決済時のフリクションから考える次世代決済の行方

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買い物プロセスのストレスを下げる競争が激化している。顧客は精算時にフリクションを感じることが多く、多くの企業がこれを減らすため、決済の自動化を推進している。レジレスの動きが強まる中で、顧客のアイデンティティ(カラダ)と決済を紐づける動きが進んでいる。

生体認証決済では、店頭に専用のセンサーやカメラなどの機器を設置することで、顧客を認証し、その情報をクラウド上のデータベースからAIが自動照合する。この生体認証決済を行うことが、中国では当たり前になっている。顧客は自分のアイデンティを活用することで、クレジットカードもスマホを提示することなく、精算のフリクションを少なくできるのだ。

この生体認証決済は顧客だけでなく、当然店舗側にもメリットがある。最近ではカードの不正利用が問題になっているが、この防止も可能だ。どこも人手不足が深刻になっているが、生体認証決済によって、レジ業務の効率化を図れるのも経営者にはうれしいはずだ。

店舗のデジタル化が進む中国では、「笑顔」が決済手段になっている。アリババ傘下のアント・ファイナンシャル・サービスとケンタッキー・フライドチキンは共同で、中国初となる「スマイル・トゥ・ペイ」決済システムを2年前の2017年からから行っている。アント・ファイナンシャルの決済サービスのアリペイのアプリ登録者は、顔をスキャンして、携帯電話の下4けたの番号を入力すると決済が完了する。

上海にあるスーパーカルフール系の「Le Marche」も、テンセントの顔認証技術を導入した。こちらもWeChatのアプリを開き、携帯番号の下4ケタを入力し、顔をスキャンするだけで精算が完了する。

中国では顔認証により、IDカードを使わない生活が当たり前になっている。学校や会社への入館も顔認証で行われている。日本の空港の入国審査も顔認証が増えてきたが、中国では顔認証が生活の一部になり、様々な場面で使われている。

昨年から、日本ではスマホでのQRコード決済の導入が進んでいるが、セブン&アイ・ホールディングス(HD)の「7pay(セブンペイ)」の失策により、冷水を浴びせられた感がある。そもそも日本ではクレジットカードや非接触型ICカードのSuicaが普及する中で、本当にQRコード決済が必要だったのかという指摘もある。確かにスマホがあれば、物理的なカードを必要としないメリットはあるが、顧客の決済時のフリクションを減らすという視点で考えれば、生体認証決済に進む道もあったはずだ。

筆者はスマホケースに入れたSuicaやEdyを使用頻度が、QRコードを使うより圧倒的に多い。唯一の例外がスターバックスで、LINEのスターバックスカードを使う時だけ、LINE Payで決済をする。しかし、これ以外はほどんど、SuicaやEdy、クレジットカードで決済を行っている。SuicaやEdyに比べ、QRコード決済の方が手間が多く、フリクションを感じてしまうのだ。

今年の1月に筆者はシアトルのamazon goを体験し、精算時のストレスがない買い物がどれだけ楽かを実感した。中国の顔認証での買い物をまだ体験していないが、フリクションを減らすという意味では、財布やスマホ、非接触型ICカードの必要のない顔認証の方がはるかに便利に感じられる。

日本が顔認証技術で出遅れているわけではない。実際、NECは世界トップレベルの「顔認証技術」を開発し、実証実験もスタートしている。危惧される個人情報の秘匿も登録された顔情報が数値化されるため、第三者に渡っても本人の特定ができないようになっている。

ユーザーのカード情報はクレジットカード会社が管理し、顔情報データはNECの顔認証決済サービスで管理されるため、店舗での個人情報とカード情報の取扱いも無い。データの管理を分けるので、情報漏えいリスクも減らせる。スマートフォンやタブレットなどのカメラがあれば個人認証が可能なため、クレジットカード決済端末や生体認証用などの専用機器も不要で、店舗側の投資も少なくてすむ。

要は顔認証技術を使おうという小売店舗が少ないだけなのだ。QR決済の分野で出直しをせざるを得なくなったセブン&アイ・ホールディングスは、同じ土俵で勝負するのをやめたらどうだろうか?精算時の顧客のフリクションを減らすことにフォーカスし、店舗のデジタル化を推進するのもありだと筆者は考えている。PayPayやLINE Payと無理に争うのをやめ、顔認証決済サービスなど独自路線で顧客満足度を高めるのもありだと思うのだが・・・。王者セブン&アイ・ホールディングスのデジタルマーケティングの巻き返しに期待したい!