド・ピックアップとの違いは、商品によって購入する店舗を指定できる点にある。顧客の好みに応じて、野菜はここ、肉はこの店と指定することができるのだ。「時間を節約したい」「もっと楽に買物をしたい」という人と、「空いた時間を有効活用して稼ぎたい」という人をマッチングすることで、買物でのシェアリングエコノミーを実現している。商品力のあるスーパーマーケットならば、利用者に選ばれる可能性が高いことから、売上アップに直結する。コストコやクローガーなどの大手小売がこのインスタカートを活用している。

4、グローサラント
グローサラントはグロサリー(食料品)とレストランの造語だ。主にスーパーで売られている食材を調理して、その場で食べられる飲食業態で、アメリカや中国で流行っている。「グローサラント」では、店内の食材を使った出来立ての食事を楽しむと言う体験を提供する。このグローサラントによって、小売は食材の販売だけでなく、食事の提供という新たな顧客体験(=顧客とのつながり)を生み出している。また、食べたい食材の調理方法をレストランで体験させることで、その食材を顧客に次に買わせるというメリットも得られる。

例えば、ニューヨークのスーパーマーケットのウェグマンズでは、農場で収穫したオーガニック食材を使った料理を提供している。店内のイタリアレストランでは、本格的なイタリア料理とワインがリーズナブルな価格で楽しめ、人気になっている。GASKETでも先日紹介した盒馬鮮生のイートイン、東京にも進出したEATALYなどがまさにこのグローサラントだ。

小売業は店を「モノを売る場」から「顧客とのつながりをつくる場」へと位置づけを変えることが重要だ。ただ、店の中にレストランを開けばよいという安易な発想では、顧客からは支持されない。自社の食材を使った美味しく楽しい食事を提供し、店舗を日常の気軽に寄れる場所にさせることで、顧客を自社のファンにできるのだ。

アメリカの小売は、顧客体験をよくすることを考えながら日々変化している。それを実現するために、アイデアをつくるだけでなく、AIやアプリ開発、ITへの投資を矢継ぎ早に行っている。日本の小売も商品寄りの考えを改め、顧客体験を高めるようにサービスを進化させるべきだ。その際、顧客満足を勝ち取るために、IT投資を怠ってはならない。

photo credit: jjbers Walmart (Norwich, Connecticut) via photopin(license)