創業時の資金調達の不思議

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ベンチャーキャピタル(VC)という事業をやっていると、どうしても流行りの業種の上場しそうな成長ベンチャー企業に目が行きがちである。

今の時代、例えばAIやIoTといったキーワードが上手くはまり、特許技術など競争優位性が明確であって、事業計画のシナリオに合理性があれば、VCの投資を受けるのは難しくはない。むしろ金余りのVC業界では、血眼になって有望なベンチャー企業を探している。その結果、有望と判断されれば、VCの資金が群がってくる。投資競争が激化して株式評価は高騰。創業期の企業でも企業価値は数十億円から数百億円、中にはユニコーンと呼ばれる1千億円を超す企業価値でVCから資金を調達する会社もある。

これが正常かというと正常ではない。ただ、これが常識と思っている創業ベンチャーもあり、自らを流行りの業種にはめようとして事業計画をつくってくるから困る。下の図は、日本の新設法人数の推移を示したものである。

年間の新設法人数は10万社~13万社ほど。ところが、VCから出資を受けている会社は年間1,000社から1,200社とほんの1%に過ぎない。新設法人のうち99%はエクイティファイナンス(資本調達)とは縁がないと言える。これに対して、創業融資を受けている法人数は日本政策金融公庫の創業融資が1万社、民間金融機関の信用保証協会の保証付き融資が1万社ある。金融機関のプロパー融資を加えると、新設法人の概ね20%程度は創業時の資金ニーズに融資を利用している。


ベンチャー白書2018 日本政策金融公庫WEBサイトより筆者が作成
出典:全国信用保証協会連合会

エクイティファイナンスは返済不要の安定資金。企業のリスク負担力を高め、成長のための長期投資には最適な資金調達である。それにも関わらず、何故、多くの創業企業でエクイティファイナンスが使われないのであろうか?その理由は以下に3つに集約される。

  • 株式を発行する資金調達の方法について創業者が理解していない。
  • 外部株主のシェアが増えるとオーナーシップが失われて危険と思っている。
  • 投資をするVC等の専門投資家家にとって、上場やM&AによるEXITが見込めるベンチャー企業以外は投資対象とならない。

翻れば、この3つの理由さえ解決されれば、より多くの企業にエクイティファイナンスが広げることができる。そこで私が推進しているのが株式投資型クラウドファンディングとCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)。いずれも金銭的リターンよりも、株主として事業に共感し参加することが目的である。株主の共同事業というのが本来の株式会社の形。米国では身近な親戚、友人知人が株主となって出資するFamily & Friendsの市場規模が年間600億ドル(約6兆5千億円)に達し、利用する創業企業は全体の38%にもなる。米国ではエクイティファイナンスは、ごく一部のベンチャー企業だけのものではないのである。日本でも、企業価値評価による時価発行増資や種類株式の活用を含め、より多くの創業経営者にエクイティファイナンスへの理解を広げること。それができれば、やがて身近な応援団や事業パートナーとなる企業が株主となって事業を支えることがごく普通のこととなる日が来ることであろう。