リクナビ「内定辞退率」予測廃止から考える、事業者がなすべきこと

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就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就活生の「内定辞退率」を予測し、企業に販売するサービスが、大炎上している。同社が違法に個人情報を売ったのは7,983人分で、同社は謝罪すると共に、企業に販売するサービスを廃止した。しかし実際は80万人の利用者のうち、自分自身でデータが売られたことに気づかないままの就活生もいるはずだ。個人情報保護委員会も違法性を問題視しており、事態はまだ収束しそうにない。

本件は、多様な問題をはらんでいる。まず個人情報保護委員会が直接的に問題視しているのは、利用者から適正な同意を取得していなかったのではないか、ということ。確かに、利用規約の記述を読む限り、利用者は何に同意しているのか分からないし、それを読むだけでは内定辞退率予測が販売されることは想像できない。問題視された7,983人からは、こうした形式的(または形骸的)な同意さえも取得しておらず、個人情報保護法違反の疑いがある。さらに言えば、そもそも消費者契約法の精神が求めるところの契約行為である同意の体を成していない可能性がある。

そしてこうした形式的(または形骸的)な同意は取っているものの、前述の通り同意の前提となる、目的や利用方法に係る「通知」が、まったく十分ではない。通知と同意は個人情報の取扱いでは「セット」であり、正しい通知の下にしか正しい同意は成立しない。前述の消費者契約法の精神と同じで、欺瞞的な説明で何かを契約させようというのは、欺瞞的な商行為なのである。

一方、こうした問題点を指摘すると、事業者の側から必ず挙がる声がある。それは、「悪意はなく、故意でもない」「どんな情報をどう取得してしまうか、事前には分からない」「同意は何度も再取得できない」、従って「どうすればいいというのか」という、嘆きにも似た反論である。本件も、リクルートキャリアがどれほど自覚的だったかは分からないが、おそらく「そんなつもりではなかった」というような言い訳も、中の人からは挙がっているのではないだろうか。

Convert GDPR

正論としては、こうした嘆き節に対しては「もうそんなことを言っている場合ではない」の一言をお返しするしかない。実際、欧州で個人データに関する厳しい規律であるGDPRが導入されてから、対応しきれない中小事業者は退場(つまり売却や廃業)しつつあるというのも、現実ではある。そして間もなく改正が予定されている日本の個人情報保護法は、今後GDPR準拠を益々進めていく。有り体に言って、このトレンドからはもはや逃げられない。

では、高い水準でデータを保護・管理する力量や資本力のない事業者は、パーソナルデータを取り扱う業務領域から撤退するしかないのか。最終的にはそうかもしれないが、その前にできることがある。それは、自らの理念や目的を言語化することだ。

そんなこと、言われなくてもプライバシーポリシーで書いている……と胸を張って反論できる事業者は、果たしてどの程度いるだろうか。実際には、プライバシーポリシーも利用規約も、せいぜい弁護士に依頼して雛形をアレンジしてもらうか、さもなければググったりパクったり、程度が関の山ではないだろうか。もちろんそれでは、まったくダメである。

求められていることは、そうではない。具体的に、対象としているサービスはどんな便益(もっと言えば幸せ)を目指しているのか、それは誰のためのもので、どのように実現するのか。さらにいえば、それを運営しようとする事業者は、何を目標にして設置されたのか、そしてどのような理念や哲学の下で経営しているのか。そういったことを、愚直に、そして分かりやすく、文字に落としていくのである。

はっきり言って、相当恥ずかしい作業になるだろう。そして仕上がった文書は、とんでもなく青臭いものになるはずだ。そんなもの、読んで誰がうれしいのか、と思うかもしれない。ところがそれが大事なのだ。

そうした、恥ずかしい作業を経て仕上がった青臭い文章は、顧客をはじめとした自分以外のステークホルダーに対する誓約になる。そこに書かれたことと違うことをしていたら、後ろ指をさされるのである。だからこそ、青臭い理念や精神の実現に向けて、真面目に仕事をするようになるのである。

こうしたアプローチは、ちょっと西洋的な香りもするし、日本には馴染まないと考える向きもあるだろう。しかし何より私達、日本の生活者自身が、西洋的なライフスタイルを選んでしまっている。だから企業も、そうした好き嫌いを問える状況にはもはやなく、21世紀の企業は、そうしたプレッシャーの下で、事業を営むしかないのだ。

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