【IBC2019】Vol.01 エッジAIカメラが地味に来ている

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IBC2019ではムービーカメラにエッジAIを活用したコンシューマー向け、またはプロ用と言うよりは業務用に近い製品が、比較的目立つ場所に展示されている。これらはIBCで新たに発表された新製品というのではない。ここ半年以内に既に発売されたものが、IBCというプロ向けの展示会に展示されている。

たとえばソニーのEdge Analytics Appliance「REA-C1000」は5月に発表されたものだ。Edge Analytics Applianceは、動体や顔の検知、色や形状の認識など、複数の技術を機械学習させたAIエンジンを搭載しており、接続したカメラの映像を自動的に解析しGPU上で処理を行うことで、映像内の特定の被写体の抜き出しや、それを他の映像と組み合わせてリアルタイムに表示することが可能になっている。この製品はカメラ自体は含まず外付けで、エッジAI処理のためのハードウエアである。AIの開発はNVIDIAのJetsonベースである。

REA-C1000自体はこうした箱型のハードウエア

ユニークなのは実現できる機能が「業務用」っぽいことと、利用したい機能ごとにサービスを購入するということだ。
・板書抽出オーバーレイ『REA-L0100』            80万円前後
・クロマキーレスCGオーバーレイ『REA-L0400』       112万円前後
・リモートカメラ自動追尾『REA-L0200』           20万円前後
・注目エリアクロッピング『REA-L0500』           50万円前後
・起立者ズームアップ『REA-L0300』             80万円前後

「板書抽出オーバーレイ」というのは、板書というアナログな作業をデジタル化して、それをさらにAIで アナログっぽく見せるものだ。板書している映像から人物のみを切り出して、板書された内容を人物の手前に持ってくるということだ。この見え方が実際の場面、つまり何らかの授業、講義における理解度の向上にどれだけ貢献するかはよくわからないが、現実世界の視覚レイヤーをリアルタイムで入れ替えられる魔法のような世界を、板書というなかなかレアな場面に落とし込んだのが面白い。いわゆる教育市場に受け入れられる可能性はある。

「クロマキーレスCGオーバーレイ」もやはり人物だけを切り出して、クロマキーを使うこと無く背景を入れ替えられるというもの。これも教育現場で授業で使ったり、企業のプレゼンテーションや製品商会ビデオなどでクロマキーなしに合成ができるということだろう。ただ編集を伴わない使い方でないとせっかくの簡単クロマキー合成が生かされてこないので、「ライブな場面」がユースケースなのだと思う。

「リモートカメラ自動追尾」は人物の動きに合わせてカメラのパンやチルトを制御するもの。制御できるカメラはソニー製のリモートカメラのみだ。これはカメラを物理的に動かすアプローチの他に、固定のカメラ画像から人物だけを切り出す方向性もある。

そうした固定カメラからの画像処理でほぼ同様のことを実現させるのが「注目エリアクロッピング」である。さらにその機能を特化させたのが「起立者ズームアップ」だ。これらの機能と価格をよく見ていくと、リモートカメラ自動追尾はカメラが必要なので20万円に抑えられていて、技術的にはほぼ同じ「注目エリアクロッピング」と「起立者ズームアップ」の価格差に苦労を感じ取れる。

全体としてAIによる人物切り出しという機能を、ここまで具体的な利用シーンにまで落とし込んで、さらに機能ごとの単品売りという商品構成に持っていくまでの試行錯誤は敬意を表するレベルである。GASKETでこのサービスの発表前に記事化したエッジAIは単機能化してサブスクリプションモデルに向かうのような方向性が始まったわけである。

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